非常階段を駆け上がり
分厚い鉄の扉を押し開けると
そこには真っ青な空
どこまでも、どこまでも自由な
僕の宇宙が広がっている
給水塔のてっぺんに寝転んで
....
灼熱の時間が過ぎ去り
辺りの温度が急速に奪われてゆく
乾燥した大気
ひび割れ、叫びたがる地盤の上に
降り積もった砂
はためく裂布
朽ちた枝に結ばれて
....
この地上では
ただでさえ不確かな
ココロとカラダ
上手いことバランスが取れなくなって
疲れたなぁ…と思うとき
決して歩みを止めるな!
振り返るな!
なんて
....
ビルの隙間から
切り取られた空が見える
曇天
そういえば、
晴れていても青くは見えないんだっけ
信号で立ち止まり
すっかり萎れた
ハイビスカスに触れてみる
....
行き交う
小さな悪意と微妙な善意
溜息をつき、ふと見下ろせば
エノコログサ
都会の路の隙間から
ひっそりと顔を出す
猫の尾のような、ふさふさの穂
まさ ....
きみが泣いているとき
ぼくにできるのは
ただ、そばにいることだけ
きみの好きな
真っ白い花をつんで
かかえたひざのとなりにそっと置いて
月の石のしずくのような
....
今朝ほど
沿道に植えられた木が
紅く染まっているのに気付いた
折れそうな程に枝をしならせる
たくさんの
ルビィのような実たち
未だ、酷暑の気配を拭い去れない空に
....
最近、
あまりにも些細な
イヤナコトに気を取られ過ぎて
イライラしていたかも知れない
ちょっと先の夢を追いかけ過ぎて
足元が覚束なくなっていたかも知れない
....
外を歩くと
灼けるような日差し
体温を遥かに上回る外気
アスファルトの、焦げる臭い
おかしい
何年か前までは、こんな気候ではなかったはず
少し遠くに目を向ければ ....
あなたは極相林というものを知っていますか?
植物群集が遷移し
いちばん最後に行き着く姿のことです
つまり、木々の集落が
ヒトの干渉を受けなかった場合の、
最終形態
では ....
連なる山々
緑の頂に抱かれて眠る、雲海
光が漏れ
呼吸を始める木々
木陰にひっそりと佇む祠
ここは
神の御座します処
旧友と語り明かした帰り道
ふと見上げれば
疎らな星々
もうすぐ薄明に飲み込まれてしまうことが分かっていても
懸命に輝いている
沈むことを許されないカシオペヤ
北 ....
たとえば
人にぶつかったとき
自分の不注意を詫びるのか
相手の不注意を責めるのか
戦争の火種は
案外そんなところにあるのかも知れない
私には、何も無いと思った
好きな仕事も
好きな相手も
何も、無い
零れていくものを必死に掴み取ろうとして
最後に残った、欠片
それは
明日の自分と ....
抜けるような青空
蒼から白のグラデーション
見上げる僕の心も
快晴
白い月に、白いウサギ
臼と杵を天日干し
朝、道端で
仰向けに転がった蝉を見た
よく
蝉が陽の光を浴びられるのは
長い一生の中で、最後の幾日かだけなんだよ
可哀相だね
そんなことを聞くけれど
私は ....
立ち込める熱気が鳴りを潜め
夜の帳が下りる頃
大人たちの目をぬすんで抜け出した僕らは
毎日のように星空を眺めた
きれいだね、と君は言う
まるでシュガーキャンディを散ら ....
広い通りに一様に並んだ木々
同じ品種が
同じように剪定されて
まるで揃いの置物のよう
此処の木たちは
自由に伸びることすら許されない
アスファルトの植え込みで
色 ....
空があって
大地があって
光があって
水があって
本当はもっと
数え切れないほどのものがあって
私は此処にいる
『普段』がある幸せ
『いつも通り』がある幸せ ....
見慣れた校庭が
一晩だけ様変わりする
綿菓子、水飴、金魚すくい…
走り回る僕ら
ここは夢のような異世界
雑踏に沈む大人たち
今は絵日記も自由工作も追いかけてこない
....
優しい、せせらぎ
豊かな水の
湧き出すところ
素足で岩場を歩き
小さな蟹を捕まえた日は遠い
空には光が溢れ
眩しさに視界を覆えば
木の匂い
水面に映 ....
茹だるような暑さの中
仕事に向かう足も鈍る
まともに呼吸を出来ている気がしなくて
やたらと横隔膜を上げ下げする
いま
この空気の中に酸素が何パーセント含まれているのか、知りたい
....
空に
広大な波を連ねる積雲は
傾きかけた陽光に染められて
まるで天使の翼のように
輝く造形となる
地に
肢を縫いとめられた私は
目を細めては高みを見上げて
....
呼吸すら億劫になるほどの草熱れ
立ち込めるのは夏の匂い
ジーク… ジーク…
緑陰に身を屈め、獲物を狙う少年
まるで、その空間だけが別世界
ジーク… ジーク…
....
古ぼけた木のテーブル
二つきりの椅子に、コツコツと時を刻む柱時計
君と過ごした場所は
優しく霞む、想い出の中に
君は寝台で本を読み
寒がりの僕は暖炉の前で蹲り ....
暗闇に稲妻が走る
一瞬の閃光
具象は再び空の色に呑まれ
激しく叩きつける雨音
恵みの雨か
否、これは怒りの雨
宙に放たれた色濃い悪意を
浄化し ....
かな かな かな かな …
あれ?蜩が鳴いている
まだ七月なのに…
ああ、そうだね
彼らは晩夏だけの蝉ではないんだよ
ふうん、知らなかったな
かな かな か ....
寄せては返す
漣のような音色
碧く
深く
悲しいほどに透明なそれは
大気を満たし
僕の心にも滲み込んで
静かな
静かな夜を連れてくる
白い時間が
砂のように降り積もる
ときに蛇行し
ときに立ち止まり
誰もがその上を歩いてゆくけれど
いつしか
そこには波が打ち寄せ
僕の足跡も消えていく
0.28sec.