午前4時
郵便ポストに朝が届く
とおくで電車が泣いている
溜まったメールを洗濯機につめこんでぐるぐると回す
とげとげしたやりとりも
昨日の君との会話も
ぜんぶ漂白剤にあらわれて
言葉 ....
なにかの映画で見たような
あてのない線路
そこには空も海もなく
心地よい孤独だけが転がっている
空き瓶の中で
春が雪に変わり
冬が死んでゆく
廃駅のベンチに腰掛けると
一匹の猫がすり寄 ....
棒読みのニュースが無関心を装う夜
友達の数をかぞえたら
輸入されたあこがれをおいかけて
白い行列につづく
焼き増しされた過去から
異国のゾウの背中にのって
ターアン・ターアン
夢の終わり ....
信号機がつなぐ道と道を
ただアリのように進んでいけば
今日も君に会える
くしゃくしゃと音をたてて
わたしを満員電車に詰め込めば
明日も君に会える
いつまで君に会えるかな
雨が ....
きみのほっぺたに夕日がとけた
となりの窓からおすそわけ
あたたかいと雄弁に語りだすから
そっと人差し指をおしあてた
手をのばしたら
えりあしに飛びうつって
きらっと弾けて消えた
ケー ....
薬局のカエルは
店先に置かれたその日から
休むことなく
この街を見守ってきた
少女が殺されたよるも
カエルはその目に
犯人の顔を焼き付けていた
なのにカエルは
警察にも、
遺族に ....
カナリアは憧れていた
眠りにつく前には決まって
とりかごを定規に
空を測っていた
カナリアはフルートに嫉妬した
自分よりきれいに泣く
フルートに嫉妬した
しかしそれこそが
自分が愛 ....
あの日、渡り廊下で
君が教えてくれた蝶々むすび
不器用にからまった
よれよれの僕をほどいて
結び目にちいさく
幼い指で
魔法をかけた
片方だけ小さくて
いびつなハネ
それでも ....
赤ん坊が泣き止んだ空
まだぐずついて
もう泣かないでと
小鳥は電線をえらんで
ひとつの音階へ
くちぶえが水たまりを転がって
笑い声に溶けていく
きっかけは一目惚れって
好きなだけじゃダ ....
今日もかわいいね、じゃなくて
会うたびにひとつずつ
かわいいところを見つけて欲しいの
たまには、髪飾りを褒めたりして逃げてもいいから
大切なものほど
すぐに指紋でベタベタになっ ....
アイデンティティーは甘めがいいもの
角砂糖をふたつ
未来を見るような目で
スプーンの先端を見つめて崩す
一滴もこぼさずに
何かを確かめるような動作のひとつひとつが
あなたがいくじなしだって ....
そのネコは知らなかった
じぶんの名前すらも知らなかった
何度か名前をつけられたような気もするが
そのどれもが耳に障って
じぶんの名前だとは思えなかった
ある夜、六丁目の方角に流れ星が落ち ....
18になったら
黒いロングコートを買うと決めていた
ファスナーを勢いよく
心臓まで引き上げて
これでまた
心にひとつ鍵をかけた
冬になるとみんな
前かがみで、早足で
なんだか街はい ....
月曜日は生ゴミの日
ロマンチストとエゴイストは
しっかりと分別してね
何かを背負っていないと
ビル風に飛ばされてしまうよ
なんて
あなたの
猫も興味をもたない
そのプライドは
き ....
いつのまにか
ヒットソングはまたひとつ過去に変わり
僕らはまたひとつ大人になった
がらんどうの未来を
埋める術も持たずに
今朝届いたばかりの空の色に
何をおもう?
ゆめ?
きぼう? ....
忙しい作家みたいに
見えない締め切りに追われてさ
渋谷の人ごみ追い越して
ひとりぼっちのおいかけっこ
横断歩道を
渡る
手を挙げた老人の
律儀な背中にしょった
いくつもの
ストーリー ....
ボクが冷たい人間だって
きちんと確かめさせて
キミのおっぱいのなかで
西へ向かう風ですが
ついでに何かお運びしましょうかって
せっかくだから
几帳面にたたんだ言葉のひとつでも
裸のままで
お願いしてみようかしら
闇を超えて
芸術を超えて
あなたに
あな ....
アルペジオから始まる朝
はじまりを待つ、密かな胸の鼓動
流されることを良しとせず
ぐっと、吊り革をつかむ
誰かのせいにしてくたびれた靴で
いまも夢のつづきを探してる
例えばそれが、がらくた ....
今どうしてる?なんて野暮なこと
どんな顔して聞くんだよ
散らかした思いをいまホチキスでとめる
テレビの向こうの交差点に
今日もまた溶けこまなくちゃ
明日になればまた
駅のポスターも新し ....
白い貝殻を拾ってネックレスを作るように言葉を組み合わせるの、と
詩を書くあなたは言うけれど
私はビー玉をころころと太陽に透かすように
光のかけらと じゃれていたい
ノープランの恋愛ですが ....
ピアノの弦がきしむように
心が鳴った
あなたが悲しい顔をしたから
聞かなければ良かった、
ただそれだけ
プールの栓をぬいて
黒い、水の底から
月に照らされるように浮かんだ
予定調和 ....
田園を突き抜ける
畦道の片隅に
いつの頃からか
忘れられたよう
佇む地蔵になって
夕日に照らされ影法師をのばし
もぎたての野菜をお供えされ
ときどき
女生徒の恋話を盗み聞き
ある ....
注いだコーラに局所的な星空を見る
それはあてもなく繰り返すミュージックにも似て
永遠であり、一瞬だ
スケールの小さな地球儀に寄り添って
君とぼくで
指切りをして魔法をふりまこう
明日の ....
僕らを白く包んでしまうなら
いっそそのまま
すべてを連れ去っていってください
髪といわず
肌といわず
唇といわず
肉といわず骨といわず
こころも、愛も
届かない ....
名前も知らない私達はいつも
同じホームで、同じ空を見ていた
ただただ何も映さない瞳で
夏を知らせるのはいつの日か
先生でも、カレンダーでもなく
飲料水の広告となっていましたね
満員 ....
あなたは、空にみとれていた。
あなたの方がよっぽど綺麗だのに。
喫煙所の窓から
ほんの少しだけのぞいた
夕日のマッハバンドに
僕はもう、詩人にはなれないと悟った。
接近した彗星を見つけようと
運命の交差点に、立つ。
まわる、まわる星が
隠していた寂しさを覗かせるとき
それは起こるのだ。
あなたを愛した時から、そう。
恋こがれ
引き寄せあう
....
しとしと雨が降る日には
なんだか耳が遠のいて
クツノウラの世界へ行けそうだ。
狭くなった世界の
はずれにあったベンチに腰掛け
雨が降らないこの場所で
夢のカケラをひとりつまみ食い。
....
北風が寒さをはこぶから
冬の空気は澄んでいて
星や
イルミネーションが
いつもより綺麗に見えるんだって
天気予報士が言ってた。
そうして見上げた
なんでも見透かせそうな
あの夜 ....
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