細い声で 途切れ途切れに口ずさむ
なんの歌だったか
視界が揺れて瞼を閉じた
金魚鉢に立つ波紋
いつまでもそこで眺めてる
廊下の途中うつ伏せで
素足の君は眺めてる
黙 ....
綺麗すぎて壊したくなるから
透明だから近付いて汚したかった
雨に濡れていたいんだって
誰かに逃げてばかりで
肩に髪が張り付いていた
瓦礫の中から積み上げていくもの
崩れた僕 ....
静かな夜
草を揺らす影と影
逃げるように追うように
どちらも何かを掴むため
耳を切る
指を切る
熱が集まる
息が下がらない
この鼓動は逃がさない
話せるのは ....
アンティークの多い部屋
閉め忘れられたクローゼット
ベッドの上の会話
溶かされる為に生まれたんだって
アタリはあなたが引いたんだって
冗談なのか本当なのか
笑いかける君のこと ....
血管の透けた腕で宙を掻く
昼だって夜だって迷子のままで
叫び疲れて後はもう誰かの掃除を待つだけ
そいつに頭が均されても別になんとも思わない
白けた夢の端っこで小人が踊っている
....
ひしゃげた表情の老人が空き家の前で座っている
迷惑そうに振り払った女が古い歌を口ずさむ
明け方の街路灯にカラスが物言わず腰掛ける
壁に手をあてながら歩いている
嗄れた声でかき鳴らし ....
水曜日の十字路で
はた迷惑な幻が前を横切る
覚えた顔もすぐに霞むが
並ぶ影の形は忘れずに
この世では
特別であり続けたい
胸の内は琥珀色が丁度いい
その人はそう言った ....
枕元には雨の匂い
室内はいつもより無機質
コップに挿した一輪は真っ赤な横顔
衣擦れの音も呼吸も壁に吸い込まれていく
表情豊かな外形が圧迫するのは君の胸
心の濃度が薄まると疎通を ....
会いたい人は会えない人
安易な日常の麻痺
なんだか居づらくて
その場を後にした
語尾は無機質
情感に名残りがない
あなたの言葉が数列みたい
だから一つだけ嘘をつく
....
ふたりが消えてしまっても
誰かが伝えてくれる
瞼を閉じたらそれが合図だよ
このままでは居ることができないから
忘れるために出かけよう
降り出した雨
僕たちの膝下が見えなくな ....
考えていた事が逆さになって落ちていく
底の方に生息している動物が
落ちてくる思考の欠片を食べている
仄かな暗がりの中で遊んでいる子供達は
落ちてくる思考を軒下で見守っている
治まれ ....
違和感ばかりの胸を掻く
赤く痕は広がっていく
通信は途絶えそう
畳と天井の距離
「こんな事しか出来ないの」
黙っていた君が洩らした最後の言葉が蘇る
その感性は初め、一瞬だけ ....
もうここに望むものは無いから
左手にある出口から出て行ったらいいよ
追うことはしない
追うことはもう止めるから
淡白な日曜日に落下した
簡潔な性格がことごとく
キラキラ ....
「愛されたい」と
傍で吐息混じりに呟いた
僕たちの均衡は
愛情が濃くなればなる程に
一つずつ剥がれていく
変化する形状に怯えるが
壊れたらまた創ればいいと簡単に君は言う
会う ....
寝過ごしても何も過ぎていない
共感ってどこまでが境界線?
居るだけでなんて、遠い昔話
存在感が欲しいだけ
繊細さが時に邪魔
寄せ集めで出来ている
「気にしなくていい」と
....
迷いました
立ち込めました
自分を見失い
不穏な空気は濃密です
君がくれた記憶は夜毎一粒ずつ飲んでいて
そうやって体を沈めます
半月が揺れるコップの水面
奥歯で噛みしめ ....
今に分かる事があるとして
それをどうしてこの瞬間に手に入れようとする
吸い込んだ酸素が抜けていくような
強引に引いた糸が切れていくような
そんな感覚が疎ましい
馳せてみる
....
湿度は低く
強い風が首筋から熱を離れさせていく
所在無いまま白い月に見透かされている
打ち解けたい内緒はもう何も無い
君の匂いが鼻先を掠めて
話し始めた頃のことを思い出した
....
区切るために未完成で終わらせる
結論の先でも何かに悩む
明日は今日よりきっと怖いから
眠ることにも怯えてる
鮮明な顔に湿度のある物言い
話すことが得意でないと数分前に言っていた ....
まだ拭いきれない残酷さは
幼少の頃から根付いた罪深さは
その胸のポケットに仕舞いこんでおけばいい
連なる群青の浅い夜と深い朝
いつ芽吹けばいいの
だれが運んでくれるの
分か ....
頷くのは日が傾いてから
寂しい空想はいつまでに片付けよう
長い間向き合ってきた
軋む神経は夜を引き伸ばす
慎重に摘み取った言葉は
どこかへ埋もれてしまう
曖昧でも縋れるから ....
甘いもの食べたいなあ
予約何時からだったっけ
爪が伸びている
遠いと思っていたのに案外
近かったんだな
摘み取った花は短命です
空白が胸から上へ上へ
頭の中は斑模様
....
小さな振幅
揺れている私
過去の夢を見ながら
たまに少しだけ腕を伸ばす
いつも語りかけてくる
その声は真新しいのに懐かしい
口が開かない私は身をよじる
喜びが体内を駆け ....
淘汰されない言葉で頭はいっぱい
いつだって寝覚めの悪い顔
無知を薄情で誤魔化せば随分楽に居られる
不自然な唇の色で健康状態なんて計れない
酔った時の浮遊感
あれって気持ちいい
....
呼び慣れた名前が耳に残って
空回りする思考の意識もあと僅か
無人の駅ではあの頃の影が張り付いたまま
今の姿は砂塵に紛れてしまいそう
明確な手段は隙を作った
たとえそれが在り溢れ ....
あなたが必要とするのは
継続していける現実
いくら探してみてもそんなもの
持ち合わせていない事に気付く
埋め合える隙間が見えないのは
隠し方だけ上手になってしまったから
あ ....
何も出てこない
逆さから見た雲は裂けて、薄い
「カタカナでいいならまだ
あと、少し話す」
ここには
置いていかないで
赤い点滅の名残りが瞼の裏に色を付けていく
....
角度の違うひし形
幾つも重なって
生まれた幾何学模様
誰かが描いた
そんな僕達の角度
歩み寄る君の半身
造りこまれた唇は余分には話さない
肌の隙間を埋めていく
朝が ....
話せるうちに話すから
それに相槌でも聞き耳でも
感覚が一つでも向いていたらそれでいい
このままはお預けで
ここからは
行方不明者が集まる森で落ち合おう
額を触ったら爪が刺さ ....
私はマンションだ。
各階の住人はバラバラだ。
真夜中、隣人の騒々しさに腹を立てる302号室の住人。
夜泣きが止まないと育児ノイローゼになる405号室の住人。
ロケット花火を打ち上げたり ....
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