塗り絵に多くの
期待をしては
いけませんよ
消えそうな手で
果てるまで
そういって命を乞うた
天花粉のけむり舞う
七百十号室は
発疹の若い火照り
八朔を剥く指も
ここでは何 ....
雨曝す心ひとつ
待つ身の程の隅々へ
ゆっくりと
行き渡るのが
夜の毒だから
ケチャップの夜は
泣き止まず
ただだらしない雨を
ひそかに運ぶ
可愛いひとを
手品の箱に
詰め ....
キャンディの蒸発が
存在の危うさに
交わる午後
街は熱中症の糸を
器用に手繰り寄せて
痛覚に群れた
羽蟻を潰す
高気圧が
螺旋する堤防には
焼ける鉄板の
匂いが見える
....
何処か遠くの
坂を流れる
明後日の雨には
耳に馴染まぬ
ぴきぴきが
混じっています
夜の重みで
屋根は脆く
傘の骨刺さる喉が
ひどく不自由で
独りぼっちもまた
手の込んだ ....
空き地の
錆びたエイチ鋼
水色狂気に
夕日が刺さる
眼科の前
露天の油膜
長居して
心恨んだ
バス停迷走時刻表
斜塔煙突の
複雑骨折
幽霊雑居ビル
友はくびれた屋上の
....
運命線が雨
さよならする
道はみどり
くグもる街は
ガラスの塔に映る
奥二重の妊婦
婦人科の空に
末路なびかせる
現象として
なりを潜めて
わたし
人の群れに
混じる
....
暖かい泥が
甘いなら
あなた死んだ
ラーバ真似る舌
滑らかに
沸立つ夢も
明け方の
仕業にする
わたし適齢期
きたなら
飛び立ってしまうのよ
うわごとは
逃がさぬよ ....
すこしだけ発光を
ビブラートする
落花の軌跡と
翳翳発ちゆく
空気の群れに
追い詰められた
心臓が一組あります
匂い立つ
夜の坂道に
色づいた
紅の弓なりが
宙を彩る一夜 ....
つぐみ死ぬ
草むらで
黒いちょうちょを
舞いあげた
あのひ粗末な
ひらひら風
薄暗さの
まっただなかは
ふたりの音で
冷たかったと
つまさきまで
覚えていて
十一月の原 ....
常にあかく
トマトを塗る
あついあつい日々が続き
想い出ゼリーが
ひんやり揺れる
縁側の空気は
うとうとと流れる
小さな匙ですくうと
淡い成分が口の
中で優しいのに
迷 ....
冷凍庫に眠る
蜂の亡骸は凍る
大人のわたしは
花と虚偽の
供述を並べている
あのとき
去る季節は凶暴なのよと
教えられたから
わたしは隠れて
餌をあげた
遺棄傘に貫かれた土 ....
神ガカル文面を
鈍行列車に乗せて
目的地には
停まらないのが
亡霊日和
日が暮れよると
鈍光が生まれ
メキメキと連結は乱れ
吊り革は百足のツメ
ああ先ほどから
笑っておりま ....
0.1sec.