息子の成績が悪いということは
幸せなことだ
悪いということで
親父は あれやこれやと説教し
妻は ガミガミ小言を言い
息子は 神妙な態度でかしこまる
妹達は これはヤバイと脇目もふら ....
戦いに敗れた男達が帰り
生き延びた女達と
ポコポコと夫婦になり
生きるためにガツガツと働き・・・営み
そして 父や母は
俺たちを生み育てた
ご多分にもれず俺たちは
こっちが多いの少な ....
切羽詰まって
吐き出される言葉より
感じ始めて 喋る言葉のほうが
人は豊かなはずだ
時代(とき)よ 追い詰めないで
なんとなく
一緒に過ごす時間を大切にしよう
たとえ ....
結婚祝いの掛け時計
箱の中で眠ってた
曲がった針のその横で
若い妻と僕とが笑ってた
今は時を刻まぬ時計でも
思い出一杯刻んでる
僕は写真を取り出して
出窓に置いて眺めてた
....
私という生命が
物事に感応した時
私の心は何故って
私自身に問いかける
私はさまざまな言葉の森を彷徨い
その意味する言葉を探す
簡潔に 適切に見いだした時
その言葉の群れは
ド ....
私が ここに居ることが
皆の安心となり
くつろぐことが出来ますように
私の言葉が
皆の輝きとなり
自信が持てますように
私の行いが
皆の喜びとなり
感謝の気持ちで満たされますよ ....
I君は言った
貴方の右目は本当だが
左の目は嘘をついている
I君 君は正しい
私が語ったことは
心底そう思っていることで
私が喋ったことは
受け売りだった
....
天才だって
長生きしなくちゃ駄目だ
かまち 貴方に会いに
高崎までやって来ました
貴方が残した
数々の悩み 苦しみ
そして 希望を見つめ
私は息を飲みました
かまち 貴 ....
薩摩の国 知覧に
形ありて残れる品々が語る
失われし人々の言葉
決別の書は雄雄しくあれども
語りかける心は悲し
遺品の武器は鋭く美しけれども
人を殺すことのみ
傾けられた知恵や哀 ....
若さという加速が無くなった時
人は自分の未完成の部分を知る
完成した部分と
未完成とのアンバランスによって
アナタという人格はきしみ始める
無謀という名のレバーを引いて
空 ....
阪急御影駅で降り
石畳の道を登る
道は家々の間を巡り
やがて甲南病院に到る
キラキラと輝く風に揺れ
木々が歌う中 静かに佇む
時代(とき)に馴染んだ白い壁
ガーゼの浴衣 ....
期待していた息子が
期待を裏切り
長年の夢をぶっ壊しました
何が原因かって
それは自滅というもので
原因なんてものじゃなく
どうして ああも簡単に
棄て去ることが出来るのか
横で見 ....
あの日 僕たちは
南向きの石垣に背をもたせ
くすんだ空を見つめていた
いや 僕たちは
子供からの決別をしていたのだ
カズヤちゃんと コンちゃんと 兄にゃんと僕とで
カズヤちゃんが言 ....
最初に電気洗濯機を見た時
それは白い桶のようなもので
真ん中から棒が突き出ており
それがゴオンゴオンと右に左に
反転していた
僕はとても それが洗濯機とは思えなかった
今でもそれは洗濯 ....
テレビが床の間に飾られていた頃
人々は正座をして見たものだった
テレビは財産であり家の誇りであり
神様だった
神の前に集うがごとく祈るがごとく
近所の人々はつめかけ
小さな画面の中 ....
電気冷蔵庫が普及し始めた頃
僕たちの生活はひもじさと同居していた
だから 冷蔵庫の中には
いつ見ても細長いノンスメル(脱臭剤)の箱と
小鉢に入った沢庵だけが入っていた
おっと忘れてはいけない ....
メザシを食べれば
思い出す
干すばったところが
バアちゃんの手にそっくりで
この塩っ辛さは
バア様の小言にそっくりだ
それに
なんとも言えない
ほろ苦さは
バ ....
駅まで送ってくれないか
何処へ行くの
いつ帰ってくるの
もう帰ってこないんじゃないの
そんなことないよって言えなかった
八月の明るさがやけに眩しくて
私は瞼をしばたいた
....
人間について考えてみる
根源的なものとして
人間は生き物である
竹内浩三は言った
人間は生き物であるので
生き続けなければならない
それが神から与えられた
使命である
彼は ....
一九四五年八月九日午前十一時二分 長崎
永井(旧姓森山)緑
原爆に焼かれながら祈る
主の御心のままに従います
願わくば
僕たる者共に
与えられし
大いなる業火につい ....
主よ
あなたのお示し下された道は
余りにも厳しいものです
この私に
歩むことができるでしょうか
私には見えます
主がゴルゴダの道を
歩む姿が
荊冠を被り十字架を背負い
侮蔑と悪態 ....
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