三十年程生きてきたけど、使える言葉が余りにも少ないことに気付いて、昨晩、何も無い部屋で少し泣いた。内側に潜む物の名付け親になるのは少し怖い。世界に触れるには温度が足りなすぎる。関係を感覚以外の何かで自 ....
ホームに立っていると
不意に背中を包む非道い手の感触
音が消失していき
皮膚が離れていく
トン
と、背中を押されると
バランスを崩した肢体は
地上を離れていった
近づけ ....
興奮の隙間にあてがわれた目は
数枚のゆがみを経た
虚を見るにすぎないのに
何かを永遠にしようと
躍起になり
電気を発し
腱を引く
囚われの光
勘違いの人間は
そ ....
あなたに与えられたからだが為すべきことはただ一つだけだと
いつか誰かが叫ぶので、信じがたい事実が辺りを照らす
ぬるり
と、子は真ん中を割り
部屋に満ちる期待を 笑う
ふるえる裸体はみすぼ ....
物心ついた頃には右手に天秤を握りしめていた
天秤の上にものを置くと
新しい道が生まれた
誤差は常につきまとったが
時を重ねるほどに精度は向上し
それに伴うように、皿の大きさも
おおきくなっ ....
檻ごしの瞳の圧倒的な力を知らない娘は
不遇な出会いを恨めず
ただ無邪気にはしゃぐしかない
不憫な娘に、私は
一体何を伝えられるか
空間が違えただけで
私たちは安全に包まれる
遠く離れ ....
かちかちと鳴らされる奥歯
雄弁な皮膚が翼を得て飛びたつ
積もる雪を見るとたかぶりが生まれた
それをもって、かろうじて自身の鼓動を聞く
雪の上で横になると、人を作った
物言わぬ彼は、定めら ....
「生きるには辛すぎる」と語るすべての人が流す涙の味を
私は理解する術を持たないが
しかし私はただ一つの言葉を、確信を持って言う
(あなたに死んでほしくない
あなたは絶望を心の内に溜めこんで ....
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