ウェールズの
とある田舎駅で
列車から降りた
山羊の大きな看板
黒かった
空は夕焼け
そりゃそうだよ
季節は真夏
午後十時なんだから
ウイスキーが欲しいなと
....
何年前だっただろう
車の運転が出来た頃だった。
精神病院に隔週通院していた。
八月だったかも知れない
光と暑さに爛れていた。
五階建ての
茶色の北病棟から
灰色のの廊下があり
その ....
山崎川の
堤には
桜が
満開だ
老婆と
会った
今度の
大戦のころは
桜のように
散れ散れと
言うとったが
あれは
みんな
嘘やった
ささやいて
何処とも ....
城の王は風だ
王座に
塔に
かくれ部屋に
風が住まう
不安そうな顔をした
雲が
城を
塔の暗闇は
王者の輝き
深淵の光は
風の中の闇
闇に沈殿 ....
飛騨小坂に
帰りました。
小坂川を
見に
行ってきます。
翡翠色の川
ほとばしる
瀬と
真っ黒い
たゆたう
淵
そこに
身を投げます。
私は
川の中で
暮 ....
睦月の晦日
夜十時 勝手口の
ドアが開いて
ばんばんと音がする
昨日は母の誕生日だった
六十八歳になった
調理師免許持っている
毎日仕事に出ている
死ぬまで仕事をしたい
と言 ....
岐阜市の金華山
標高328.9メートル
頂上にはお城もあるよ
囲いの中に栗鼠もいるよ
ロープウェイもあるけれど
健脚コースは結構きついよ
ぼくはもう不惑のおっさんで
ちょっと無理かも ....
李から便りが来ない
何故なんだ
結婚するんだろ
俺たち
胸が飢える
清水が欲しい
まだ来ない
李よ どうした
もう諦めるか
そもそも無理が
あったかもしれない
もうこ ....
今の俺は弟が怖い
何故かって
分かんない
タロイモ先生は
被害妄想だと言う
液を飲めと言う
1日2回までいいと言う
飲んでも怖いのは変わりない
ほんとは一人暮らししたい
お金 ....
アイガー北壁に
陽光が差し込み
それは血の色になり
ホテルのデッキから見ていた
俺は微動だに出来なかった
トランペットの輝きになり
トリスタン和音を奏で
ブルックナーのフィナーレを
....
ああ!
犬が可哀そう
近くに立ち寄ると
わんこが犬小屋から
出てきて
ドブを隔てて
此岸と彼岸の幅
六尺ありけり
吠えようとして
こちらに向かって
走り ....
あなた
子供作るからね
まぐあいのあと
Sは言った
「垂れてくるよ」
Sの肉は弾けていた
三週間後
妊娠が判明した
百発百中じゃない!
あんなに嬉しそうな
Sの顔 見た事ない
....
なあに
造作もねえ
ちょっと
ヒカッと
するだけや
水色を
記録しよう
ぼくの水色
あなたの水色
泉であり
小川のせせらぎであり
美しく青きドナウ
だったり
西洋人の
美しい瞳
だったり
それも
生涯
ただ一度 ....
南宮大社まで
S先生に連れて行ってもらった
曇天だった 無風でもあり
細かい水の糸線が
無数にサーッと
間断なく 無音でもあり
微雨が降る
(先生、雨降ってますね)
(淳一君、 ....
彼はサイボーグ
小鳥を見ては
美しいと驚嘆し
魚を見ては
汚いと吐き捨てる
川の一部が
ガラス張りになっていて
魚たちが泳いでいるのを
しかと見える
彼はサイボーグ
魚 ....
菊月下旬の
日が落ちかけの
酉の刻
平野部のだだっ広い
桑畑の海から
ポツネンと有る
古墳の丘
「古事記」に出てくる
のだそうだ
登ってみたら
四角柱の戦没者碑
五十基ぐ ....
心の鏡は
汚れている
無眼人
無耳人
とはぼくのことだ
ぼくの瞳は
遠くを眺めている
何も映らない
漆黒の闇が
見えるだけ
光あれ!
千年の闇を映し出す
鏡よあれ ....
天気予報
みごとに当たって
朝から雨
スルスルスルスル
地球は宇宙の中心か
水蒸気が空に充満して
マグマオーシャンに
雨が降り注ぎ
地球は海を持って
水惑星となった
あ ....
さあ給食当番
鯨の立田揚げかー
みんなによそってあげないと
そんな時に来る
モリタカユキ
おい一茶、
ロボットロボット!
ぼくはロボットじゃない
ニンゲンだよ!
違うって一茶 ....
お兄ちゃん
お母さんねえ
ここに置いてあった
エビのあられ
一つも食べんうちに無くなったよ
俺も食べていないよ
じゃあ悦ちゃんかなあ
まあいいけどね
君に
銀の指輪を
贈りたい
友情の
証としての
君に
銀の指輪を
贈りたい
結束の
証としての
愛情の
証としての
怨憎の
証としての
プラスチックでできた
高さ
千メートルの
超高層ビルを
建築していた
ピカピカと光る
透明な壁面
葛西臨海公園のような
鰹の回遊
やがて
建築に行き詰まり
超高層ビルは
....
漆黒色した
精神科クリニックの
帰り道
高田橋で下車して
目の不自由な
30歳ぐらいの
太っちょな男性
白い杖を使って
ガードレールの
支柱の
こんこんする音で
道を確か ....
俺はワニになって
敵を威嚇しようとして
立ち上がった瞬間
敵が短銃で
俺の腹を
貫いた
スローモーションで
仰向きに倒れ込む
その視線
その動線
身体がズシーンと
重 ....
宏子はどうした
だから婆ちゃん
姉ちゃん、癌になってしもうて
今朝死んでもうたやないの
宏子はどうした
だから婆ちゃん
婆ちゃん 耳が聞こえんから
分からんやろ
宏子はどうした ....
真冬の晴天の日
林道をゆるゆる登っていった
雪はあまり積もっていなかった
四駆に乗って来た
武田先生、降りた。
背広にコートを着て
「武田先生、もうすぐですか?」
「あと ....
中2だった俺は
小6の妹の弾く
「貴婦人の乗馬」
大嫌いで、
背中を蹴飛ばした。
妹は泣きながら
ピアノ弾いていた。
髪の毛を引っ掴んで
妹からピアノを奪取した。
母が怒った。
....
9月12日の
岐阜の未明
窓を開けたら
シオカラトンボ
こいつはすごく敏捷なんだ
フルートのようにね
でもさ
彼は電灯の紐に
捕まって離れようとしない
羽根を摘んで
お外に ....
杉林の深底に
光も届かず
一輪のすくっと
立っている
鬼百合
こんにちは
お元気ですか?
なんとかね
返答された
腹は減らないかい
大丈夫さ それよりも
蜂が来なくて
....
0.3sec.