投函口は窓に含まれますか?
完全な(完璧な)現実がどれほど人を蝕むのかを測る方法を知り得たなら
「この漫然とした日々から解放されるんじゃないか」って思ったんだ
未熟な(不全な)理想がどれほど人を蝕むのかを測る方法を知り得 ....
私は誰かの余波
私は私で在るが無い
痂を剥がして傷に戻す
昨日の夜を思い出す様な軽い気持ちで
光の届かない場所で
大切なものを手放す準備をする
秋は
顔を見せないままゆきそうだ
あの枯れた手は
僕の届かないところで誰かを救っている
それが唯一
僕の悲しみを和らげて ....
褪めた月で明日を占いながら
ひび割れたスピーカーの帰り道で独り
ラプソディーが夜の虹を創っている
朝を夜を繋いで
声の届かない日々を埋め
立ち尽くす浜辺で
涙が海に溶けるまで
心が波に溶けるまで
朝を夜を繋いで
産まれて間もない頃
抱いていたのは後悔だったことを覚えている
私は三人目 二番目の雄
目の開かない音だけの世界で 母は泣いていた
こうなることを予期しているように
目の開かな ....
午前5時ちょっと過ぎ
遠くでまだ怒鳴り声が聞こえて
今日は眠るのを諦めた
父が支度を済ませ
家を出るのを久々に見送る
「まだ寝てなかったのか」なのか「もう起きたのか」なのかは ....
幼さをなくした私の顔を見て
母は泣くのだった
それは
私には知り得ない
何かが何処からか沸き上がった瞬間だったのだろう
過去を、或いは近い未来を思い
幼さをなくした私の ....
陸と海を別つ隔たりなど
無いに等しい
屈折した光さえ
愛せてしまうのだから
陸と海を別つ隔たりなど
無いに等しい
毎日 同じ時間 同じ場所で擦れ違う
名前は知らない
年齢は知らない
どんな声なのか
どんな顔で笑うのか知らない
知り得ているのは 君が
僕を知らないことだけ
毎日 同じ時間 ....
轢死した秋の残骸
溶けた雪の下から
顔を覗かせ告げる無念だ
何処へも行く当てのない私を
重ねるのは余りに不躾だとカラスは
鼻で笑いながら茜の方へ飛んでみせた
どうしたって勘繰ってし ....
テレビのリモコン握り締めたまま
眠りの入口行ったり来たり
独り暮らしの夜は
意外と長い
貴方の手を握り締めたまま
眠りの出口を行ったり来たり
二人暮らしの夜は
意外と短い
厄介な感情だわ
苦しむために在るのだものね
厄介な心根だわ
苦しめてしまうために在るのだものね
厄介な表情だわ
苦しみを覆ってしまうのだものね
厄介な状況だわ
苦しみに嵌まっ ....
僕のためだと料理を作るエプロン(裸じゃない)姿
そのポニーテールにも魔力を感じる(普段無いとは言ってないよ、一応)
部屋が明るく感じるのは君の笑顔(こっそり変えたワット数の高い蛍光灯を差し ....
温もりを思い出して
物憂げに眺めているワケじゃないの
空が、空がね
涙を流しそうで
理由を、理由をね
聞き出そうとしているの
笑顔を思い出して
物憂げに眺めているワケじゃない ....
今年一番の寒さだ と
ニュースキャスターは何故か誇らしげに「お伝えしました」と締め括る
この街は相変わらずシャッターストリート
人生の末路を垣間見た なんて
嘘さ きっと
....
それは突発的で
我に返っては後悔する
何時ものそれと同じように
私は私の髪を切った
鏡を合わせて見た後ろ髪は
それはそれはたいそう不細工で
「恥ずかしくて外 歩けないな」が満ち ....
除雪車に
ウチの可愛い雪だるまが拐われました
深夜2時(25時58分)の出来事
私は裸足で追いかけた
100m 200m 辿り着いた近所の川
無惨な姿で発見されました
可愛いウ ....
いくら待ってもその時は来ない
どこまで歩いても空は終わらない
誰も迎えに来ない疑似逃避行
回復を図って腰を下ろすが
いくら待ってもその時は来ない
道すがら拾った意志だった ....
左バッターボックスから走り去って行く
塁を目掛け
片手には指輪をしのばせた花束を
スパイクには脛を
脛には花弁を
唇に口付けを済ませたなら
左バッターボックスから走 ....
貴方ではない私にも
私ではない貴方にも
融け合う事は出来る
何者かの否定や法則や歪曲など及ばない
貴方ではない私にも
私ではない貴方にも
融け合う事は出来る
口を噤んだ鳥は
項垂れた私の真似をして笑顔を待っていた
どんな顔をすれば満足だ?
どんな顔をすれば許してくれる?
口を噤んだ鳥は
項垂れた私の真似をして笑顔を待っていた
大切にしてきた
ぬいぐるみの腕がとれていた
20年来の友の腕が
床の上で冷たくなっていた
押し入れから
小学校の頃使っていた裁縫セットを掘り起こして
普段しない縫合を試みる
....
こんなにも焦がれた
秋の黄や茜や擦れた緑は
「それらに不必要な色なんだ」と
中学の頃 化学の教師が親切そうな顔で言っていたのを何故だか思い出していた
あんなにも愛でていた色は
命の光彩で ....
郷愁を誘うメロディーが
滅多につけないカーステレオから流れ出すと
僕の空は92年のあの時に戻るのです
僕が故郷と呼ぶ場所は産まれた土地のことではなく
自我が形作られた父の転勤先のことで
....
車椅子を押す老人
毛布に包まれ
それに乗る老婆
誰の目にもとまらず
過ぎて行く人 人 人
悪いのではない
ただ寂しさだけが駆け巡ったんだ
未来から目を背け
まだ先の話だと
....
彼女はひとつ年上の少女
まだ早い雪に消えていった
追いかけるのを躊躇う僕はひとつ年下の老夫
もう遅い蝉時雨の中に佇んだままだ
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