君は幻想
君は幻想
僕を呼ぶのは誰
崖の上から
ベランダから見える青空は
薄暗い部屋からだと
とても明るく
雲が風の速度で動けば
この絵も少しずつ変化をする
ぼくは絵の具も筆も使わない
ただ風の歌を聴くだけ
「トマト売りのおじさん」
トマト売りのおじさんは今日もどこかでトマトを売っているはずだ
廃墟となった町や、スクランブル交差点の真ん中でトマトを売っている
おじさんは汚いボロの服をきて寒そうに ....
「人間は皮膚と血管と骨と汚い汁でできているんだよ」
ハシはそう言いながら木の枝で砂いじりを始めた
「それでね、その汚い汁は人間の真っ白なところをだんだん侵食していって、最後は臭くて汚い塊になるんだ ....
赤い風船みたいな顔をした男がぼくの目の前に立っていた
喉に針を刺したら萎んで窓から飛んでいきそうな顔だった
男が邪魔で外の景色が見えない、どうせ霞んだ風景だろうけど風船を見るよりは幾分ましだ
ぼ ....
階段をのぼる事を諦めたぼくは
目を瞑り壁にもたれ掛かることにした
壁はぼくを堅く柔らかく受け入れてくれた
まるで、泥の中に沈んでいくような密着と深い解放感がそこにはあった
体が壁にのめり込む
....
君はいつもありとあらゆる隙間という隙間にいて
ひっそりと身を潜め、何か考え事をしていた
今日も朝食のパンを食べていると、冷蔵庫の横にある僅かな隙間にひっそりと存在していた
「おはよう、朝ごはんは ....
曇った窓の外からクラクションの音が幾重にも重なって聞こえる
後方にいる車のライトが車内に差し込み運転手の顔を照らした
おでこに大きなホクロのある人の良さそうな顔立ちをしていた
「お客さん〜、今日 ....
電柱に絡まった布
木々に張りついている葉
記号の描かれた旗
小さな波を立てる海
君の影だけが 風に揺れない
意味もなく
少女のように
泣いている
水面は青い
沈んでゆく
魚のように
さざなむ
泡沫の泉
望む
その先に
暮れる
煌めき
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