喋った記憶を遡ると
人の中で泳いでる
かたちはおそらく金魚で
よく冷たい水に潜る
ぷくぷくと泡が声に変わる
耳には届かない
書いて書いて書きなぐって
でも読めないので泳ぐ
紙は ....
仰ぐも雨雲
風がバタバタ明日の今頃
水の音がじんわり残る
せわしない
水門手前のセキレイが
剃刀ひとすじ
鳴く。鳴く。消える
貧血気味に
その目は前に向く
黄土の砂埃に路線バ ....
振れた雨の振動数に寄りかかって
あなたの鼓動は直進する
言葉の数々と濡れながら空を飛ぶ
カーキのマンションの3階に猫を見る
猫も猫であなたを見ている
卑しさに消え入るザクロの双眸で雨の玉を引 ....
コップの水がうねるだけで
時間は微動だにしないね
そのむこうの真っ赤な煙突の墨絵の煙も
必死に青く広がる景色も
上空に関心のないわたしも
中古車センターの色褪せた看板を眺める
わたしも
....
あの人傘さしてない
田んぼの真っ黒を睨むのだ
汗が畦道を進んだ先でぽたぽた落ちてる
恐ろしいまでの星と葦の群れに
身動き一つ取れない
梳いて髪のように拐かされたら
発振に重ね合わせる
....
烏
私がタンカーを見ているのだ 私の
目の前には 海原がそそり立ち
桜の 老木の 肌も露わ
ひび割れた匙で抉ると嗚咽が漏れだす
轟音はずっと工場から
朝と夕 右の煙突を光が射抜いたあた ....
眠りながら埃が泳ぐ
浮かぶ壁面の色と
光芒揺らぐ夜通しの
手折られ可哀想な奴ら
寄り添う姿はひんやりとしている
部屋には目に見えぬ焦りが
夕映えに焦がされた往時のまま
浮かんでい ....
屋根瓦は濡れ色で
雉の音と喧嘩する
遠く電光に溶ける頃
時折冷ややかに鐘の音が重なる
もうまもなく 沈んでしまうわ
月まで誘う鉄橋をご覧なさい
ほらごらんなさいよ
叙景 蠢き ....
お金
ならない
お金はキレイ
花のよう
鈍く光の沈む
夜のあんな猫背の
色した鉛の玉の鈍く
街灯にあんな空と
椋鳥の霊
そんな奴に
セキレイが近づく
白い頭と黒い ....
灰色の風が
冷え込んだ甘い匂いに吸われてしまう
電車の窓ガラスも
街路樹を伝う宵闇も
一本の薄いストロークにのって
色落ちしてゆく
弓のぼやけた冠を
空におくり
人びとは門を閉 ....
からだブン投げて
青柿割り
咲いた
咲いた
青柿
咲いた
婆さん
咲いた
生きてた婆さんの名前 何だった
私を愛して
咲いたか
咲いたか
あの夜
....
畦道にむかう足は
ゴワゴワと、カエルのように
ないて、河川敷に沿って走る
白い、マーチを追い越して
目と、髪が戯れている先の
先まで進み、カラスか
はたまた違う鳥か
とらえて、はなし ....
ぼんたん飴をすりつぶしたように
雲がうじゃうじゃ
あとは青
みんなみんな神宮橋を渡る
横から波と風、羽、工場からのガス
大きな風車がいくつもいくつも見える
車はまっすぐに走れ
....
成田へあれも
弧を描き
うつむき加減に
落ちてって
果肉むさぼる
木々や
倉庫や
薄暗い濁りが
街路まで
漂っては灯火を運ぶ
星を食う
彼は
季節外 ....
私の大好きな古い窓に
あのカラスはキズをつけた
羽虫の薄さで
夕日を水のおはじきにして
木苺の赤い信号が
車を待っているあいだ
硬い色の空を背に
セスナ機ほどの小さな傷で
浮かん ....
ナイフと黒い皿
テーブルには
皺だらけ
砂時計と水と消しゴム
メモと灰皿
伝票とボールペン
ぽつぽつと
灰皿と車と赤い花
黒い空には灰の雲
さらさら
風と雨とまざり ....
ココアがくつくつ
揺れている
背中を壁側に
テーブルに
冷たいシャツ
袖口から右の指先
左の指先
息を吐き出し
口内炎にいじめられ
舌はだらしなくまるめ
文字をぽちぽち
....
南部風鈴の音
風に乗せ
山越え
きーんと鳴る
見るも無惨なお前の笑顔
腕は白い
うちひしがれた隣に空が
はっついてる
いっときも目を逸らすな
言ったのに
泥のように夕日を沈 ....
浮かんでるのがレジ袋
鴉みたいだ
甘く重たい空の様子
大鯰の口いっぱいに砂粒を湛えてる
やがて切れ間からも火の手があがる
青いネオン看板の上に指がみっつ
鉄の焼ける臭いも混ざる
....
蛾が舞う
びいどろ焼けた肌
今日は木曜
粘性の雨
水あめ
甘い茎を廻る
二十ニ色の蛾
電信柱の骨
涙浮かぶ川ふたつ
中洲の向こう
ひとさらい
手も足も
舌の ....
腹の古傷なぞっては泣く
暗愚の空に 私ひとり
空が死んだら
雨雲を睨む
水たまりの真横で笑う
水たまりがゲラゲラ笑う
スズメは驚く
懐く
本当に珍しい事
ぽつりと兎
いびつなシルエット
雨水をくり貫いた一昨日から
恥ずかしい思いばかり
潰れた旅館の瓦礫をくべたのは
あのショベル あれが
やったんです
暗がりの冷たい埃や
月下 ....
え
あのひと
ひこうき
たべちゃ っ
た
愛でては
水の際 熱さまし
大事に
大事に
玩具に灯した芥子色の
そっと切り立つ夕闇 ひと揺れに
やさしく頬張って
咀嚼した 嘶ぁた
沃土にけぶる童気が
か細い
....
虫だ
まるで
飛散する影みたい
なにかが 高架橋から
手を差し伸べる
亡霊の
薄水色の
枯れた枝だ
ピントのずれた
ミズドリの
滞空する世界
その小さ ....
真っ暗に点す
山霧の薄い鞠
電信柱を包み
無味な綿実を育む
粛々と夜を描けるなら
草露に浮かぶ涙も
からかえるのに
緑の看板が ぽつぽつと
糸を引く
小さ ....
艶艶
タイルをなめてるのが
見えるよ
2.8秒くらいの厚みで
鉄骨がさっと横切って
雨 霰も見える
水銀だ
風 灘からの
音も
彷徨と隙間をひっきりなしに泳ぐ
....
ひっ掻き
傷 傷
水滴 水 そら
硝子の縁も
こつんと 鳴く
空
薄らぐ
高速バスのなか
6時をむかえ やがて
針は2分を示す
尾灯 ....
登り窯
緑青
パチンと
はぜる
月
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0.36sec.