こっそりベッドを脱け出して
({ルビ嗄=しわが}れたシャツのまま)

音をたてないように
(ドアノブを引いて)

土手へと向かう
(ホテルから見えた)


暫く歩いた
(犬が見て ....
僕は虫籠の中で 君と話している


無邪気な網はいつも心たちを翻弄して
突然小さな籠に閉じ込めてしまう

僕らは籠の中だとも知らずに彷徨う
(くるくると)

弄ばれた仲間たちに次々と ....
あたまに風船がついていますよ

あなた見えないのですね

忙しすぎて 首が回らないみたい


熱心に遠眼鏡を 見てらっしゃるのね

風船が見える?

それは地球を一周して あなた ....
船乗りのいない朝は 突然やってくる

脳が白い朝焼けに揺れる

瞼から忍び込んで 水平線を引く

船腹をなめる波が 意を鎮めて{ルビ誘=いざな}う

船体の軋む音が 孤絶した海を助長す ....
バーに行けば オーケストラが行き交う

饒舌なバーテンダーが指揮をとり

客は各々の楽器を手にする


銀行員の男性は総銀製のフルートを吹く

離婚歴のある女性が笑うようにピアノを叩 ....
おんなの額の眉間のあたりに

ワルプルギスの夜は訪れ

黒い瞳は熱をおびて

銀食器のように冷たく暗く輝いている

あるいは柱の様な静けさの中には

緊張の糸と欲望の動脈が絡まり
 ....
夕刻地平線 紙の切り傷

鼓動にあふれた静寂がふたつ

痛みをともなうのは
前世からの記憶のひとひら

秘めた焦燥は赤色に駆られて 涙をおとす

はりつく体温と
しお、鉄の味

 ....
人々は 互いの浅瀬に足を浸して

塩の水を汲み取っている

此処では誰もが 孤高で

ありながら共存している

互いの森で 迷いながら



不意に君は森を抜けて 一面の草地に ....
骨の折れたもの

きつく縛られ 置き去りにされたもの

腕に 鞄に

ぶらさがった憂鬱の蝙蝠

その時を待つ核弾頭のように

危うく 厳かに

潜んでいるフック船長


 ....
灯のそばでうっすらと伸びていた その木の影がわたしの道だった。

ひたむきに 踏み外さないよう ゆっくりたどる。

かたくなに 閉じて 進む。

ひかりを割いた道 わたしを護る。

て ....
幼い頃の嘘
明日への嘘
昨日の嘘
愛するがゆえの嘘
恐怖からでる嘘
反抗心からの嘘
プライドを守るための嘘
あなたへの嘘
自分への嘘
取り返しのつかない嘘
取り戻すための嘘
傷つ ....
虎と少女が愛しあってはいけないのでしょうか

虎と少女が旅をする物語 なんて素敵でしょう

虎と少女が寝食を共にするなんて

そう思いませんか?


愛とは何でしょう

虎は愛を ....
赤  黄  青



鳩使いは突然僕らを放つ 

バンゲ達と肩を並べて立ち止まり

注意して

また慌てて渡る



白い吊り橋を抜けて

角を曲がれば手慣れたマイホ ....
見えないものの話をしていると

きみが、どんなお香が好きなのかと尋ねるので

線香、とこたえた。

きみは生まれてこのかた線香など見たこともないような顔をしてからすぐ七話目の話題へと転んだ ....
氷上に立ってから 足ははりつき
常もままならない

尚も失う感覚が 底をみせている
尚も遠のく戦意は既に 月をみせている

氷上の月となり 冷たい光をうつすのか
はりつく皮を剥いででも  ....
どちらからいらしたんですか?

いいえ、こたえなくてもわかっています。

私には遠い場所です。

短い旅に感じられたのは、誰も時計などお持ちではないからです。

あなたの頭皮が赤く日焼 ....
地表を統べてゆくあきらめの色は

熱くもなく、冷たくもなく

まもなくすべての耳に入るだろう時

人は”仕方ない”と言う

熱くもなく、冷たくもなく

ただ”仕方ない”と言う
潤いを忘れたグラス

壊れた時計とその向こうで刻一刻と沈みゆく太陽

空白を綴る日記、封をされたままの手紙

赤錆びに自由と風を奪われた風見鶏

扉を失ったアンティックの鍵

弾き ....
行進するよ、おもちゃの兵隊は。
フェルトの軍服、爪楊枝のバヨネット。
木製のからだに口はないけれど、
スパンコールの勲章を求めて、行進するよ。

ファンファーレを吹くよ、フィーフィーと。
 ....
ガーベラが咲いていた、君の白い腕に。

色香を凌ぐ緋色の神秘は、

{引用="祖母が好きだったの"}

という一言で、とても優しい香りがした。

名前をもたない、雨 ....
君らが私の年輪を見遣る時には、すでに私は切り倒された後だろう。

残された私の上で、手を合わせるのは誰だろう。

そこから見える東雲は、成功と報酬に溢れているだろうか。

それとも人間らし ....
指輪の輪の中に星を見た。

指は星をも貫く。

これだけ些細な優美。


されど骨までも、星の強靭な円によって支配されていようとは。

まさか気ままであるはずのこの眼さえ ....
{引用=「愛してる」と言った人を傷つける
私はあなたの母
私はあなたのシスター
あなたの父親
私はあなたの子供
私はあなたの親友
私はあなたの恋人
私はあなたのブラザー
私はあなたと同 ....
きょうもだいちにあいたたくさんのちいさな穴を

うめにいくのだと、ひとびとはかばんをかたてにでかけてゆく

ひとつでも穴がのこされていればふあんで

しかたがないのだと、ひのくれるまで
 ....
{ルビ東風西指=とうふうさいし}七日間

見えない時間に手を引かれ

終りと始めを繋ぐ日に

白猫、黒猫、青猫は

私を人だと思わない

私の穴は猫達の誰も知らない隠れ{ルビ舎 ....
部屋には誰もいない

椅子は何もいわない

凝った細工 剥げた塗料 底しれぬ存在感

空間を支配する四本の細い足


ひたすら、椅子は待つ


部屋があふれてしまえば
 ....
{引用=故モーリス・ベジャール氏に捧ぐ}


魂が徐々に

輪郭を帯び

しなやかな闇の

波を抜けて

姿をあらわす


共に

時の砂はおち

動脈をめぐる
 ....
いつもこんな距離だった。

君がまだ少女だった頃も、日の出を見た公園のベンチでも、電車で偶然会った時も。僕らは横に並んで座っていた。


僕らは小さな話を沢山並べて星に投げた。ひとつ話を終え ....
エジプトの砂漠の砂の下から

夢でお告げをきいたという少年が

僕の右足を見つけました


僕は兆しを疑ったばっかりに

右足を失いました


少年は僕の右足を使って

 ....
このヴェランダから

もう何日もずっと、雨がくるのを待っている

晴れの日も曇りの日も

安らう日を待っている



このヴェランダから

草原は見えないけれど

たく ....
瑠王(221)
タイトル カテゴリ Point 日付
地球の子自由詩3*09/7/16 1:58
小さな楽園自由詩5*09/7/11 0:47
風船男自由詩4*09/7/8 1:11
船乗りのいない朝自由詩4*09/7/6 16:59
奏でるものたち自由詩7*09/7/5 22:51
魔女自由詩2*09/7/2 18:50
夕刻地平線 紙の切り傷自由詩5*09/7/2 17:54
Agora e seu tempo.自由詩5*09/6/30 11:44
時計ワニで晴れを呼ぶ自由詩4*09/6/23 0:58
灯のそばでうっすらと伸びていた その木の影がわたしの道だった ...自由詩3*09/6/20 0:42
自由詩2*09/6/19 17:21
虎と少女自由詩2*09/6/18 10:34
林檎 檸檬 マスカット自由詩1*09/6/17 14:40
見えない会話自由詩1*09/6/12 17:43
氷上の月自由詩1*09/6/12 16:51
墓守自由詩0*09/6/12 0:13
熱くもなく、冷たくもなく自由詩1*09/6/10 20:31
Etudes Op.10 No.3自由詩1*09/6/10 14:34
おもちゃの兵隊自由詩1*09/6/5 13:10
ガーベラ携帯写真+ ...3*09/6/3 3:20
果てしない物語自由詩6*09/6/1 1:19
拘束と優美自由詩2*09/5/25 15:06
私はあなたと同じ自由詩3*09/5/24 1:45
世界主義者自由詩2*09/5/22 16:38
自由詩2*09/5/20 21:31
椅子自由詩0*09/5/20 16:41
ボレロ自由詩2*09/5/20 1:28
夜の四隅のために書いた詩自由詩4*09/5/18 2:21
エジプトの砂漠の砂の下から自由詩1*09/5/17 13:04
ヴェランダから自由詩1*09/5/13 15:01

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