いつの間にか眠っていた。雨が降りそうと思って夕方に取り入れた洗濯物が、そのまま山になっている。耳障りな音がして目を覚ました。携帯電話がミニテーブルの上でぶるぶると振動している。
 新着メール2件。 ....
この肉体のさなか
誠実と不誠実が
ヒメジオンを踏みつけて
長く伸びる線路の
枕木を踏んでいく

くるぶしから流れる血を
青すぎる空にかざす
鉄とヘモグロビン
緑の上を風が渡り
枕木 ....
花の散るように、ではなく
花の落ちるように
(suddenly she left me alone)
姿が見えなくなったことさえ

あとづけで知る残響で聴く
僕が知らなかったこと
僕が耳 ....
美しい川岸で
誰かが旅立つのを
手のひらで水をかいて
ながめていました

生き物を売り買いして
霊長は得意です

 深い洞の中に
 暗い洞の中に
 葦の茂みの中に
 黒い茂みの奥 ....
厚い雲に覆われた首都に
おとずれる月曜日の朝は
不機嫌で繊細に過ぎる
君の不在を覆い隠してる
幻の列車
行き先はどこか
前へ進んでいるのか
下へ落ちているのか

幻の造花
手のひらを刺す棘もない
皮膚より下に皮膚はなく
皮膚より上に皮膚はない

こうして硬直していく
陽光 ....
かなしみの花を敷き詰めたその
庭園であなたは白い息を吐くの

見失うために出会う速度超過の
ただ二千年に一度の出会いだよ

もう表面張力ではとめられない
世界は私の網膜で壊れていくよ
 ....
霧が晴れる頃に土星の位置を確認する
優美さと沈着さを兼ね備えた惑星より
1610年のはじめましてから今日まで
こんにちは ありがとう ありがとう

話は変わって古びた書物のページに
以前の ....
箱舟の寡黙 見えざる夏の稜線を
朝まだきに眺めて 路上にあり
消えよ消えよと啼く鳥の声が
15年前のように息苦しくさせる

目を閉じて生きてゆけば良いのだと
あなたが言ったのだと
誤解し ....
葉を落とした木々のトンネルを抜けて
半島の北側を走る私鉄の
絶え間ない線路との軋轢を
心地よいささやきの様に夜毎耳にする

秋は未練を払い夏の毒素から解放され
今ひとたび人間を愚かにする静 ....
君に回帰する青空
新しい道具を手に入れて
揚揚と胸を張り進む
紫外線もものともしない

砂漠と草原とステップとツンドラ
悲しみの緯度が増し飛行機の窓が割れ
近く遠く自転しつづけては公転す ....
夏が映り込んだ幻想の裏庭で
ちいさな手のひらをむすんではひらいて
なにを探していたのか なにを見つめていたのか
午後の太陽はコンクリートを熱する

やがて沈黙がやってくるなら
なにも悲しい ....
ビネガロンってかっこいいよね
と恋人が口にした地下鉄の中で
家に帰ってパソコンを立ち上げ
ビネガロンを調べてみたらあら

サソリモドキというクモみたいな
サソリみたいな凶悪そうな生き物
 ....
パチパチと産卵する月光が
きめの細かいモルタルを舐める
チョコレートの銀の包みを
一生懸命に剥がしている

見よう見まねで月まで来たけれど
なにも食べるものがなかった
太陽が地球の裏側に ....
足枷としての宇宙
今雨粒より早く
君に収斂する困惑と
パステルカラーの宇宙

僕をののしる言葉に耳をふさぎ
やわらかさに溺れるための恋愛
未知なるものを知るつもりはないよ
この緩やかに ....
 秋の終わり、こんな夢を見た。
 わたしは船の上にいる。船は霧に包まれる。朝なのか、夕なのか、それが分からないので朝霧とも夕霧ともいえない。海の霧だ。天候が悪くなれば、このように霧が立つこともあるの ....
君かもしれない
水銀のように形なく
まどろんだり拗ねたりするのは
僕の隣で眠る君かもしれない

瞬きを繰り返しては破裂する
懐かしい季節は背徳に伏し
窓際でこころに抱えるには大きすぎる
 ....
うたを歌わなくなって陰影がわからなくなる
道端にすべて宇宙の残骸がおちているような
夕暮れまで秒読みを開始してアルミの屋根を
じっと眺めていた小国民少年少女一様に空へ

沈黙はもうだれもみな ....
流麗にまたは鈍重に
心にもないことを表現する
丁重にまたは低調に
今ここにあるものではないものを再現する

タイプ・フェイス
かげろうのようにあなたが笑うので
髪を切ったり
鏡を磨いたり
靴下を脱いだり
コップを落としたり
ソファーで寝てしまったり

そんなささいなことまで大切になりすぎる

この恋は危険だ ....
形ばかりの水面に
罪を埋めて海を目指す
背の低い潅木に砂が吹きつけられ
背景はいつまでもグレーそしてグレー

声を閉じ込めて液体は走る
髪をつかみそして柔らかに放して
希望と金星は同じく ....
八月が爆ぜて夏が広がり
テトラポットの向こう側で
海と空が入り混じるのを
優柔不断がこうして感じている

グレープフルーツの清々しい香り
水飴を練るように濡れていく心
睫毛を伏せて呼吸を ....
青い夜の旅人
闇の中で草木を撫でる
季節感のない風を
耳の裏側で感じる

気がつくと雨がやみ
広々とした場所に放り出され
記憶のテトリスに
翻弄されていました

誤解氷解表情を抱く ....
夜は去る
みなし児たちの
新しい夢を巡って

動かぬと明言した
その山が動く
あらんとするか
あるとするか
瀬戸際にこそ問いがある

あの雲の形は
あるときは鯨のよう
馬のよう ....
シンフォニア
夜を渉る
寄る辺なき
シンフォニア

オフィーリア
濁る目の
琥珀の底に
オフィーリア

最期に仰いだ空
金属片の月
シンとなる森

ああ 言葉でひとが分かり ....
孤独花びらにのせて歌う
死人の指とよばれる草と
緑の深遠で舞う光の粒子
孤独花びらにのせて歌う

月が満ちても狂気は去らぬ
思う心に二心ありと疑えば
身を傷つけても耐え難くて
月が満ち ....
声よりも小さいもので
あなたに届くだろうか
目に見えないもので
あなたに届くだろうか

葦茂る水の深みから
あなたに届くだろうか
冷たい夜の水底から
あなたに届くだろうか

あなた ....
おいもとめてうしなう
やさきのせつなさは
かなしみとともに
じんせいをまだらに
いろどっていくりぼん

 車を止めて僕はタバコを吸った。少しだけ吸って、火を消した。こんなに生産的でない毎日 ....
木曜日に撃ちぬくセルフ・ポートレイトは
湿った黒鍵の匂いがする

不実な恋人と傘をさして歩きながら
意味のある表情を見出せないでいる

熱くて甘いドロドロに溶かしたチョコレートで
未来が ....
剃刀の刃で喉を裂き死ぬという、いかにも凄惨な最期を遂げた人に僕がかけるべき言葉はなかった、はず。

夜は野卑な信号の群れをくぐって淫靡な闇の中に車を送り出している。
瀬崎 虎彦(381)
タイトル カテゴリ Point 日付
1型散文(批評 ...210/8/10 17:36
ヒメジオン自由詩110/8/9 12:23
サダンリ自由詩010/8/6 13:47
八月のエチュード自由詩210/8/4 8:47
エアクラフト自由詩110/8/3 11:52
認めたくない自由詩010/8/2 16:46
一週間と一日自由詩210/8/2 16:34
寂しさの温度自由詩110/8/1 13:53
られずに自由詩110/7/25 7:33
旅客自由詩210/7/23 14:51
オルフェウスのように自由詩110/7/19 5:42
憤る自由詩010/7/14 22:52
ビネガロン自由詩4*10/7/11 3:12
アコースティック・エミッション自由詩4*10/6/23 22:39
確かな事実自由詩210/6/18 23:23
散文(批評 ...310/6/13 22:07
アモルフ自由詩210/6/9 21:02
どうかね 君は自由詩410/6/8 8:36
タイプ・フェイス自由詩210/6/7 17:16
どうぞ知っていてください自由詩410/6/5 19:50
アスピラ自由詩210/5/30 16:34
ライン自由詩210/5/30 3:11
気がする自由詩110/5/27 19:55
オフィーリアV自由詩110/5/27 17:57
オフィーリアIV自由詩210/5/26 22:20
オフィーリアIII自由詩210/5/24 22:54
オフィーリアII自由詩110/5/24 18:17
One and only life.自由詩110/5/23 23:49
致死率100パーセント自由詩210/5/23 3:36
Sting Ray自由詩110/5/22 1:42

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