ふと 涼しくなった
黒い雲の懐から
葉をゆすり 瓦を撫で 雨は静かに下りてくる

傘を傾け 空を見上げたその時
指揮者の棒に合わせたように
フォルテッシモの雨が降る
川は色を変え
ベー ....
水に溶かした
塩化ナトリウム その他の無機塩類
海水と同じ濃さにして
瑠璃スズメダイを泳がせた

枝珊瑚を探しているのか
きらきらと
行き来する 瑠璃色

本当は
君と同じ真っ青な ....
悪口を陰で言うのと
本人に聞こえるように言うのと
どちらが罪深いか考えながら歩いていると
小国分立状態の教室に着いてしまった

鮮やかな髪飾りの女子たちは輪になって
あちこちに固まっている ....
鐘が鳴る
音が聞こえたら伸びをして
眩しさに慣れるまで俯いていた

顔をあげたら今朝も一人
ひっそりした台所で菜を刻む
ほうれん草は今日のいけにえ
日々繰り返される犠牲

ひょっとし ....
少し 暗くなると
蝉の声は木の幹に吸い込まれてしまった
真昼の空は夕暮れの顔をして
いきものを迷わせている

雲の隙間
乱れ飛んでいる鳥たちの向こう

太陽は何処までも陽であった
光 ....
青い葉の露に溶け込み
雫は森を敲いている

朽ちた葉に 土に
滲み込んでいく
潤している

横たわっていると
流れる水の
奏でる音の中に
このまま流れていってしまいそうだ

私 ....
光の落ちた野の中で
一重に光る金鳳花

細く伸びた茎 華奢な葉
きらきら微笑む真昼の星に
騙されてはいけません

辛い花びら
種を塗り
憎い 憎いあの人に
ひゅっと放った

流 ....
東の山の泉から
湧き出た水が川となり
私の足を洗いながら通り過ぎていく

手を伸ばし足を伸ばして
はね上げた雫が
遠い記憶の影を照らした

私は鰭をもっていた
水の中で息をしていた
 ....
川の声を聴きながら
浮かべた笹舟
葉桜の影を通り過ぎて

日向に流れきらきら光る
小石に躓きくるくる回る
追いかけるうちに飛んで行った
白い帽子

笹舟は 行方知られぬ
見失って
 ....
仰ぐ日 の意味で葵
さらに
向かう日 と 書きたしてひまわり

なんて太陽が好きなんだ
朝日を迎え夕日を見送り
曇りの日はひとり寂しそうに空を見ている

太陽と同じ
こがね色に咲いて ....
種はいらない
白い鱗茎
むかごを抱いて

鬼と呼び虎と呼び
しかし人は喰らった
白い鱗茎

鬼と呼ばれ虎と呼ばれ

猛き名をもち
庭に立ち日を浴びて
うつむいている
だが笑っ ....
今日も雨
川は溢れて
かささぎの渡した橋も流れていった

曇りの昨日 急な夕立
星の川は空に沈んで
轟々と音を立てている

私は此方の岸で祈っています
貴方が流されてしまわぬように
 ....
泳げる海が見つからないから
青い水彩で画用紙を染めた
小さな 赤い魚
たくさん描いても
ひとりはさみしい

泣いたら 海になって泡になって
青に溶けて消えてしまうの
赤い魚も 白いクラ ....
うつむいた君のまなざし
梅雨空の雲より重く
今日も紫

かなしいから
空は見ないの
あの深みに沈んでいけたら と願うけれど

かしこいから
夢は見ないの
重力に逆らっても必ず落ちて ....
左人差し指の皮膚がめくれた
そこから少しずつ広がって

第一関節 第二関節
手首へ腕へ肩へ首へ胸へ腹へ背中へ
頭へも 足までも

そのうち体すべてがすっかり
入れ替わってしまった

 ....
話しかけるとよく育つのは
ヒトの呼気によってその植物の周りの二酸化炭素濃度が上がり光合成が活発になるから
らしいけれど

日本史の暗記に付きあわされて
一晩 戦国武将の名前を聞かされ続けた仙 ....
私たちは同じ星に生きている けれど
たくさんの歌が謳う様に
本当に 同じ空を 見ることができるか

どこか南の小さな島では
太陽が月に隠れるというが
私の町に暗い昼は訪れないように

 ....
くれない匂う 露を宿して
静かに座っている

庭の王が
蝶に語った

――そろそろだから 誰かに話をしたかった

二十日目の夢のことば

咲き定まり
咲き乱れ
さよなら と 無 ....
人参の切れっぱしは北の窓辺
日に日に伸びていくやわらかな葉は薄明かりの中で
光を もっと強い光を
その葉先で探しながら
窓の外を見つめた

細い白い根を水中に這わせて
オレンジ色は痩せて ....
きらめく翅は昔のまま時を止めている
胸を針でつらぬかれて
整然と 並んでいる 蝶々

展げた翅は風に乗れない
標本箱の中で
宙に浮いたまま止まっている

壊れないようにからだの芯を避け ....
健康な足音は一昨年の写真の向こうに逃げて行ってしまった

固まった笑顔は癖
すっかり 乾いてしまって
私の喉はもう唄わないのです

ドとレとミとファとソとラとシ
それぞれの変と嬰
舞台 ....
大切に
大切に
ふくらませてみたけれど

風に浮かべたら
ひととき ふわっ と漂って

ぱちん

壊れてしまった

屋根まで飛べずに
石鹸の
匂いを残して風の中

かなし ....
照留 セレン(52)
タイトル カテゴリ Point 日付
帰路の夕立自由詩4*09/8/1 16:48
人工海水自由詩3*09/7/29 18:35
サンゴ礁の毒自由詩2*09/7/26 20:26
朝食自由詩1*09/7/24 8:53
日蝕自由詩4*09/7/22 19:20
翠雨自由詩1*09/7/21 16:22
黄色—金鳳花[group]自由詩1*09/7/20 13:09
海とノスタルジア自由詩2*09/7/16 8:50
笹舟自由詩2*09/7/13 17:37
向日葵自由詩009/7/11 17:46
橙色—天蓋百合[group]自由詩1*09/7/9 8:10
催涙雨自由詩009/7/7 16:54
海の絵自由詩5*09/7/4 8:17
紫君子蘭自由詩209/7/2 14:59
脱皮自由詩109/6/28 16:31
花と話した自由詩309/6/28 8:29
見えない星自由詩109/6/24 20:14
赤色-牡丹[group]自由詩2*09/6/21 8:21
水栽培自由詩209/6/19 11:36
標本箱自由詩309/6/17 18:55
かつての響き自由詩209/6/15 20:33
しゃぼん玉自由詩209/6/14 9:02

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