夢でみた女を殺す夢をみる
如何しても女が写るレントゲン
冷蔵庫おんなをふたり呑んでいる
咳をする児の背を撫でる薄い影
黒煙と白煙ときみ鯨幕
親心優しく結わう鬼の面
....
枝にぶら下がるくすんだ顔が
路上に落ちて
笑う
見知らぬ女が
ほうきを動かしている
うすのろい朝は明るくて
骨が痛い
ところでご挨拶が遅れました
わたくし箱ともうします
ガラ ....
うすべにいろの水を湛えた浴槽に浮かぶ君の肌から
剥がれ落ちていくはなびらを拾い集めるうろこのない蛇は
白く汚れた脈打つ肌を隠すように染めた恥じらいの色を
閉じた瞼から滲んだ泡のまるいかたちを覚え ....
それにはとても時間がかかる
黒鍵をはじからかぞえていた妹は
一番心細くなったところで消えた
そして、長い間うなだれていた父さんが口をあける
芥子の花、
白い、
縁側は燃えて、
みんなみん ....
松の枝みれんみれんと撓むなり
ほんとうのせかいがわかる病気です
どちらかの指が多いか少ないか
にんげんの水位を上げる遊びする
野の首を焼いた野火子のみがわりに
カンテラの甘き灯りに照らされて
次第に明るい賑わいの
なかにさらりと着こなしの
背中に帯のひとつあり
する、と抜け出して
目の中に泳ぐ人を捕まえにゆく
裸足で赤い星を踏み
鋏で結び目 ....
或るアール、晴れるテイル、あらゆるレール、知るクロール、逃げるガル、変わるソワール、握るベル、通るノクタンブル、閉じるイル、頼るネル、なぞるドール、謀るルーテル、茂るソシアル、壊れるラーゲル、空けるロ ....
下稲田の辻にくたびれた枝が
あちらと指をさすので見ると
地蔵の首がおちている
拾いあげるとちょうど
赤ん坊の頭くらいの目方で
どこかおもかげもある
枯野には犬とも猫ともつかぬ尾が
....
べつに
どうということはない
どうということはない
どうということはない
どうということはない
どうということはないものが
日暮し座敷で首を伸ばして
どうということはないものを
ど ....
「The end of end」
いつも、夜が明ける頃には羽ばたいている、僕の羽。
(小さな卵の中の、予め雛鳥と記述された雛鳥)
いつも、夜が明ける頃にはふるえている、僕の羽。
....
あんまりおなかが空いたのでわたし、
針金をのみこんだのでした
モビールの鴉のお腹から
ぬきだしたいっぽんのあばら骨、
が
するすると引っ張ると
するするとどこまでも伸びてゆくので
校庭の ....
電車をおりると
白線をはみ出した蟻たちの
行列、空をわすれた足どり、で
わたしたちは歩いてゆく上へ
憑かれたように(上へ、
空のない方の上へ、)そして、
さようならと手を振ります、(耐える ....
行き過ぎて ふと振り返る 向日葵の黒
路面電車の響きにそして 忘れるということは
始まり 終われなかった 風のまにまに
匂う いつも通り過ぎてから気づく
ほかに ほしいものなんて な、い
並 ....
夕涼みに
かげふみをする
耳元に低く
音楽が流れていく
横切ってゆく鳥は
背中から胸への
青い輝石
角
のことだけを秘密にして
七時に
会いたい、かげふみの背中
を
めくる鬼
....
凪に
立葵の首がからからと回る
細くながい指のさき
防空頭巾はしろい黒い
僕は何の役にも立たない
手旗信号の練習をする
三味線引きの猫がぴん、と鳴いて
けさがた道になっ ....
√/石畑由紀子
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空に√をかざす まだこたえはない
尾翼灯でもいい 君の名を三回
空 ....
きえぬ線きえよきえよと斜線ひき
ふる里の地蔵が飲んだ水を飲む
鰤炊いてシャガール展は明日まで
山茶花をのぼっていく末期の水
人間をひとりにしない基底材
家族総出でロバのパ ....
桃破壊する少女/ふるる
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春の風草食動物月面へ
そよかぜが草原を渡り、そのままふわっと浮き上 ....
天の川/銀上かもめ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=212337
おっぱいの先を隠して生きていく
銀上かもめさんの詩にはよくおっぱいが出 ....
今はまだ誰のものでもない言葉
はつなつは命をすこし延滞する
母のおなかは折り鶴で満員です
陽だまりにゆりかご骨の色をして
仏飯に日の丸さして笑ってよ
遺影にと醜い写真差し ....
玄関が開いても
わたしではない
ので
もどす
お昼に食べた
おとうさん
おかあさん
ひとしきり泣いたあと
ゆっくりと暮れる
そういえば
今日は人死にがある ....
幾つかと問われればただ指を折る
頃を過ぎてもただ指を折る
背伸びをし過ぎた私の深い爪から
こぼれ落ちる魚
夜の底の青
水面をすくう
静かに、丁寧に
どんなに気を配っても
波紋は広がる、 ....
花をふむ人はきよらか春はゆく
おとうさんと正しく発音する練習
夫婦雛三人暮らしテレビ見る
母の家すすきは痩せて羽根に似る
花の散る頃とはいつか母を待つ
(没句)
ど ....
驟雨
壁の絵を外すと窓がある
まだ名前のない誰かの清潔な床に
点々と零れた眠りを辿る
廊下に並んだ額縁の端
署名が目に入る
布をかける
遡行する
中庭の石畳はまばらに濡れ
痩せた ....
ふくらんだおなかざわざわこどくです
この傘をけして開くまい濡らすまい
野火を見る子ら口々に母をよび
願わくば花の盛りを過ぎるとも
花雲を毟っては食い毟っては食い
春の日に ....
赤い水玉模様に抱いた
未だ物心もつかぬ幼児の
ばたつかせる手が拭う
白粉の下に隠れた象皮に
深く刻まれた街区の端では
青痣と浮腫が今日も賑やかで
皆に愛されるお時間です
強いばかりの ....
逃した魚が尾ひれを揺らしながら
泡のような歌を唄うから
僕とお母さんは今夜もふたりきり
空っぽのお皿を囲んでいる
待ちくたびれた夢の中で僕は
とても大きな魚を釣った
お父さ ....
あちらの通りにもこちらの通りにも
切り紙の蝶々が舞っていて
お母さんにとって、と言うと
あれは冬をつれてゆくのだと言う
ところで
だめになることを蟄居という
たまたま螺子の加減がね、ど ....
六月の陽が射して
雲を払い
風は流れて
雨が上がる
濡れたままの
あなたとわたしは
ひとりと
ひとりで
ふたりだった
ふたつ並んだ足跡を
ひとつひとつ消しながら
終わ ....
行き会へる不幸を悼むものあれど
生まれの幸を思うものなし
*
嗚呼
漸く伸ばしたって泥濘みの底の
銀色が三日月の切先なら
それで何に成るわけでもなし
虚の中は暖 ....
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