今おれは
枯れ草がやけに目にしみる
木枯らし吹く荒野で
始まりを待っている
今おれは
普段怠けてばかりで
ちっとも硬くならない
右胸の筋肉に
熱せられた刻印が
押されるのを待 ....
自分を高尚な人間だなんて思うなら
おれから一メートル半径には近づかないでくれ
酒がまずくなる
季節外れの
予想外な大嵐が通り過ぎた朝
家の周りを取り囲む
防護壁の剥げてしまった隙間を
シンナーくさいペンキを片手に修繕する
今度の嵐はなかなかに強かったようで
思いの外あちらこ ....
太陽が地平線と出会い
辺りは薔薇が搾り出した
真紅の情熱に包まれていく
火照ったブランコに
ぼくときみは座って
目的もなくただ前後に揺られて
軋む錆びた鎖の金切り声を聞く
浮かん ....
出会ったその時から
きみとぼくは
別れるのが当たり前で
目的地に向かう飛行機の中
引き返すことも出来ず
ただ
悲しみの待つ飛行場に着陸する時を
出来るだけ感じないように
ただ一 ....
星の瞬きがまぶしすぎて
僕は目の前から続く
舗装の荒れた道路を見失った
これからどこに向かうんだろう
どうしようもなくなった時は
地べたに腰を下ろして
不細工に微笑む月を眺めて
....
夢をあきらめるな
なんてしたり顔で言ったりはしない
追いかけても追いかけても
手の届かないシャボン玉のように
つかんだら壊れて消える
夢はいつか覚めるもの
現実を突きつけられること ....
雲ひとつない
晴れやかな笑顔の
青空を
穴の開いたスニーカーで
堂々と歩く
途中
見えない遮蔽物を越え
見えない恐怖心を捨て
先々で
訪れる景色
発生する出来事
すべてが ....
きみと
いっしょ
たのしい
はず
なのに
いることが
とても
くるしい
きみの
わらいごえが
ぼくの
こまくを
やぶる
きみの
しせんが
ぼくの
りょうめを
....
昨日十六年連れ添った
黒毛の雌猫を失った
土へと還すため
スコップを右手に穴を掘る
彼女がいなくなったというのに
空は相も変わらず
いつか遠足の日に海辺で見上げた
ソフトクリーム ....
愛しい人よ
お願いだから
ぼくが死んでも
ぼくの心を解剖しないで
ぼくも見たことはないけど
ぼくの心の中は
恐ろしいほど原色だらけで
それを少しでもオブラートに包もうと
黒いモ ....
ベッドの上で
布団にくるまっていると
やけに窓の外が遠く
手を伸ばすと少しだけ向こうに
ベッドの中で
惰眠をむさぼっていると
窓の外で
雨が降っても
雷が鳴っても
全 ....
ぼくたちはその日も
西日が差す
四畳半の狭い部屋で
互いの心を確かめようと
見えない体を貪り合う
毎日のように
きみの乳房の位置を想像しながら
ぼくの陰茎の長さを期待しな ....
もう何年も
目的を見出すこともなく
時間を無駄に撒き散らしてきた
あなた
ここいらで
自分自身を見つめ直してみてはいかが
非常に簡単なことです
自分の暗闇に沈んで澱を積み重ねる
....
毎日毎日
大量生産される部品を真似た
日々の繰り返し
一時たりとも休まず
懸命に働き続ける
大丈夫かい
他人のために黙々と
自分の仕事を果たしている
辛くないかい
こ ....
ぼくの背後で
どれくらいの回数を
太陽と月が交互に
未だに頼りげな
ぼくの背中を
照らし出していったのか
両手の指では数えられない
ただ背後に映る
太陽の情熱と
月光の沈着を ....
おれはただ落下している
飛び出したのが三十階建てのビル
だからおれは数秒後には助からないだろう
勘違いしないで欲しいのは
おれは死にたかったわけではないのだ
むしろ積極的な肯定的な思 ....
日々の暮らしが
水周りについた白い水垢みたいで
代わり映えのしない時に
苛立ったり
戸惑ったりしながら
それでも自分の意思を押し流す
圧倒的な時の流砂に
窒息してしまいそうになる ....
木枯らしがわがままに通り過ぎる新月の夜
きみとぼくは人気の疎らな
寂れた駅のプラットフォームで出会う
互いにはにかみながら
それでも幼少期からそばにいる
竹馬の友を真似た笑顔で
触 ....
出歩くたびに
懐かしい風景や光景に出会うと
僕は心のファインダーを覗いて
素早く音のないシャッターを切る
撮った写真には必ず写るはずのない
きみの姿をした心霊写真
秋の紅葉 ....
冬がすぐそこまで
足並みを乱しながら
昨日の寒さを駆逐する
新たな季節を告げようとする朝
新聞を郵便受けから出そうと
外に出ると
東から紅く頭に血が上った太陽が
ゆっくりとこちら ....
使い古した
陳腐になった
聞き飽きた言葉
使い古したのは
陳腐にしたのは
言い尽くしたのは
誰だ
誰だ
誰だ!?
只今リハーサル中
きみが来るまでの間に
やれることを全部やってしまって
気持ちの戸棚を整理してしまおう
テーブルを挟んで
向かい側に
きみが座って
ぼくに微笑みかける
....
嘘を塗り固めるために
心にもない言葉をたくさん抱えて
俯きながらあなたに贈るよりも
たった一輪でもいい
あなたの心を捉えて放さない
そんな
ただ一つの言葉を
心のポケットから
....
同じ動きをトレースしながら
白い泡を口から噴き出し
穏やかに波は通り過ぎる
海風に撫でられていつでも
湿気のコートをまとった
重い砂の上を二人は歩く
景色を見ているわけでもなく
....
みんなから信頼されなくてもいい
正しい行いが出来なくてもいい
本当の真実が分からなくてもいい
神様
おれを暗闇に
一人置いていかないでください
おれの心の中を
乾 ....
通りかかった河原で
目に溶け込む焼け付く夕陽
網膜を通って脳にたどり着いた紅は
海馬の中で捨てられうらぶれた
記憶の亀裂を掘り起こす
時が急激にブレーキをかけて
皮膚の周りを
穏 ....
小春日和のある日
可愛い女の子が一人
白血病で死にました
仰々しい祭壇の前
棺桶を覗き込んで
涙を流す人々がいます
目を閉じて
無念さを隠さずに
手を合わせる人々がいます
葬 ....
言葉が語る悠久は
その中身を満たすことが出来なくて
時間がいつまでも空洞のまま
波打ち際で形を変える砂の
不確かさに似た悲しさを伴う
二人手を伸ばして誓う永遠も
伸ばした手 ....
いてもいいよ
耳元で言ってくれてありがとう
いてもいいよ
存在が嬉しくて視界がぼやけてる
いてもいいよ
ぼくの心を利用したりしないよね
いてもいいよ
感動 ....
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