天仰ぎ 飛び立つ黒背 花吹雪
鏡の中のあたしは
毒りんごを持ったお婆さん
あの娘の笑顔を壊したい
醜い心のお婆さん
優しく近づき猫なで声で
このりんごを差し出せば
きっと食べてくれるはず
疑うことなどないままに
....
「死にたくない」と
悲鳴をあげてあなたが言う
そんな姿を見ている私の近くで
「死にたい」と
自ら命を絶つ人がいる
「死にたくない」と
死ぬ思いで戦っている
そんなあなたの言葉の先で
....
記憶もおぼろげな
懐かしい味
大好きだったそれは
行商のおばちゃんが持ってくる
あんこも入っていない
手作りの味
一緒に入っている
きな粉が唯一の甘みになる
朝早く電車に乗って ....
そのまま
動かないで下さい
手にした花を慈しむ
その横顔をまだ見ていたい
そのまま
どうかそのままで
緑の木々に佇む姿
風になびく柔らかい髪
それはまるで一枚の絵のよう ....
夕暮れの街
寂しいだなんて
どこからくる記憶だろう
誰かの庭先
小池に落ちて
もがいていたのは夢じゃない
ざわついた心は
夜に自分を責めて終わる
だけどそんなものはおくびに ....
父がテレビを見ていて
「昔は良かった」とつぶやく
おそらく白黒テレビの時代だろう
私もテレビを見ていて
「昔は良かった」とつぶやく
だけどそれはカラーテレビの時代
父は「いしだあゆ ....
わたしの恋は
あっけなく終わった
あまりにも
あっけなくて
泣くことさえ
忘れていた
酷い言葉でもくれたら
思い出せたのに
消えたいなんて
簡単に思ってしまうほど
心は粉々に砕けて
戻せそうにない
振り向いた先
いつもの街の風景
現実なんていつも
情のない色彩
立ち止まって下を向き
声を殺して泣い ....
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