うそには わざとだまされて
だまされる自分を楽しんで
むなしくないのと訊かれれば
わたしは機嫌よく答えられます
日頃 自身を欺いていますので
時には他人にだまされたくて
そう ....
その部屋からは駅が見えた
あなたが帰る姿も見えた
その部屋からは通りが見えた
あなたが歩く姿も見えた
その部屋からはわたしが消えた
あなたを待つ わたしは ....
駐車場の樹の下で
わたしは黙って雨を見ていた
輪回しをする子供たちが
家路を急いではしゃいでいた
男たちはうつむいて
路面に何かを探していた
ひとりごとは小さすぎて
誰にも聴こ ....
スーツが似合うようになりましたね
わたしは褒めているのではないよ
代わりに隠してしまったあなたの素顔が
しかたないさとため息つくから
あの誰にも壊せなかったあなたの庭を
閉ざした扉は ....
もう絵はやめた
そう言っていたあなたが
鉛筆を一本買ってきた
照れ笑いを浮かべながら
これだけで描けるものを
それが今の気分なんだと
紙を忘れてしまったと
やっぱりち ....
髪をほどいてこちらへおいで
いいえわたしはこのままで
ここからあなたを見ています
そこからわたしは見えますか
体温がなければだめですか
この冷たい肌を知らずに
....
丸まってころがると
砂ぼこりがたちました
駐車場のブロック塀に
当たってやっと止まります
そんな乾いた場所でも
水は溜まっておりました
だから背中はこんなに汚れて
とてもすぐには ....
古本をさがしに
町に出たのですが
足をひねって
歩くのがつらく
花屋の前に
すわりこんでしまい
どこからか来た
蜂の羽音に
彼の目的が
花だと思いながら
か ....
いちもんじせせりを
うどんこ と呼び
指先についた燐粉を
ズボンのひざになすりつけ
指紋の溝が光るままに
半日を走って過ごしたのは
いつまでだったでしょう
何が楽しかった ....
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