あの眩暈のしそうな
白い台風が去り
三日が過ぎた

路上の名残雪は
鋭利な透明を帯び
庭の雪だるまは
縮こまった

そんな
冬の日


自転車の前に
娘を乗せて走っていると ....
明け方に

貴方様の

その
乱れた
長い黒髪を

結い上げるのが
私のお仕事でございました



脱色も
染色も無い

真っ黒な
艶やかな
濡羽色の御髪に
{ル ....
真夜中
雪の解ける音で
目が覚めた

窓を開けると
まだ小さな
『春』が
窓枠に腰掛けて
せっせと雪を食べていた


時々
喉に詰まらせて
せき込むので
背中をさすりな ....
寒い冬には
空に
大きな蜘蛛の巣が
掛かっています

蜘蛛の巣は
ふだんは見えません

でも
群青色に染まった夜
群雲が月の溢れる光を
うっかり落としてしまった時
白く透けて
 ....
黎明は午睡の中

夜明けを望まず

覚めない夢を見る


もう目覚めないで



『眠れる森の』



知人が交通事故で
植物状態になった
あまり親しくなかったが
 ....
とある人形師が
水晶と真珠と白金を使つて
一体の絡繰り人形を作つた


(キリキリキリキリ)


人形は命も無いのに
笑顔で首を動かして


(キリキリキリキリ)


 ....
天の川輝く
零下10度の
砂漠の夜

いつものキャラバンで
友達のラクダと一緒に寝る
名前は知らない
聞き取れなかったから
それで良いと思った

夜には一枚の毛布と
ラクダが
 ....
今宵も
しんしんと
夜が降る

私はゴーグルもつけずに
調度良く降り積もった夜に
深く深く潜る


深淵までたどり着くと

耳元を
口笛のような風が吹きぬけ
目をあげると ....
十一月十五日

俺はあの女が嫌いだった

あの女も俺が嫌いだった

あの女は俺のダチが愛した奴だった


【手向け】−11.15 骨−


ダチが死んだ

唖然とした

 ....
1陣の風突っ切って
2つ目の角を曲がったら
3軒隣りの奥さんに
4度もくしゃみをプレゼント
5秒の間に
6里を走り
7つの海をまたにかけ
8コの街に季節を告げる
9【く】労もしたが ....
浅草の古い映画館が
今年いっぱいで閉館になる

その知らせを聞いたのは
年も暮れかかっている師走だった



『映画館の恋人』



祖母は映画好きな人だった
忙しい母に代わ ....
細かい雪が


と降る

夜更け


人の居なくなった渋谷駅で
仕事帰りの
主人を待っていると
同じく
主人を待ち続ける
あの有名な犬が話しかけてきた


世間話か ....
何年かぶりに
自転車に乗った


早朝
海岸への坂道を立ち漕ぎする



自転車に乗るのは

本当に

本当に久しぶりだ


きつい登りに
太ももが悲鳴を上げ ....
まだ雪の多い
街中を
私は外套一枚で
使いに出ておりました

ご奉公先の奥様は
とても優しい御方で
時々
私に使いを頼む時には
少々多めにお手前を握らせてくださり

何か好き ....
午後6時

宵の口は
ぱっくりと
開いて

闇は
手で掬えるほどに
近くまで降りております

ときおり吹く
北風が
ぴうぴうと
母の頬を煽るので
やはり
母の頬は
リン ....
最期の最期で
酷いことをする私を
憎んで下さい



私は明朝に死にます

信じられないことかもしれませんが

ちょうど三年前

死神が枕元でそう言ったのです



死 ....
私の右手には
小指が二本ある

生まれつきだ

小さい頃はいじめられたが
今は手袋を探すのに苦労するくらいだ


そう
小学4年生の時

気味悪がられるのが嫌になって
 ....
シリウスが綺麗になったから

息子と一緒に
夜の海へ出かけた

星の匂いが鼻をつく


息子の手には
骨董レベルの携帯が握られていて


それは
息子の母親の持ち物だった
 ....
或る日
森の中

猟師に出会った

彼は
鳥が好きらしく


持っていた
大きな麻布の中から

沢山の鳥をだして


味見をさせてくれた



カモは
名月の味 ....
私がゲームをしてる間に

貴方は酔っ払って
うたた寝をする

唇から
解き放たれた
吐息まじりの
夢が
狭い部屋に
充満する


窓に
青空とカモメが横切り
レコードの音 ....
最近寝ても夢が見れなくなった


夢テレビが壊れて何も映さないらしい


町に買出しに出かけた





毎晩毎晩使うのだから
やっぱり今の時代夢はカラーだと思ったり
 ....
春の朧には
狼の遠吠えが聞こえる


黄身を崩した
蒼い朧月に


マンションの屋上から
屋根の上から
銭湯の煙突から


ああほら


またも
遠吠えが聞こ ....
{引用=私と奴は                   僕と奴は
お世辞にも                   お世辞にも
仲良しとは言えなかった            仲良しとは言えなかった ....
俳優だった夫は
有名なSF映画の主役で


宇宙飛行士の卵を
何人も産んだ


男の貴方も子供が産めたのね

からかうと
真面目な顔で
これからも励みます

言い返した ....
真っ白な雪野原での事でした



真っ白いその空気の中
インクを垂らしたように
その黒い人は立っていました


時折はためく

やはり

黒いマフラーが
降る雪と交差し ....
母にとって
父の面影を落とす
私は
悪そのものでした


父が何をした人だったのか
母がどんな目に合わされたのか
そんな小さな事は
どうでも良かったのです


ただひたすら ....
雨の日になると
サキちゃんはきまって
サカカサコウモリを作った

真っ黄色い
ちっさな
雨傘を

振り上げて

膜の裏返った

サカカサコウモリを作った


僕は ....
左目の古傷を開かれた


ぷつぷつ

肉の裂ける
鈍い音が
鳳仙花の匂いが
絡み付く記憶をえぐり返す

カサブタを剥がされて
マブタ肉の隙間に

奴の遺した眼球が
 ....
俺はあの女が嫌いだった

あの女も俺が嫌いだった

あの女は俺のダチが愛した奴だった


【手向け】−骨−


ダチが死んだ

唖然とした

初めての喪服は
急すぎて買う ....
僕はスプートニク2号
地球初
気密室を搭載した
宇宙船


まもなく
僕は
他の兄弟と同じように

宇宙の塵となる
鉄の塊


その日
僕の部屋に来たのは
いつ ....
蒸発王(128)
タイトル カテゴリ Point 日付
飛ぶプラチナ自由詩206/1/31 19:07
黒蝶々自由詩206/1/25 15:23
冬の味覚自由詩506/1/22 0:47
雪になるかも自由詩306/1/17 19:12
眠れる森の未詩・独白106/1/16 23:59
人形芝居[group]自由詩3*06/1/16 23:54
らくだと全ての夢の果て自由詩4*06/1/10 22:58
潜夜一夜物語自由詩2*06/1/7 22:13
手向け(骨)(糸)(雪)(暁)未詩・独白3*05/12/31 11:49
お遊び自由詩205/12/30 0:26
映画館の恋人自由詩4*05/12/28 21:24
渋谷レッド・ノゥズ・レインダー自由詩2*05/12/24 15:47
父と自転車と蒼と[group]自由詩4*05/12/22 0:15
郷恋自由詩205/12/20 22:43
母に寄せて自由詩205/12/20 22:40
恋文自由詩405/12/17 20:55
ゆびきり自由詩105/12/12 20:04
シリウス自由詩5*05/11/18 1:11
鳥モノ帳自由詩3*05/11/12 0:13
夢感染自由詩105/11/2 19:15
夢テレビ自由詩205/10/30 0:05
春の狼自由詩205/10/26 0:57
にわか雨自由詩405/10/23 0:30
星葬自由詩105/10/20 23:20
雪葬自由詩205/10/20 23:18
花葬自由詩105/10/20 23:16
サカカサコウモリ自由詩305/10/17 22:21
鳳仙花自由詩205/10/16 22:37
手向け(骨)自由詩505/10/16 15:00
スプートニクの泣いた話自由詩905/10/15 0:56

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