獰猛な牙
私の腰まである肩骨
力強く張った後ろ足
しなやかで長い背骨 尻尾の先まで
虎の骨
きっと熱帯雨林の奥で
この巨体で獲物を待ち伏せしながら
たくましくしぶとく生きていた
....
私は閉じていたいのです
醜い物には瞼を閉じて
聞くに堪えない罵声には両耳を塞いで
美しいものだけ
蝶よ花よと歌っていたい
私は閉じていたいのです
寒い空気からは布団で隔絶し
....
彼女は前衛造形家
誰も見向きもしないような木っ端や
見るに耐えない汚泥や
忘れ去られた有刺鉄線で
誰もが目を離せない作品を作る
彼女の親友は彫刻家
美しい石を掘り出す処から始め
石の ....
海の味を覚えている
アサリよ アサリよ
お前が居た海の味をこの舌は知っている
私は明日 おまえを食べるだろう
そのために舌で味を見ながら
砂を吐かせるための塩水を作る
おまえはそん ....
眼福眼福
駆け行く灰の雲のあとに青い空
濡れ葉に水滴
さえずる群雀のふくよかさ
眼福眼福
丘の上に立つ古い山桜
枯れ枝に積もる雪
佇む烏のただ黒き姿
眼福眼福
薄墨色の稜線よ ....
『どれでもいいよ』なんて
『どうでもいいよ』に聞こえてしまうよ
確かにどうでもいいのかもしれないけどね
私の方がどうでもいいの
コーヒーなんて飲まないもの
もっぱら紅茶ばかり飲んで
豆 ....
『意匠作成中』
そうステッカーを張られた真っ白な看板は
街の夜の中ライトアップされて
自分を飾る色を今か今かと待ちわびる
何を描いてもいいよとブラシを渡されたけど
もとより絵心なんてなく ....
ぞんざいに揉まれ
熱湯で煮出した
雑味だらけの茶の味に
ツタの剥がれた哀れな球場を思い出す
共に朽ちたかったのだろうに と
勝手な想像で
乳白色した壁を哀れむ
茶は雑味だらけで
熱さは ....
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