12時、きっかり。門を閉める。
鍵を閉める。金庫を閉める。

薄暗闇のバーには、どんなお客の姿も見えない。
11時。すべての客は、バーテンダーを置いて帰っていった。

小さな敷地に店を構え ....
夕立が起きて、大粒の雨が落ちた。願いは、天のまえで力尽きた。まばゆい光を放ち、轟音とともに地上に舞い戻る。

決意のない願いは、所詮天には届かない、と卑劣な長が威張っている。勝ちたいと願うなら、勝 ....
街には、真夏と人ごみがあった。
真夏と人ごみは、高架橋のしたの、タバコの吸殻を知りはしなかった。
ただそいつは、そのことを知っていた。

タバコの吸殻には、銘柄が刷り込まれていた。
銘柄は、 ....
すれ違うままに、時折り消えていく存在。

かすかに足の裏が傷む。その感覚が拡張され、次第に、体全体へとその痛み蔓延する。血流の呪いか、はたまた肌に溶け込んだ電子の波の影響か。
大量に流れ出る汗は ....
影の、模様が、オレンジ色の光の混ざって、
ひときわ目立つ、クリーム色の壁。

朝には、日差しが、ベランダの、遅起きの昆虫を、
執拗な温度で照らす。

次の日も、町内に響く、下校のチャイムが ....
 芸術とは?

 蛙     

そいつは決まってる。かっこつけないことだ。
 
 ライオン  

いやいや、そいつは違うね。かっこつけることだ。かっこつけないことには始まらない。
 ....
雨の道を歩く、水溜りの歩道。
灰色の雲は灰色の光を閉ざす。
届かない熱は届けない大気を怨む。

振動に驚く大気の呼吸。
こもる音。飛び去るフラミンゴ。
やがて、届かない、熱を想う。

 ....
真夏の公園の池は、小さな子供たちが占領していた。大きな大人たちは、体中に日焼けオイルを塗り、コンクリートの上で寝そべっていた。
光はじりじりと地面に降り注ぐ。光は水面にきらきらと反射する。子供たちは ....
草原の昆虫が挨拶!
木の幹にしがみついたビニール袋に、水滴がたまっている。
春を置き去りにして、走ってきたよ。
風は生温くて、とても涼しくなんかないよ。
春を置き去りにして、走ってきたよ。
 ....
階段を下りる。
アスファルトに足がつく。硬い振動が頭の先まで震える。
暑すぎる夜の熱は、ビルの内側から吐き出されたため息に違いない。
スウェードの香がする。
呼吸を繰り返す街。ライトアップされ ....
水に砂糖を入れてくれ、と注文する男、
完全に氷を溶かしきってから、ウィスキーを注文する男。
男はパチン、と指を鳴らす。
バーテンダーは振り向いて、にこやかに笑いかける。
男はニヤッ、と不気味に ....
机でランプが灯り、絵はがきについた赤いインクが滲んでいる。
空を隔てる天井に、逃げ出すような駆け出すような音が響く。
青い血脈の、力強い脈打つ音がうめき。

手を振り回しても、何かに当たること ....
真昼の街は人ごみでしかなかった。通り過ぎる景色は人の頭だけだった。歩道へはみ出した看板には魅力を感じることも出来ず、トコトコ歩くほかなかった。
空の存在が異様に近く感じたのは、高々と建築されたコンク ....
暑さ 流れる空間
   自転車に乗った二つの目、通り過ぎるガラスの扉を見つける。
   君は靴を履き、靴は君を支える。
 
   バイクに乗った無数の汗、道路を挟む水田を通る。
   路を進 ....
高温のベランダ。光が照らす形。光に溶けていく体。ここから先へはいけない。夜が待っている。
蛙は水田で鳴く。鳥は空で鳴く。人は蛙と鳥のあいだで鳴く。ここから先へはいけない。朝が待っている。

芸術 ....
昼が過ぎる。真夏日が待機した窓を開いた。
半裸な都会の露出度は、夕方に足を突っ込んでいる。
ベランダから返り討ちをしてやろうと、長袖に手をかけてやめた。

―ソファーの色、体毛よりも淡い、素肌 ....
外出したくない気分で外出をする。街には騒音がこだましている。耳に入る沈黙は皆無で、屋内へ足を踏み入れたとしてもBGMが鳴らされている。僕はあくびをする。それから後頭部を偏執的に掻き毟り、すれ違っていく .... 彼女達の足がモデュロールを刻む。スポットライトが暗闇のステージを照らす。観客はステージを凝視する。ダンスピープル。彼女達の足が刻むモデュロール。

魅力的なのは妖艶なのか。無印の、無垢の、表情が重 ....
良心の呵責を感じた看護婦が、昨日、自分の祖父に謝罪文を書いたバーカウンター。
130席用意しているけど、130人以上の予約を喜んで受けてしまう店長。
ご自慢の料理は?ときかれて、妻の自慢料理を答え ....
形状と言えば、影の淵の庭に続く、丸みを帯びたプール。死んだ水滴の集まる、丸みを帯びたプール。

形は、そこに記されている。それが見えなくとも、匂いで分かる。影の、淵の、庭のような匂い。それらの形は ....
曇り空の晴れた日の夕暮れに、昔からおしゃべり好きな友人が自信たっぷりに言ったことが気になった僕は、土手まで歩いた。

「夕暮れになると魚はいっせいに鳴くんだ」

そいつはアッカンベーが好きだっ ....
スタートラインの内側に立つ。眺める景色はいつも道り。緊張している鼓動が手のひらまで感じる。リラックスしよう。深呼吸する。深く息を吸い込み、吐き出す。
膝くらいの高さの台の上、白い帽子と白いポロシャツ ....
本棚のくもの巣が光った。
午後の朝焼けはきれいだ。
いつまでも沈まない湖畔はきれいだ。
台所のこうろぎが唸った

夜半過ぎの、混乱には間に合わない。
タクシーを呼び寄せた、彼女の腕は伸びな ....
火の光を見ない、ムツゴロウの家族は、夕べの洪水で太平洋の真ん中まで流された。
浜辺からではゆっくりと平和な凪も、太平洋の真ん中では凶暴でビールのようだった。

それはなぜでしょう。
司会者が発 ....
水蒸気が薄く空の前にはばかっている。鮮やかな青空はこうして、くすんだ青空を獲得した。目の前に広がる、見なられた景色。今じゃ、コクコクと変化していく時間に褐色じみた進化を見せている。だけど、少子化の拍車 .... ある物理学者が、人の数だけ次元は存在するといった。人と人が出会うたびにそれらの次元はゆがみ、分裂し新たな次元を生み出していくと。

21歳の春。地元の小さな山の上。見晴らしのいい場所だった。その場 ....
一瞬先の未来。勝敗が飾られた電光掲示板。うつむき加減に感触に、視覚に、聴覚に、勝利の予感を感じる。

一瞬先の未来。勝敗を左右する真夏のグラウンド。うつむき加減に、汗を感じる。不安を感じる。期待を ....
地球がある

地球は地球じゃなかった
地球は山か土か岩だった

地球は野原
   野原というよりはフレーム

地球があるのは
地球に住んでるから

地球にウサギが入る
地球をト ....
洞穴がある

洞穴は洞穴じゃなかった
洞穴は、山か土か岩か。

洞穴は地球。
   地球というよりは出来事

洞穴があるのは
洞穴を見つけたから

洞穴をウサギが横切る
洞穴に ....
忘れてきた思い出がある。夜になると、頭の中で記憶と感情が騒ぎ出す。乱雑に、不規則に。忘れてきた思い出が疼きだす。ひっそりと現実をかみ殺そうとしている。いや、現実にかみ殺された感情が、現実を見返してやろ ....
チャオ(115)
タイトル カテゴリ Point 日付
バーの悲しみ、とトリコロールの跡で自由詩2*05/8/16 2:43
人が待つもの5散文(批評 ...1*05/8/15 16:40
そいつの街自由詩2*05/8/12 13:40
不確かな存在3(風が起きるまで)散文(批評 ...3*05/8/10 22:34
住宅地の陰口自由詩3*05/8/6 16:34
芸術会議[group]自由詩2*05/8/5 22:25
滲む音の、震える香。自由詩6*05/7/30 18:58
真夏日、東京、午後1時から散文(批評 ...2*05/7/30 2:45
挨拶!自由詩5*05/7/26 2:12
トリコロールのシャツ自由詩2*05/7/25 20:04
トリコロールシャツ、とバーテンダー自由詩2*05/7/25 2:18
自由詩3*05/7/23 17:12
真夏の日々散文(批評 ...3*05/7/22 20:37
暑さ 流れる空自由詩6*05/7/20 18:30
光の声、闇の声。一つの声散文(批評 ...4*05/7/19 16:38
アスファルトに宣誓する自由詩7*05/7/15 18:00
フリースタイル4(たとえばカフェの一席で、もしくは私鉄の一席 ...散文(批評 ...1*05/7/13 15:26
フリースタイル3 (ダンスピープル)散文(批評 ...2*05/7/12 19:44
スパゲッティー、コーヒー、アイスクリームカフェ自由詩5*05/7/12 1:58
銀色のコップ散文(批評 ...2*05/7/11 16:37
夕暮れが始まる頃に自由詩4*05/7/9 18:08
プレッシャーと対峙して散文(批評 ...005/7/8 1:40
世界中の今時刻自由詩2*05/7/6 17:23
長い詩自由詩0*05/7/4 21:31
不確かな存在2  (空、のその後で)散文(批評 ...1*05/7/4 17:52
不確かな存在散文(批評 ...2*05/6/29 11:24
フリースタイル2散文(批評 ...005/6/26 16:47
地球自由詩1*05/6/26 16:01
洞穴自由詩3*05/6/23 23:46
縁取られる光、闇に消えていく思い出散文(批評 ...3*05/6/22 4:50

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