詩の日めくり 二〇一四年十三月一日─三十一日/田中宏輔
先に集まりますように!」
と書いたけど
ほんとうに集まってしまった
こんどは、こう書いておこう
世界中の幸福が、ぼくの右の手の人差し指の先に集まりますように! と
ぼくたちは
おそらく、ひとりでいるとき
考える対象が、何もなければ
だれでもない
ぼくたちでさえないのであろう
「自分が誰なのかまるで分らないのだ。」
(ヴァージニア・ウルフ『波』鈴木幸生訳)
そこにいるのは、ただ
「見も知らぬ、わけの分らぬ自分」
(ブラッドベリ『刺青の男』日付のない夜と朝、小笠原豊樹訳)
であり、その自分という意識すらしないでいるときには
そこにいるのは何なのだろう
自分自身のこころ
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