詩の日めくり 二〇一四年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
木紀人)
とか
「主人がいる家には、無関係な人が心まかせに入り込むことはない。
主人がいない所には、行きずりの人がむやみに立ち入り、
狐(きつね)やふくろうのような物も、人の気配に妨げられないので、
わが物顔で入って住み、木の霊などという、奇怪な形の物も出現するものである。
また、鏡には色や形がないので、あらゆる物の影がそこに現われて映るのである。
鏡に色や形があれば、物影は映るまい。
虚空は、その中に存分に物を容(い)れることができる。
われわれの心にさまざまの思いが気ままに表れて浮かぶのも、
心という実体がないからであろうか。
心に主人というものがあれば、胸の
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