全行引用による自伝詩。 05/田中宏輔2
 
た、山の尾根で、大きな谷の上で、あるいは崖や山の中腹で、あるいはまた不安と恐怖の美に満ちた海のそばで、人びとは、未来の生のすばらしい姿を心に描いていたにちがいないのだ。花びらの一枚一枚、陽を浴びた木の葉の一枚一枚、あるいは子供たちの生き生きとした動き、また、人間の精神が自己を越えて芸術に高まる幸福な瞬間など、こういうもの全部が、希望の材料となり、努力への刺激となったにちがいない。
(H・G・ウェルズ『神々のような人びと』第一部・七、水嶋正路訳)

「話をすることが」と彼はまた言った、「それが一緒にいるいちばんいいやりかたかどうかよく分りませんけど……」
「話をしないことがですわ……」と彼女
[次のページ]
戻る   Point(11)