全行引用による自伝詩。 08/田中宏輔2
 
、誰一人としてわたしたちを見ず、関心を示さず、耳を貸さず、求めもしなければ与えもしない、親しくもならなければ攻撃することもない、そんなときわたしたちはいったいどんな仮面をつけるのだろう、どんな仮面が残されているのだろう? おそらくその瞬間が聖なる性質を帯びるのは、そうなったとき人は神と向きあう、少なくとも自分自身の情容赦のない意識と直面することになるからだ。そして、おそらく誰も自分の顔の究極的、本質的に裸の状態、もっとも恐ろしく、もっとも本質的な裸の姿に驚いている自分を赦(ゆる)しはしない、というのも、それは防備のない魂を見せるからだ。それはキーケのようなコメディアンにとってはひどく恐ろしいことで
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