全行引用による自伝詩。 08/田中宏輔2
走りながらおれは一秒一秒が極限まで引き伸ばされ、それ以前にあったことすべてを包みこもうとするのを感じていた。失われるものは何もなく、役に立たないものもない。おれのしてきたすべてのことが、視線も、言葉も、息も、ことごとく輝き、巨大に、無限に、おれ自身になる。人生は目の前を通り過ぎていったのではない──おれが人生の先に立って走ってきたのだ。
(マイケル・マーシャル・スミス『スペアーズ』第三部・21、嶋田洋一訳)
闇の世界には、おのずからなる秩序があるのである。
(ハーラン・エリスン『バシリスク』深町真理子訳)
レスティグは静かに車を走らせた。(…)ひたすら車を駆った。そのようすはさ
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