The Wasteless Land./田中宏輔2
まれず、あえて養子を取ることもしなかったので
彼らの家のなかに、子どもの声が響くことなどはなかったが、それで、さびしくなるということもなかった。
むしろ、二人きりでいることが、相手に対する愛情を、より深いものにしていった。
それゆえ、五年まえに、まだやっと三十を越えたばかりの妻を、交通事故で失くしてからというもの
彼は、妻を慕う気持ちのあまり、あらゆる女性を避ける避けるようになってしまったのである。
通いの家政婦のほかには、彼の家に訪れる女性は、一人もいなかった。
(わたし、メフィストーフェレスが、人間の耳もとに息を吹きかけると
たとえ、どれほど萎えしぼんだ魂の持主でも、情欲の
俘
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