まどろみの中、ぽつりぽつりと存在する人が去った。

去った後にぽつりぽつりがまどろみの中。

ぽつり、

ぽつり、

存在するなんて難しい言葉。

言葉は難しい存在。

言葉は ....
7月の血が蒸発する。

溜まっていたのは不満であり震え。

大勢の足踏みに恐怖した夜。

涙ながら掴んだ女の一声だけが

美しかった。
白い机の上が世界の終(つい)となりまして、

茶封筒の破れた端を触りながら月が沈みました。

あと数時間。

壁に貼ったあなたの継ぎ接ぎは接着力の低下で

堕ちていきます。

 ....
夜は蒸し暑い。

室外機が鳴る街路。

黒いゴキブリが棲家を探していた。

通り過ぎる私に

「家はありませんか」と尋ねた。

私は通り過ぎた。

街は許し難い。

私は振 ....
窓越しに、ぼやけた信号が青に、赤に。

車椅子の通る二本線を追って使われなく
なったトンネルへ。

影、足を引きずって歩く後ろ姿。

雨が上がり、乾いた水溜り。
一年後に老衰する夫婦が踊る夜の公園。電灯の下。

寝る間に溶けた蝋は熱く、髪を焦がした。

壁に貼られたいかがわしい広告。消えた電話番号。

指先の振動は鍵盤を甘く動かし、ぼやけた声は耳の ....
視力が弱り輪郭がボヤケタ月も美しい。

あの日、遺影のそば、泣いた女。

消えた気配。亡くなった子供。



あの日、頬に触れた赤。

伝う水は、裂め目から漏れ。



曇 ....
駅舎。

指名手配犯の絵図を三人の子供が見ていた。

koroshitaruと冷たい手で顔を覆い笑う。

指差して後ろの老婆は体を斜めに涙を流していた。

影がかかったコンクリート。雨 ....
足跡を辿れば母に着くのか。

胸を捜す赤子。消えた記憶。

影が声出す前に身消え行く。
夜、寒い空、通りの電灯が私の肩を叩く。


「お一人ですか」


道に捨てられた日記に書かれた言葉








匂い






秒針が心音と共鳴 ....
シャリシャリと雪を歩く靴の音が楽しい
と言ったあの人は溶けて消えました。

晴れて、屋根に積もった雪が溶けてポタ
ポタ落ちています。

むかし、あれは小さなお化けの足音だと
いじわるなお ....
捨てられた。

捨てられた。

死を膨らませた後姿。

残飯を明日食う空白の集。

昇る陽、落ちる陽を眼に焼き。

捨てられた。

捨てられた。

飢えを吐いて飲み込む後姿 ....
前奏の綺麗な歌謡曲が終わる頃、目を閉じると
そこに灰色に溶いた悲しみがあった。

白い、目の裏側にある心の何かをなぞる。思い
浮かぶ母の後姿。

幾度も流れる声は子音は掠れた隣りの精巧な笑 ....
背骨を震わせる雨は上がり、軒下の猫は子を舐める。

都市に流れる網の目の血管は下に、下に。皮膚を潜っ
て深く。地球は幾度、吐こうとする。

閉ざされた、大勢の人が並んで歩くノイズの重なりは
 ....
川はそのまま塊を引きずるように流れ、

糸は母と子を零度の息に落とし。

(しばし沈黙のあと)

椅子の脚を引きずる音が鼓膜を満たす。

それは悲鳴に似、烏は屑の中で生まれ、

糸 ....
電車の通る規則的なリズムに心臓の動作を同調させながら
飲む国産のウィスキーは氷が混じる。

大切な人を失った瞬間を覚えているかい。と、尋ねたとき、
女はベッドの上で気を失っていた。

近く ....
楽しいと笑み浮かべ血一滴の波紋は目の裏に散る。 それはまぎれもなく、悪夢であった。

置時計は3時を指していた。

接吻で女は孕んだ。接吻の相手は鏡に映った自
分自身だというのに。

本棚の中で一番高価な辞書で「妊娠」を調べる。

 ....
蛍光灯が点滅する風呂場で濡れた身体が
一つになろうとして、震える手を抑える。
「痛い」とお前が言うから離した手を強
く、お前は繋ぎなおす。

お前は、ご丁寧にゆっくり身支度をする。
離 ....
年の末が迫る満月の夜の事。湖に一人、世を恨み、目の前に映る
美しき月を妬む病弱な青年がいた。細い身体に合わせたかのよう
に華奢なフレームをした眼鏡の鼻当てを、クイと指で動かして、
青年は前々から ....
沈みゆく箱は女が幼さを捨てた羞恥の塊であった 願い事を数えている間に、お互い年老いて死ぬだろう。

だから、そんなことをやめて、愛し合おう。



大げさだよ、とうさぎは笑う。


《劣の足掻きより:http://mi-ni-m ....
日曜の休日、遮断機は私の手をとって踊る。

黄色と黒の手を肩にかけようとするがスルス
ルと抜けてしまう。誰もが寝静まったころに
始まった踊りはいよいよ激しさを増していく。

心音の高まりは ....
泣いた顔

輪郭伝う雨、

濡れた路

振り返る君に

幸多かれ
今日は、もう

細胞が

血管が

内蔵が

筋肉が

表皮が

しびれて

かすれて

よごれて

つかれてしまった。

だから、寝ようかと思う。

今日 ....
星が結んだ絵に

子は指を使い描く

それは何万年と

変わらぬイラスト
蹄を雲にかける

群れ離れた

媚びた羊
騒音の大通りを横切る度、頭痛がし
いつも「アノ」声が聞こえる

オオオオオオオオオオオオオオ

オオオオオオオオオオオオオオ

オオオオオオオオオオオオオオ

いつも低い、低い、男の ....
消え去った過去に、流れ去った世に、幼子の瞳に映るモノは。 ここは夢?

夢ならば出来るだけ好きな場所にいきたい。
好きな人に会いたい。好きなことしたい。
なぜか、冷たい、冷たい身体を労りながら、
ゴクリ、と唾を飲み込むと同時に場面が変
わる。
 ....
宇野康平(103)
タイトル カテゴリ Point 日付
「夕方は戸惑う、存在の男」自由詩114/7/27 23:24
「7月の血」自由詩214/7/22 2:25
「だから眠ってはいけない」自由詩214/7/16 3:20
「許し難い夜」自由詩014/7/13 23:08
「露」自由詩014/7/13 17:35
「しまらない」自由詩214/4/24 23:12
「曇っては晴れて」自由詩214/4/14 21:13
「影がかかったコンクリート」自由詩214/4/8 23:18
「影と母」自由詩014/2/21 17:41
「お一人ですか」自由詩114/2/12 12:02
「雪のせいにする猫」自由詩214/2/10 15:48
「捨てられた」自由詩214/2/7 16:13
「そして、目を閉じる」自由詩114/2/3 0:54
「彼岸の鐘」自由詩3+14/1/29 15:47
「肉体から出でて、呼吸の跡」自由詩214/1/18 0:52
「血脈の無い花」自由詩014/1/9 21:20
「想像上の苦」短歌014/1/8 13:47
「時として、中絶のように」自由詩114/1/7 23:24
「あの日」自由詩2*13/12/30 20:46
「抱かれた月はちぎれて」散文(批評 ...213/12/25 21:51
「夜行」短歌113/12/24 18:28
「だから、慈悲の無い夜は」自由詩013/12/22 22:55
「遮断機と渡り鳥と休日の月」散文(批評 ...113/12/22 22:19
「雨と輪郭」短歌113/12/21 19:05
「明日のために寝ようか」自由詩113/12/19 21:41
「星と子」短歌413/12/18 18:18
「羊」短歌213/12/18 10:03
「血と路」自由詩013/12/17 16:57
「幻を想う」短歌113/12/17 16:18
「異様に低く、白い天井」散文(批評 ...013/12/17 16:09

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