画面上の葬式
あいつは別れ際
手を振り泣いていた
森の中、投げ出された靴に活字の鬱を誘われ。
逃げ道は、誤ると蟻地獄に堕ちる自分を
ありありと想像でき、仕舞い込まれた心に
鍵閉める用意をする。
顔、顔、顔が泡のように確かではな ....
耳につけた装飾品の数だけ
傷ついた私がいて、血を見
慣れた過去が過ぎ去れば、
強くなるだろうと信じてい
ました。装飾品が私に代わ
って私を語ろうとし始めた
とき、私 ....
大切にプールされた心を貯めなさい、消費しなさいと経済
アナリストが言いますが、
嫌です、お断りです、と言うと周りは白目で私を見つめる。
夕方
アビーロードのように横断歩道を堂々と渡 ....
お世辞に笑えば
世界は裂けて
お前は消えた
赤信号を皆で渡ると大型トラックで
引かれ、でた鮮血を魂ごと画用紙に
載せる。
その圧倒的なアートに涙忘れた殺人者
は涙し、私は寝床で安らかに
寝入るだろうに。
....
フレンチキスは私にはつまらない
といった女はショートカット。
衰弱する息をひたと止めて
女は唇を背に置いた。
通夜
息をするように嘘をついた日
やわらかな地獄に落ちていた。
《劣の足掻きより:http://mi-ni-ma-li ....
ああ、あああ。
うう、ううう。
杖を付きながら歩いている。3本の足。
という詩を朗読している老人は、日比谷公園
のベンチでうたた寝をしている。
悪夢でうなされている。
....
消灯の厠
陽光指して
満ちる光子に
身震え
ごしごしごしと
顔を洗いながら、
あっ、あっ、あっ、
命が漏れ出していることに気づき
おとととととととととととと
ととととととととととととと
ととととととととととと ....
男:路上で道路工事をしているところありまして
ご婦人が大きめな制服に、警備棒を片手にフリフ
リしていました。ははは。
警備員は老人だって誰だってできる仕事だときい
ていましたから、ご婦人は ....
手の震えは鼓動と世界と私の皮膚の境界線のずれで起る。
そう思いながら、
女は鏡を見て皺をなぞる。男は息子に何度も同じ過去の
話を語る。
ある日、女が死のうとして馴染みの川へ行く ....
幾重にも重なった電線を通る穢れに、涙を流すかのように星は落ちた。
珈琲の湯気に黄泉行く人を思いながら春待つ冬かな
ふと思い出して私は、引き出しから昔書いた日記を取り出してパラパラ
とめくっていました。すると、付箋がしてあるページがあり、そこには
こんなことが書いてありました。
ーーーーーーーーーーーーー ....
長雨のあがった夜。
三角コーンが馴染みの路を塞いだ。
老年の猫が「帰れ」と言う。
何故いつも猫なのか。
何故。
自分で巻いた煙草を吸いながら、舗装が重なる荒れた道を歩く。 ....
欠けた口紅と
欠けたコンパクト、が
女には大事だった。
生きていても
老いても
病になろうとも
死にいたろうとも
常に、頭に響く男女のすすり泣き。
泣くのは私ではなく、過ぎていった記憶。
脳の中心の本能と呼ばれる部分が「危険」
と判断し、思考停止。
身体は常に私の味方だ。敵は誰か。おまえだ ....
水溜り
男は死に
葬式は
遺言に従って
和装
あの日、怖かった夢。
もはや化粧ののらない肌に口紅をする老婆。
雨に濡れた路上。信号の赤が手鏡に反射する。
子どもの葬式。
動かないエスカレータ。
涙が血で。母が空き缶に ....
女の股に両の手を挟んで暖をとる冬
霧深し繁みに落ちゆく番の蝶は
子のなく故に水へ消えゆく
市販のマスクはあなたの命を吸い込んで蝶々になります。
それは綺麗な蝶々です。
なので、ポイと捨てられればマスクも傷つきます。
マスクは子を孕みます。それはあなたの顔に似ています。 ....
環状線沿いの古い2階建てのアパートメントで暮らして
いる男は、昼夜や問わずの車の騒音で慢性的な不眠症
に悩ませられていた。その騒音のために、男は気違い
になろうとしている。そんなある夜、男はシャ ....
ポップアートが壁に飾られたバーで、女の細い手首を見ながら
フランス産の安物のワインを飲んだ。不味くも美味くもないワ
インが喉を通り、ただ、飲んだという事実と13%のアルコール
によって私は幸福を ....
朝、足の間を通る冷たい風が頬を撫で、小鳥も寒さに声を詰まらせる。
老人の乗る三輪の自転車に、白く縮れた毛に埋まった老犬が連れられて
いる。その犬は、進む、止まるを幾度も繰り返しながら、ノロノロと老 ....
青空の下、車椅子は上下に揺れて、脳みそ詰まった頭は
洗濯機に入れられ、染色体はゆれる。
吹きさらしのガードレールは錆びついて、旧式の信号機
は煙を出して壊れた。
顔は放 ....
ぽつぽつと、点を打つ悪が私のお腹の中で浮いて、渇いたくちびるを
震わせる。ひび割れ、皺も硬くなった手を持つ祖母は、重く垂れた瞼
から覗く黒目を更地となった公園に向けていた。朝、通ることが日々
の ....
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