黒猫のシロが案内してくれた私の道が廃校につながってしまってシロはもう帰ってこなかった。猫の鳴き声がする。よくする。私の耳が拾う鳴き声がシロの声だと思う。夜道の真ん中で白い体を光らせて目を光らせてこっち ....
お地蔵さまがほっかむりをかぶったと見に来たが昼の光に雪解けのあと
雪から雨に変わったせいかコンビニから出たら俺の傘がない
空が黒いし降るか降るなと傘を持って電車に乗る 駅を出たら雪
野ざらしの地蔵に声かけ返事はないかわりのように木枯らしがざぁ
風がまくる高校生のスカートを押さえる仕草は夢があるよあると言え
洗い物で冷えきった手に染む寒風お前もあがり?ラーメン行かへん?
木枯しに揺れる紫煙やまず寒風やめやめ憂鬱ひたすらに思ふ
声あげる子供をガキと疎む頭がガキと知るも耳塞ぐ
電車でのポテトのにおいはテロだねと人も言ってたわたしも同意
川に流した花がたどる旅は
君の膝にかかるだろうか
にじられた花びらが
足元を汚している、って
造幣局の道でよく思う
浮かんでいるときだけ
目を奪う色の淡い
サフランの匂いが空を覆い
....
グリーンアップルがひしめき合う
果汁の滴る林檎の街だ
ぐずぐずに崩れた果肉は羽虫を呼ぶ
その絵が飾られている車窓
息がガラスにあたって
白くくもる
湿度が上がっていく静寂に負けて
音楽が ....
クッションはねこじゃないですけど
言葉を話すねこならここです
ねこが見ている月
本当に月を見てるんでしょうか
月が夜に引っかかってるうちに
早くねこを探したほうがいいですよ
夜道が明かりで ....
歳の数だけたばこを吸って
早く寿命がこないかなと
思うだけの日はどうかな?
どんな日になると思う?
今日の二十三時に
ホームに立っていないと
確信できるのは誰なんだろうね
零時に自分 ....
何年後の静寂を思えばいいだけの話
誰の灯火も消えた星空が迎えてくれる夢
ぱちんと消えて目が痛い
十一時に吐いたため息は
次の日も次の日も次の日もおもって
消えることがない
きみの話を聞 ....
川にさらした野菜の籠を
見張っていてひやひやする
はねあげた飛沫が肌を濡らし
ゆっくり汗と混じってしたたる
木陰の君の日焼けした肌は
健康的な小麦のパン
コンビニの冷えた空気の
ビニール ....
毎朝お弁当を作らなきゃいけないので
私は毎日卵焼きを焼く
冷凍食品の中にひとつだけ
手作りがある
ありがたい、と思ってくれるのか
ただ、また冷凍食品か、とだけかもしれない
昔から私は至らな ....
たゆたうなら私の喉のうちに
飛び込んできてマリア
肖像画に宿る瞳の輝きが
くもりガラスの乱反射なら
濡れたくちびるは朝に贈った口づけのあとだ
この声がスタッカートを引き起こして
アパー ....
駆けていく星が流星というなら
命のきらめきも同じだけ流星といえるんだ
わたしの星のはなしをしよう
夜明けが見えない遠くの星月
ここから先、指じゃないよ、あれを見て
暗闇を切り続ける君の粒子が ....
今度生きたらレモンを摘みに出かけようよ
木漏れ日のイタリアンイエローで手を汚して
その夏の麦わら帽でさえぎられたわたしを探して
探してよ
この夏の先
子供の影とか空き缶とか茜色の空、猫の集会 ....
食べはじめた一口が溶けて
風で塩っぽくなった白いワンピースについて
白く汚したのを
宇宙から見てちっぽけな事とよく笑えるな
避難した先のクーラーで凍死する前に
海の照り返しに炙られて蝉は転が ....
電柱と電線は空を区切って
千切れた青がばらばらになっていた
繰り返し、繰り返し。そんな気分がしてても。
アスファルトで息ができないって
空の光が落ちて圧迫されてるって
耐えて耐えたら ....
電気のシャワーを浴びて光る髪の一筋まで
空調に揺らぐ足元の湿気
リノリウムの床の隙間に覗く闇
自分の揺らがなさを試してみたことはある?
頭は?体は?それはどこまで?
コペルニクス的転回を ....
周りは見ているものなのだから
生活はきちんとしてねと
忠告ありがとう知ってる
良い思い出があたしをぎりぎり締め付けて
真人間の型を取ろうとして
逃げ出したくなった、けど
水に満たさ ....
相合傘は理想
であるがゆえに蔑視している
一人で持てないなら持つなという思想が
魑魅魍魎跋扈する夜を渡りづらくする
ただあなた一人傘を持っているから
重力にそんなに苦労するのだ
あなた ....
ほやほやの猫が見られなくなって安心したので
今日はこのまま温泉に行こう
断酒しようとしたのは一昨日で
今日はウイスキーを瓶から飲んだ
体がほやほやしてきたので
良い気分のまま
猫を思い ....
「皆既月食です」とテレビの音がして
おやすみなさいを跳ね返す
賞味期限が切れた豆腐を
日付通りの零時に捨てた
ピンクのキティサンダル脱ぎ捨てて
前髪をちょんまげにした女が
冷蔵庫を覗き ....
ひょっとしたらわたくしは
日の丸弁当を
持ってきてしまったんでしょうか
米と梅干しが踊る胃と口を押さえた
プリンはどうでした
青空が映し出されて
伸びやかに皿に居る
ヘドロを産み ....
死のうねって約束した十三歳の女の子と
その時は一緒に夢を見ていられて
私今じゃひとりでブランコたまに漕ぐ
悲しさが
二十四時間後にやってきて
にゃーんて叫んでた
あの子は立派に調理 ....
悲鳴の螺旋が落ちていく
蒼穹を自由に飛ぶ舟は
藻屑と等しくなり
白の破片を散らかばして無人の島を飾る
目が合った他人の女の子と手を取り合って急降下した
握りしめた手は暖かくあり腕は海に浸 ....
わたくしの言いなりの小人を呼んで
ゼンマイを巻かなきゃいけないから
そう、わたくしのハムスターは
必死になって火車を回している
頭の中のどこか隅にある組織をつぶして
何処にも出せない ....
すくった砂にふうと息をかける
真砂の信仰の
どよめきは波にかき消され
ぱらぱらと散って
どこかで喜色の声が聞こえる
それがすくって散らして
波は洗ってなくして
透明な海が流してい ....
口の中で消された言葉を想像してみて
私が貪り食ったホットドッグの
無味乾燥さを自分のせいにして
ドロリと、横たわる布団の上
死にたいって、嘯く詩人の戯れ
私は、
私は結局それだけを拠り ....
春の嵐が子供のままの頭と幸せな迎合をし
酷くうろたえて辺りを巻いている
端から端まで街を歩き通している迷い子
同じ景色を見ているあなたに同情を求める
そういう舐め腐っているような態度が
....
しんしんとして降り積もる雪が
身に染み寒さは体に渡り
涼しさと凍えの境目も
分からないほど火照った体で
観客はいない二人だけのワルツを踊る
取り合った手と手
そのまま凍ってしまって
....
明滅する光
影を作りだしては消す
サーカスという点滅
ね、サーカス
象のカラフルな背に乗り
地平線から浮かび上がったその高さ
夕暮れが近い
飼い慣らされた虎が吠えて
震えて踊る ....
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