過去に置いて来たはずの想いが
延々と生き抜いて蘇る
誰かが蒔いた白い花のように
今も時々あなたの夢を見る
たくさんのトランプを持った
あなたの最後の切り札は何?
ガラスのコップで手 ....
君が死んだと思うことにした
思い出は過去の金庫にしまって
これからはその貯金で生きよう
美しかったと憶えているのは
君の前歯と爪の形くらい
優しかったと水増しするのは
僕が愛されたと言 ....
濡れていたものが乾く間に
洋服もバスタオルも靴下も
タイムマシーンに乗っているのだ
スタートボタンを押すと始まる
カウントダウンの数十分が
洗濯物を異空間に置いて
溶かしたアイスが ....
自転車置き場に届く光が
まだ短くて生まれたばかりで
それでも僕等は卒業するから
さよならとひと言ずつ手を振る
ハードルしか跳んでこなかった
一瞬だけ空に止まった気がして
僕は何になりた ....
女子高生が蛇を履いていた
ズルズルと足首を食べられて
血が流れるのは上の方からだ
子宮の鱗が剥がれていく度
透明な体に生まれ変わる
水泳の授業を休む時に
男の先生だと言いにくい
....
空に灰色の煙が立ち込め
干してある洗濯物を汚してゆく
Jアラートに掴まされた夢が
輪郭をなぞらなくて良かったと
テレビの前でスープを飲んでいる
前触れもなく飛んで来るのはきっと
虫 ....
二時です
虹です
やぁこんにちは!
夢の中で
トイレを流す音を
聞いたけれど
雨が降ったんだね
五時です
誤字です
まだ眠いでしょう?
日が落ちる頃に
書いたノートは ....
詩の世界に身を預けてからは
コンビニのアルバイトのように
今日はもう上がっても良いよなんて
言ってくれる店長はいない
写真家は撮りたい画のために
何年もかける時があるという
僕はそ ....
恋に破れた少年少女が
涙を飲んで登る坂の事を
心臓破りの坂と呼んでいる
桜の花びらが頭の上で
残念賞の冠を作り
渡しそびれた手紙を破ったら
季節外れの雪が降るらしい
好きですの一 ....
卵の割り方を失敗すると
崩れた黄身と白身のバランスが
太り過ぎた満月に見える
その上に垂らす醤油の数滴は
血管のように浮いているけれど
いずれこの卵も消化されて
新しい血管に生まれ変わ ....
音楽を二人で聴いた後の
体に絡まるイヤフォンは糸
白い蜘蛛の巣が巻きつくような
ベストを着た時の窮屈さに
爪を立てるよりも手相を見よう
掌に広がる宇宙の模様
名前を知らない星座のよ ....
三つ編みの中に隠したボタンは
あなたの制服の二番目だった
ネズミにかじられたりしないように
私は一等席を用意した
黒いおさげが光の加減で
緑になるのを気に入っている
重たい髪が ....
部屋に時計が三つもある
どれも少しずつ時間が違って
本当の三時がいつなのかを
僕は知らない
三時という時間が三回来るのに
おやつの時間は一回しかない
毎日適当な三時を選ぶ
文庫本の
薄いところが好きだ
パラパラとめくる
音も素敵だ
ブラスバンドの
演奏に合わせて
いちょうの葉っぱが
上から落ちる
青春という
栞は一枚だ
ドライフラワーの永遠の命が
アイスティーの上に転がっている
氷に囲まれた部屋が似合う
天使の翼が擦れるように
ガサガサと音を立てるのは何故?
風に揺れるラベンダーの迷いを
聞いてく ....
醜い顔を見なくて済むように
部屋の明かりは小さくしておく
悪口が聞こえてこないように
ステレオの音は大きくしておく
僕だけの船に食料を積んで
時間や支配から逃れたかった
眠れずにい ....
カメラに収めた一枚の空
インスタ映えするように整えて
よそ行きの言葉を少し添えて
誰かの反応を待つ間に
空を見た事への熱が冷める
素敵なモノに囲まれていたい
特別な今を君に伝えたい ....
窓に差し込む光のパレード
雀が鳴いているうちはまだ良い
目覚まし時計で僕は一度死ぬ
ブラインドの羽根を回す力で
景色を切り刻む夢を見ていた
皆殺しの朝をミルクで薄め
コーヒーはいつもと ....
靴紐を結び合った時から
運命は重たい辞書のように
座るのではなく歩くものなんだ
灯りの付いた家に帰る事
大切な写真が増えていく事
僕が思うよりも君はずっと
真っ直ぐな生き方を選んだ ....
満員電車を降りた時から
この世界のスピードに乗れなくて
鳥籠の中でバタ足をしてる
交差点で待つ信号の青
最大瞬間風速の今を
働く人は駆け抜けて行くのに
僕には羽ばたく空がなかった
....
骨の形まで覚える頃には
君と僕で深い関係になる
うなずいた顔で笑っているから
息を潜めた二人の体は
砂浜に打ち上げられたロケット
繋いだ掌に包んだ夢を
語り合ったのは生きてゆく為
....
人は上を目指す為に生きてる
時々は下を気にかけながら
階段で交わす握手のように
僕等はひとつになる事もできる
勝ち負けがあれば流れる涙は
シーツの上の透明な宇宙
君が強くなる理由を探し ....
旅人の靴を履いている人
いつも忙しく走り回っても
見覚えのある細い指先で
涙の温度を測ってくれた
君はもう新しい土地に慣れて
庭の花に水を撒く時間だ
恋が終わっても心は続く
長い ....
風に運ばれて揺れる髪の毛は
頬をなぞる優しい手の動きを
思い出すような恋に良く似てる
永遠の森で見つけた涙を
頭の上に乗せて歩きたい
脚を組む時に引っ掛けたヒール
タイツの穴が花火を上げると
破れた空には星のようなラメ
ハンカチで包みきっと忘れて
洗濯をすればそこは銀河だ
IDカードをぶら下げながら
コンクリートのビルに出入りをする
飼い猫の首輪が軽くなるのは
見上げた空に星が浮かぶ頃
明日もまた胸にメダルを掛けて
誰がいちばん可愛いだとか
何がいちばん売れているだとか
私にとっての世界は争い
透明人間になりたかった
耳を塞ぐのはヘッドフォンで良い
口を隠すのはマスクで良い
肩に触れられて初め ....
届けたい想いを腕の中で
温める仕草は天使みたいで
何も言わずに微笑んでいるのは
声に出したら消えてしまうから
愛は未完の方が美しい
背中を押してくれる人が居なくて
公園のブランコに置いて行かれた
こんな時は世界が止まれば
早く身長を伸ばして欲しいと
留守番電話に吹き込んでやろう
死者が眠る桜の木の下
足音で春を告げると
夢見がちな僕等は
沢山の花びらを散らし
それは復活の涙でもあった
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