今ぢや考へられない事だが
昔の猫は
ごきぶりをよく捕らへては
夜のおやつ替はりに食べてゐたものだ
ばつちいからやめなさい、と云つても
その姿に
哺乳類の原型であると云ふ
食蟲目の ....
私の倫理
それは即ち、リンリリンリと
倫理を盾に
使はない事だ
お恥づかしながら
借金返却の督促を受けた事がある
その時、リンリンと鳴る電話に
脅迫じみた何かを感じ
以来
....
詩が差し迫つてくると
私の中のアラームが鳴る
排便の際の
直腸のサインと同じ事だ
その詩情はもはや老廢物である
と、肉體が云ふ譯で
この場合 精神は肉に隷属してゐる
譯で-
出して ....
美しい花には棘がある
花の美しさを妬む心には
棘はないのか?
就寢前にそんな事を考へたが
直ぐに寢入つた
暢気な詩人だ
これは由々しき命題だと云ふのに
美しい花
美しい星
美 ....
人戀しさのあまり
無駄ガネを遣ふ
本当は誰も俺の事など
知つちやゐないのに
よおあけおめ(笑)なんて愛想を振りまいて
ライヴハウスの喧騒の
中に獨り
ワインが何とも澁い
舌が痺れる
....
池袋まで電車で30分の處に住んでゐる
だが東京は嫌ひだ
僕の詩には
Streetはない
あるのはTownだけだ
〈大東京惑ひの末や夜鷹蕎麦 涙次〉
何故なら若い頃から
東京、と云ふと ....
私は捨て台詞なら幾らでも吐ける
だが今後に取つておく事にしやう
死にかけたら詩があつた
身を賭すべきものがあつた
さう云ふ話だ
男子一生の仕事
には、ランボオはしなかつたが(そしてそれ ....
私が詩ウタふのは所詮平和の詩ウタだ
だが數知れぬ男根が齧り取られてゐる
それを平和の御世だと云ふなれば、の話
マッチング・アプリの戀
もはや女の實體を相手に
戀の手管を試す騎士道は
廢 ....
生まれてきた者らの國と
生まれてこなかった者らの國
お前はどちらに
棲みたいのだ?
なべてこの世は撰択肢だらけ
自分で決めろ
と云ふ事だ、要するに
僕は自室に詰まつた
澤山 ....
冷たい牛乳には
もはや靑々しい牧草の薫りは
しない
干し草の味がする
だけだ
僕は夜もすがら
睡魔と闘ふ日々は
棄てゝしまつた
創作の為だとか
さう云ふ事ぢやなしに
たゞ、 ....
燐光を見た
どちらかと云へば
アレッホ・カルペンティエエルの中で
熱されたディキシーランドのやうなジャズ
D.W.ライト氏が持ち上げた
ヘイデン・カルースの隠遁
とは一歩二歩違ふ
燐 ....
ロバート・ブライとベティ・ペイジに
性を一單位として
クールに処理しやうとするならば
その前に
本当の男らしさ・女らしさについて
何らかのアプローチをせねばなるまい
例へば
今思 ....
思はず
詩のパンチラインに
「よく分からないけれど」と
書いてしまつたが
詩は
よく、分かつた處、に
宿るものだ
これは勇み足
反省頻り
神の事はよく知らぬ
それは本当なのだが ....
冬飲む水は
躰を冷やすので
内からの震へを
伴ふ
内なる震へ
何やら
神の事を思ふが
水といふ
即物的なものゝ代表格
にも
その反應は
齎されるのだ
尤も
神への震へは
....
[鬼子母涙次キシモ・ルイジ冬の句③]
風邪引きの貴女が今日もミニとはね
水鳥や水掻き持つは足掻く為
取り敢へず手を繋いだり冬夕焼け
風呂吹きは裸に昆布コブを纏ひたり
....
[平手みき② 佛道歌十首]
地獄と云ふこなれた概念坐右に置き修羅行く人は分かり易くて
羅漢如何に行基菩薩に問ふたれば沈黙やがて黙殺と分かる
衆生みなみなの顔など覺えをる良寛の如き雑魚 ....
ほざく
ほざく
私の肩を叩き
きつと今日はいゝ詩が書けるよ
と励ます替はりに
あなたは自己宣傳に
汲々としてゐる
自問自答
たゞ老兵は去るのみなのか
否、粘れ 何かゞ生まれる迄
....
僕がその雑誌の募集要項(每號一篇)に叛して
詩を二篇投稿したのは
正当な評価などあり得ない
と云ふ いぢけだつたのかも知れない
間違へて一回に
二篇送つちやつたんだよ
そしたらコードに ....
大學で妙てけれんな詩學とやらを
學ばなかつたS.T.氏は
言葉と戯れる術を知つてゐた
哲學者の父の存在が
邪魔にならなかつたのは一つの畸蹟であらうが
そもそも父君の哲學と云ふものが
邪魔に ....
〈減らず口「口減らしなる恐ろしい慣習の為祖母は賣られた」 平手みき〉
蟲の息
つて云ふが、あれは口で息
してる譯ぢやないんだぜ
氣門、そんな名前の空氣の通り道が
昆蟲たちの體側に付いてる ....
僕は情熱と情慾との
區別がつかない
すつかり
ちやつかり
目明きの如く、而も
盲目である
彼女の
「都市狼さんて考へてるやうで
實は考へなしに、思つた事すぐに
行動に移しちやふんだも ....
僕自身はせいぜい威儀を持たせた言葉で
武装してみたいのだが
だうにもかうにも(ニンともカンとも)
それでは意味が伴はない事が多い
やうするに
空威張りした語の羅列だ
今『忍者ハットリくん』 ....
わが身を離れた詩は
一體何処へ行つてしまふのか
その何%かは
僕の中に殘るけれど
大方は彼処の路頭に迷ひ
淋しい思ひをしてゐる
詩よ、
鳩よ!
僕の裡に蓄積しておければよいのだが
所 ....
ボーイフレンドたちは日射しのたゞ中
溶けてしまひさうになる
そんな夏が戀しい
やけくそ氣味に陽光の氾濫に
彼らは身を投げ出す
海だ
海が見えるよ
ぴかぴか光る紺碧
處構はず全裸に近い
....
〈雲雀にはskylarkの英名ありskyの文字よ沁みよと詠めり 平手みき〉
眠い時には眠るがいゝ
僕の枕頭に寒い基督が立つ
逆らつて小用、無理に出したおしつこは
納豆の匂ひがした
〈納豆やと ....
[鬼子母涙次キシモ・ルイジ冬の句②]
切干の煮つけの甘さ含む飯
湯豆腐やうつすり気付く事二三
不粋なり避寒にハワイなる一家
初鶴や巨き羽根直ぐ水に馴れ
室の花野生の菊を ....
[平手みき① 飯食ひに]
人はたゞ遊びせんとや生まれけむ遊ばぬ心に飛翔なかりき
夭折の人力プロペラ飛行機よ材質脆き事を悲しむ
鏡見てとくと異星の客人マラウドを思ふこんなだこんな顔し ....
[鬼子母涙次キシモ・ルイジ冬の句①]
わが髭に溺れよ女木の葉髪
東京を星に譬へて夜鷹蕎麦
暦売り去來の去しか賣らぬ人
織田作の関東炊きよ浪花遠き
寒椿立ち小便に寄り添ひ ....
〈月遠く近くありけりむじな汁 涙次〉
吹きつ曝しに月が炯々
アーサ・キットのしなは
何となく過去から吹く
生温い風のやうで
男と女
それ以外の人
それ以外
と云ふしかない
僕はま ....
小さな魂
と云ふと
魂に大小があるかのやうだが
猫
親しい筈の隣人
である彼ら、を
英語圏では
Nine livesと呼ぶ事は
周知
9回の生涯を終へた老猫は
もはや小さな
魂、 ....
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