動物を観る人だかりふくらんでどちらも命を生きる不思議と
脱力をカラダに命じているのだと池の端には片足の鳥
蓮の葉は秋の陽広く受け止めてどこかに放つことなく黙る
犬を連れ遠く見つめ ....
蛾を供えにいく/
かつての田んぼを新古書店にかえてしまったため
記憶のモザイクをひっぺはがしに
やわらかい胴体を
すぐにでもつぶしてしまいそうな
半切れの胴体を
モザイクには耐え難く
....
町をくりぬく動物園は
真っ先に命の営みを捨て去って、
太陽、ポンと放り投げる
イメージを垂れ流しにするテレビみたいに
命はすり減らされることばっかり。
ここ、
行きたいとか、なんとか、 ....
もうつかわない
世界、暗闇、夜、感動、飛躍、論理、あいまい
大きなことなんて、裏庭でなんの役にたたなくって
少しだけはがれた壁さえも、哀切を極めている
大きなことは、一体
何を伝えたくて ....
誰もいない書庫の静寂身に注ぎ独りで生きる怖さかみしめ
虫の音を聞きながら下る階段で秋の気配とぶつかる足元
コトコトと電車が線路を行く音に別れの余韻も削られてゆく
夜に乗る電車は車窓が ....
檻の中にいるみたいにみつめている張り付く嘘のつめたい
足音はどうしたって響かせてはダメで
時間に蛍光塗料を塗りたくってやる
けれど、
下をむいて歩くばかりで、人ごみの中
目立つ蛍光に笑い声が ....
真っ青のプールに浮かび望むのはアウフヘーベン時間よ越えろ
ふたりして分かつ流れに水面ゆれ浮かぶ小麦の肌と心よ
夏空の雲のたもとで愛すべき形なきものあはれ踏みつけ
まぶしさに吐き気もよ ....
腰から上を丁寧に 筆をひたしてなぞってしまうと
電流は細く細く 鼻の頭までじんわりと沁み
「いいえ、いいえ」と繰り返している
薬から逃れると、自然
夕食になってしまえば 皆がそれぞれに席に ....
年をとった少年に
地色のベッド・シーツをかぶせ
漫画本を半分ひらき、祈り そのまたひかりに
身を焚いている
白におもねる瞳はなくて、まんまるのはしを
一生懸命にのばしている
混沌、しが ....
酔いはじめ足元ふらつきふと思う声のしわをのばしてみようか
瓶握る力の強さにかこつけて現在彼方に生きる錯覚
来るの、訳ないの土曜日がチヨコレイトとミルクをたずさえ
深夜2時どすんと這い ....
残ってきたのは茶色になってぐちゃちゃになってどうしようもなく汚くて目も向けられない
インディペンド
「そんなの冗談だろ」
「そんなの嘘だろ、いい加減にして」
口と口のサーカス
火もふく
....
胸躍るにがさに紫倒れる傘さして
どこでもない道歩くとき
行く手をさえぎる風圧が
わたしの足元すくっていく
人の多さにすりぬけもせず
わたしのもとにとどまり続ける
葉の落ちる速 ....
地下鉄のとびら額のはりつく「つめたい」
雷を呼びにけり描きにけり画家の病癒えにけるかな春の夕
かすがひに苦しみ咲いた秋雄花水をうかべるために倒れる
いつもいつも青に尾をひく詩をおきて ....
吾が宿の梅の花咲き口をつく他より遅きをうらやむかなと
夕されば止める鳴き声闇を忌みふたたび人の中で泣けり
古き良き歌のながれに身をおきて機関銃も久しくおけり
もうやめたもうやめたもう ....
裏を結ふ道を行かしむ灯火は遠く離れし故郷に似て
数多ある吾が記録片の口をつく「頭貸してよ、戦争がしたい」
食堂に恋の歌を持ち込みて湯気にともなふたおやめをかし
....
川上の天つ風岩砕き瞬きをすぐさま白き波血の気立ち
ひむがしの蜜蜂通ふ百合雄花白く泣く故甘き蜜出づ
烏子は来にけり去りにけりおはじきに足くじきつつと童の歌ふ
けぶり香の膜に ....
冬やただひねもす悲しみ狩り行かむ犬のなくのをしずめぬばかりに
はしたなく言ふりまいて恥を知る夕日もまれて赤きかな顔
こんばんわこんやの雨には注意して甘くべたつくピーナッツバター
....
踏みしあの石の方から坂道が暮れ、くらがりに蟻の殺傷
髪しぐれ飾り窓に広がりて雨にも見えぬ線に怯えむ
かすれ目の帯解きなおす仕草より竹思わしく風もがき来ぬ
六村の時計ひと ....
花畑泥棒ひそみて折りし茎緑かぐわし一日の終わり
街道に数まき散らす標識に道から道へと他人の静寂
渋谷にて白糸垂れる横断歩道踊る傘々武士おしのける
電灯にけぶる煙草に目を細めけむりを足 ....
曲線を描く黒髪いつの間にけたたましく鳴る風平行線
太陽の光を点で結んでは指に集めて舐めいる残暑
白鳥の飛び立つ様を物語る神の白髪結えし因果と
草かげで鳴きあう猫に呼ばれてや境界不明の現実が減る
....
はいふんで つながれる今 大切と
言ったぬけがら ばかをみる
舞台うえ のぼった先で 手が真っ赤
鋼鉄ならばと 思うが無駄
心中に 関数式を溜め込んで
今日も命題 解かずに ....
砂漠吐く 大地を北に追いやりて
掌でひろげゆく 花鳥風月
三面の視線を 井戸に通したる
水面ゆらすは 深紅の星空
くずおもちゃ 集める地平は紙の上
いつか夢見 ....
喜と悲劇 どちらもありよ わからずや
口塞がれる 戦争の後
階段の 踊り場走るこどもには
なにひとしれず ステップを
午前4時 暗闇かりて映画見ゆ
明 ....
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