小さな穴
こっそりと覗く。
膿んだ傷痕をいとしむのは、
私がまだ、大人に成り切れていないから。
薄明かるい、白んだ灰色のフロアで、その右手前にひとつの白い影がある。
まるで皿の上にくしゃりと放り出されたナプキンのように、その少女は打ち捨てられていた。
ひしゃげたように張り付きうつ伏せて、彼女 ....
どこまでも続く道を
「希望」と呼びたいなら、
その道の選択者は
よっぽど辛抱強くあるべきだろう。
思わず口から飛び出しそうになるほどの衝撃。
受けた打撃はヘビー級。
関係性はオブラートのように薄っぺら。
清水寺はここにはない。
けどね、
最悪な初対面ついでに
あの時のあたしも飛び降りればよかったの ....
百点満点の自分なんて、
そうそうあるもんじゃないけど、
あの時、彼女の立ち位置を羨んだ自分は
素直に誉めてあげたいんだ。
私は今でも
自分の声に、自信を持っている。
近くにいるときよりも、
離れて過ごしているときの方が、
もっと ずっと
気になるものなんだなあ。
認めなければ良かったの。
確かめるように あの人の方向へ目を向けるたび、
喜びよりも 後悔が募る。
恋ってこんなにも かなしい ものだった?
青春の一頁、更新中。
浮き足立ってる。
たいして暑くもないのに
鼻の頭に汗をかいた。
くしゃっとあの人が笑ったとき、
私の世界は 一際輝く。
剥がれかけた真珠色のマニキュアに、
今しがた離れた故郷を思う
懐郷病にかかった猫。
忘れ去ろう、いっぺん。
口にしてみて、その虚しさに心臓を押さえた。
こんな風にしか育たなくてごめんね。
もっと、可愛らしい気の利いた子になればよかったのにね。
でも、こんなになっちゃったんだよ。
仕方ないよ。私にはもうどうにもできない。
ごめんなさい。
私は、
私の生き方が間違っているのでしょうか。
私の人格は、否定されるべきものなのでしょうか。
私に彼女を批判する権利があるのでしょうか。
産んでくれたことには感謝している、かもしれないけれど
わたしとあなたとは 違う人間です。
目の輝きがレンズ頼りになって、
小さなポーチに小物を詰めて、
逆睫毛をひっくり返した。
前髪を切りすぎて、
眉毛の端がちょん切れて、
頭が少しだけ軽くなった。
でもまだ心臓に毛は生えな ....
ついつい目に留まる薄紅の、
大輪に恋して瞼を落とす。
まぼろしなら良かったのに。
それなら私は、あなたを哀しんで泣くこともなかった。
だって、ぬくもりを知らないのだから。
恋人にはなれないけど、傍に居てあげることは出来るよ。
君を愛することは出来ないけれど、僕は君を宝物のように大切だと思っているから。
もうすぐ別れを告げるのどかな色合いに、笑顔が零れる。
嗚呼、
私のふるさとは美しい。
あの頃は大傑作だと思ったシンデレラ城も、
今見るといびつに歪んだ自己満足の結晶だった。
ざらつく壁に背を預け、
微熱に浮かされてとろんとまどろむ。
あかつきの風を待ちながら、
差し伸べられた手につかまったとき
白に包まれた私は
安らぎに満ちる。
ボクの呑んだ薔薇色が、
腹の中で幸福の音を弾き出す。
人生通告:
復活を希望されますか?
わたしも いつか、
逃げるように
何かから
遠ざかるように
赤い舌の影から
目印を目指すために
色の見えない道を走る
光なのか、
闇なのか、
深さも
果てなさも
風を切るわたしには分からない。
踏みしめた宙、
生まれた羽 ....
雪野原をなぞる、赤い指先。
ほう、と吐いたひと息が 冬の落ち込んだ雪空に
溶けて消えた。
愛は、深ければ深いほどいいというわけではない。そこに執着や陶酔があってはならない。人が求めるのは、愛し愛されることによって得られる、心地よさなのだから。
エゴイズムに侵された人間ほど、醜く愚かで ....
にわかに薫る甘やかな風。
彼は私から目を逸らし、
今秋最初の嘘をついた。
彼の仕草の一つ一つが、ひとを傷付けるためにあった。
たとえばそれは、果てしなく大きな絶望で、
私はただただ立ち尽くし、
その悪意に満ちた美しい仕草の一つ一つに
心臓をチクチクと刺されていたのだ。
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