初冬や子猫も蓑が欲しからう
子猫らを懐にして影寒し
ひざに乗る子猫二匹のくさめかな
子猫らの声はすれども枯むぐら
ひとり寝も夢はふたりぞ冬ぬくし
衰へや詩 ....
愁人
詩想十年方断腸
愁人独詠酔余狂
飛花何処秋山謐
落涙何心秋夜長
一夕一朝虫切切
千秋萬歳月蒼蒼
詩人一命虚空否
遮莫吟魂不可忘
愁人
詩想十年 方(まさ)に腸 ....
まよなか仁
いとしい人の名をよぶ止
猛烈にさびしくな留
ウタヨミ賀
幸せになること波
許されないのでせう可
ゆめに病んで流す夜長のなみだか奈
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大学からN駅まで歩いて行くことがあります、と話しのついでに言ふと、先生は興味を持たれた様子で、その日は一緒に歩いて帰ることになった。N駅と大学までの間には、地下鉄の駅が十ばかりある。距離はどれほどか ....
父と私は、海の底で蟹を捕まへようとしてゐた。蟹は絶好の釣り餌になるのだと、父は言ふ。釣りを楽しむためには、まづ蟹を獲らねばならない。小さな蟹が何匹も足元を這ってゐるが、触れることすらできない。逃げる時 ....
めくら猫のまなこに残る暑さかな
病み猫やうつらうつらと露の夢
月あらば三人なるべし手酌酒
空に書く恋文かなし秋ごころ
秋風や祖母の時計はまだ動く
長夜
颯然叢竹作哀音
長夜月明山色深
望望秋星何処落
詩人涙眼遠人心
長夜
颯然(さつぜん) 叢竹 哀音を作(な)す
長夜 月明らかにして山色深し
望み望む 秋星 何処 ....
左目の水晶体に封じ込められた
淡い翡翠色の少年人魚は
ぴくりぴくりと蠢動しつつ
お前を挑発しつづけるだらう
覚えておいで
人魚は七回脱皮することを
そのたびに
空は蒼く痙攣するだらう ....
『アイスクリームを食べに行かう!』
目を閉ぢてごらん
目を閉ぢてごらん
駐車場には子猫のはらわた
咲かないあぢさゐ
虹色の挽き肉
地獄のやうな無関心
目を閉ぢ ....
にゃっ、にゃっ
にゃっ、にゃっ
窓の外から子猫の鳴き声
にゃっ、にゃっ
にゃっ、にゃっ
遠慮深げな、物問ひたげな
「先生、夜分に恐れ入ります」
子供の神妙な声がする
「母が ....
舌先の恋の匂ひや夏の夢
病み猫の腫れたる乳の暑さかな
天翔ける十九の夢やみなみかぜ
紅薔薇は何億年の恨みかな
なつの恋はかなしき純白
夕立や街は恋なき人ばかり
....
しめやかに夏に入るなり大往生
涼しさやまぶたを閉ぢる指の先
通夜に
棺の前のビール二本の宴かな
母の日や悲しき花にうづもれて
なき人をひき立てて咲け初夏の花
....
かげろふやガソリン一滴惜しむ日々
花散るや小猫は野辺に腐りつつ
病む祖母のひとみ濁れり藤の花
わが胸は花花花とうづきけり
秘めごとは肉の匂ひや落椿
佳き人のお尻は白し夢の ....
西蔵
紅塵侵梵鐘
悲響到霊峰
萬國知天道
應昇拉薩龍
チベット
紅塵 梵鐘を侵し
悲響 霊峰に到る
万国 天道を知らば
まさに昇るべし ラサの龍
htt ....
春酔
酒仙酣臥夢還天
独酌沈吟不可眠
美酒美人春一夜
詩人血涙酔千年
春酔
酒仙は酣臥して天に還るを夢む
独酌 沈吟 眠るべからず
美酒 美人 春一夜
詩人の血涙 酔 ....
閉店間際のスーパーマーケットで、私は大いに焦ってゐた。買はねばならないものがあったのに、どうしても思ひ出せないのだった。ほどなく、客もまばらな店内に「君が代」が流れ始める。君が代?
肩を叩かれ振 ....
春霞たなびく青山(せいざん)の林の中で
猛然と一本の白樺を犯してをりますと
感極まった白樺は、小枝を私の左目に突き立てまして
・・・男冥利に尽きます
その時に孕ませた双子のうち
一人は聖 ....
「健康状態は?」「良好です」
「朝ご飯は何時に食べましたか?」「今朝の七時に」
「海外旅行には」「行ったことありません」
「刺青やピアスはしてますか?」「いいえ」
「不特定の同性の方と性的な関 ....
うぐひすやゴミ捨てる人拾ふ人
やはらかき子猫の腹や春の風
菜の花やまにまに猫はキスをして
会ふたびに会ふたびに胸はあたたかし
片恋や今宵の花は一分咲き
春眠や夢も ....
「遠野物語」を立ち読みしてゐると、私の横にゐた若い女が「モーツァルトの手紙」を手に取ったのだった。
うららかな春の昼下がり、店内には他に客は見当たらない。暇さうな店員が、黙々とポップ広告を作ってゐる ....
野辺の日に子猫のあくびうつるなり
のどかやな運転しつつ一句二句
捕まってたまるものかは犬の春
雪どけや恋しげに飛ぶ尉びたき
爺婆が黙して歩む余寒かな
春の夜に思ふ人あり物の音
三月 ....
寄花貌
独吟坐覚雨声微
半睡詩魂散亦飛
夢裏相逢何鬱鬱
以詩顔色作薔薇
花貌に寄す
独吟 坐(そぞ)ろに雨声の微かなるを覚ゆ
半睡 詩魂 散りてはまた飛ぶ
夢裏 相逢へ ....
二十年ぶりに故郷に帰ってきた。友人知人はもとより無く、親類縁者もみなゐなくなってしまった田舎町へと、ただ感傷を慰めるためだけに、一人ふらりと立ち寄ったのだった。風はさやかに吹いてゐただらうか・・・? ....
月を吐け
月を吐け
王水呑みすぎ二日酔ひ
糜爛しきったのどちんこ
月を吐け
月を吐け
色白娘のおしりのやうな
まるくて大ッきな月を吐け!
空から子猫が降っ ....
「お前のココアで母さんが火傷したよ」
見知らぬ家人は、さう言ひ放った。
「昨晩、お前の飲み残したココアを片付けようとして、母さんは火傷したんだぞ。それで救急車を呼んだんだ」
「えっ? 一一九番し ....
マスマイ
マスマイ
ナリマスマイ
生キテユカネバナリマスマイ
ツラクテ
ツラクテ
悲シクテ
詩ヲ書キ
絵ヲ描キ
泣キナガラ
マスマイ
マスマイ
ナリマスマイ
生キ ....
『鼻を失敗したの』
『だから自殺するの』
吊り革を握る手に力が入る。私は、隣りに立つ女が手に持ってゐる、携帯電話の液晶画面を盗み見てゐた。
『目はうまくいったんだけど』
女の髪は長く、俯いてゐ ....
「今日のやうにじめじめしてゐますと出ますので」
晩秋のたそがれ刻、男は陰気に呟いた。
「この榎の根元によく出ますな」
出るかと聞くと、出ると言ふ。今まで何度も見たと言ふ。
「誰でも初めは茸と間 ....
まづはローズ・ティーのシャワーをどうぞ
いつの間にポケットの中にマロン・グラッセが?
シュークリームが頭の上にポテッ
レア・チーズケーキを握りしめて
ショコラ七段回し蹴 ....
空気が乾燥して
映画館までの道のりは、西部劇の決闘シーンやうに砂ぼこりが舞ってゐる
モギリは陰気な女だった
人差し指を立てて「大人一枚!」と言ふと「3800円」と応へた
「いや、特別席 ....
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