公園の大きな吊り橋を渡りきったところに、イカの握り寿司が一貫置いてあった
ちょこんと、二ツ揃へて、地面に置いてあった
そりゃ好物だけどね
せめて小皿に載ってりゃな
しゃがみ込んで、つついてみる ....
近所の本屋で、新訳の「ロリータ」を探してゐると、以前に好きだった女性を見かけた
彼女の髪の色は、見るたびに薄くなってゆく
今日の髪は、まるで黄ばんだ白髪のやうだった

「ロリータ」を手にしたと ....
鱗無き大蛇(をろち)は
盲(めしひ)の蒼馬(あを)に絡み付きたり

月いづくにかあらむ
月すでに落ちぬ

花は蕾のままに立ち枯る
はや花は咲かざり

蒼馬は臥して息絶え
大蛇は泥中 ....
神学を齧ったからと言って信仰心が深まるわけでもなく
かくて私は見事に無神論者となり如何なる神も信じない

愛を信じないがゆゑに
人生も信じない

私は恋を信じず
美人も信じない

馥 ....
鳴きわめく油蝉を捕まへて
羽根をむしり取り
脚をもぎり取り
口の中に放り込む

食感は花林糖
この味は何かに似てゐる
この味は・・・
さうだ、鷄皮の唐揚げ!

胃の中で
ジュッと ....
地獄とは
何も死なねば行けぬ所とは限らない

今日もまた
隣り近所の
ありふれた四畳半の部屋が
救ひの無い無間地獄となる

 食事を与へず衰弱死・・・
 体中に煙草の火を押し付けた跡 ....
憂淫雨

独酔憂淫雨
雨中幽鳥吟
詩魂何処有
寂寂石榴陰


淫雨を憂ふ

独酔 淫雨を憂ふ
雨中 幽鳥吟ず
詩魂 何処にか有る
寂寂 石榴の陰


長雨を嘆く

 ....
夏になると、週に二回のペースでプールに行く。
泳ぎに行くといふよりは、体を焼きに。
五、六回通へば、きれいに焼き上がる。

プールサイドを歩くと視線を感じる。
子供連れの奥さんの流し目と、ゲ ....
ショッピングセンターの中にある映画館の前でぼんやりしてたら、女の子から微笑みかけられた。
「こんにちはあ」
はい、こんにちは。
やたらと体をクネクネさせる娘だ。
髪は、ほぼ金髪、派手なウェーブ ....
本屋に寄った。
綿矢りさの本を立ち読みするために。
あんなにホメられたり、ケナされたりする作品とはどんなものかと思って。
ちなみに、基本的に私は生存中の作家の本は読まない。

『インストール ....
夕立や子猫の腐る竹林

重き夜や夏に狂うて血のちぎり

うたも絵も美しくあれ夏の闇

病んでなほざくろの花は輝けり

筆先に落つる泪や花ざくろ

しづけさやプールに沈む我がいのち
 ....
壁に塗り込められてしまった!

この近在では、向かふところ敵無しの大やもりの俺様が、あらうことか漆喰の中に閉ぢ込められ、身動きがとれなくなってしまった。
このボロ家に迷ひ込んだのが運の尽きだった ....
私のホームページのゲストブックが荒らされてゐる。
毎日のやうに、扇情的なメッセージが書き込まれる。

荒らしよ。
三州生桑HPのゲストブックには、元々書き込みが少ないので、正直なところ、ちょっ ....
短夜や障子に当たる虫の音

五月雨に降り籠めらるる小鴨かな

雨音も消ゆるやうなり花菖蒲

あぢさゐの花の重さや長き雨

梅雨の野を濡れて行きたし泣きながら

我は泣く汝は血を吐け ....
子猫が死んでゐる

昼寝でもしてゐるかのやうに
アスファルトに横たはってゐる

傍らを通り過ぎる時に
私は、ごめんねとつぶやく

その小さな黒猫を殺したのは私のやうな気がして

h ....
父の日に夢を見た

   §

大地震があった
私は、すぐには故郷に帰れなかった
車も電車も無い

やうやく故郷に帰ると、或る男がかう言った
あんたの家は無いよ
全部盗られちまった ....
お前の名前は何と言ったらう?

この期に及んで馬鹿な俺は
来世でお前に逢へるだらうかと
やくたいも無いことばかり気にしてゐる

ああ美しかったお前

お前ほど
深く愛した女は
つひ ....
詩は酒やポルノよりもたちが悪い
人間を本質的に覚醒させてしまふ

人間に感情など芽生えさせるな
夢を見させるな
恋に酔はせるな

詩を味はったばっかりに
楽園を追はれたといふのに

 ....
雨雨雨

春の別れだ

図々しい夏がやってきた

今年の夏も赤ん坊が殺される

炎天下
パチンコ屋に停められた車の中で赤ん坊が蒸し殺される

もう疲れた

毎年毎年

も ....
「詩遊人たち」とは、詩人交流サイト「詩遊会」の有志によって出版された、若々しく、みづみづしい詩集である。
これは未熟といふ意味ではない。
たとふれば、こんこんと湧き出づる泉のやうな・・・。
さう ....
私は酔ふ
私は私を酔ふ
私は月を酔ふ
猫は私を酔ふ

私は本を酔ふ
夜は私を酔ふ
私は恋を酔ふ
あなたは私を酔ふ

私は酔ひそのものであり
酔ひは私そのものであり

夢は私を ....
最近しきりに、学生時代の或る失恋を思ひ出す。
彼女は美少女だった。さうして、それをよく自覚してゐた。
「またモデルにスカウトされたよ!」

有り体に言ふと、私は二股を掛けられたのだった。
「 ....
朧月何時有
悄然想故園
人生無別涙
情愛是虚言


朧月 何れの時よりか有る
悄然 故園を想はしむ
人生 別涙無くんば
情愛 是れ虚言


あのおぼろ月は、いつからあそこに?
 ....
稲村つぐ氏の、文学に対する視野といふものは、相当に広汎なのではあるまいか。
私の文学的視野はピンホールのやうに狭窄であり、氏のそれは広角レンズ、否、魚眼レンズのやうに広く開いてゐる。
稲村氏の詩集 ....
桜は傷つくごとに優しく花を咲かせます

うとんじられては優しく咲き
さげすまれては優しく咲き

これ以上優しくなってどうするのかと
桜自身も思ってはゐますが

優しく咲き
優しく咲き ....
三州生桑(115)
タイトル カテゴリ Point 日付
イカの握り寿司自由詩506/9/23 13:38
凶夢未詩・独白306/9/23 12:28
望み絶ゆるうた自由詩306/8/16 16:20
ロゴス自由詩206/8/14 18:48
油蝉自由詩306/8/5 18:36
地獄の部屋自由詩306/7/31 18:54
憂淫雨[group]伝統定型各 ...306/7/24 18:22
プールサイドにて未詩・独白006/7/23 16:44
うろたへる詩人未詩・独白306/7/20 18:44
女子高生未詩・独白306/7/18 18:34
夏に狂へる[group]俳句806/7/15 18:18
やもりの首自由詩406/7/13 18:47
荒らしに告ぐ散文(批評 ...506/7/1 16:39
梅雨冷え[group]俳句506/6/22 20:36
子猫が死んでゐる自由詩206/6/20 18:14
イノック・アーデン自由詩406/6/19 21:43
イマハノキハ自由詩206/5/24 18:35
詩人を撃て!自由詩406/5/10 18:35
立夏自由詩106/5/6 18:10
詩集「詩遊人たち」読後感散文(批評 ...506/3/22 18:35
酔ふ自由詩206/3/8 18:38
あの頃未詩・独白506/3/7 18:40
春宵別涙[group]伝統定型各 ...506/3/7 18:37
稲村つぐ詩集「四線譜」を読みて散文(批評 ...206/3/3 22:08
■桜風(朗読あり)自由詩406/2/28 18:42

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