地球抱く ひきしおみちしお しをあそぶ 母なる乙女 膨らむは胎
空裂けて 朝来たる浜 歌響く 乙女の足元 積みあがる吾子
眠る午後 島は予感に慄いて 赤い花の咲く 赤い花の散る
....
切り捨てた内臓の
まだ 暖かいそれ
声を、あげている
よっぽど恐ろしくなって
ビニールで包んだ
”毎度ありがとうございます。ショッピー・ヤマネ”
野菜の匂いのするビ ....
潜水病になった人魚と二人で
万華鏡を取り合って
あんまりひどく騒いでいたから
押入れの中から鬼が出てきて
キクコとカナエを連れ去った
着物のすそは、千代紙を散らす
あまいピンク ....
くりかえし生まれる幻想が
頭の中から離れないので
入り江に腰をおろし
巣へ、手をさし入れる
(巣はひからびた雛の墓)
かわいたくちばしにふれる
幻想が、脳をご丁寧に ....
みどり、それに付随する赤、
何か書かなくてはいけないというので
わたしはこうしているのです
あんまり静かでうるさいので、
以前どうやっていたか忘れてしまった。
みどり、それに付随する ....
かたすみでねじれ階段きしむよう影の向こうにりんごがひとつ
ざらざらの砂の床にて白昼夢目覚めて部屋にはりんごがひとつ
マンションの五階の窓から落ちてきた青空に映えるりんごがひとつ
....
孵らぬ卵というものの中に
潜んでいるのだという
それは乾いた泥の中で干からびる
雨を待つ
お前がその雛だというなら
私が今度孕んで産もうか
遠い北海で
赤く実を吐きながら ....
「センセィ、」
確かそれは赤かった
「センセィ、」
庭のピラカンサスが燃えている
「なんてん、まんりょう、べにしたん」
それは かきょく と女は言った
「センセィ、 ....
コッポラ:ミゼット、最近よく眠れないって言ってたでしょう。
牛乳あっためたから飲んで。
ミゼット:あ、うん、ありがと。
テーブルの上にいつものカップが二つ。
縁の欠けたのがミゼッ ....
そこに滴る血を舐めよ
その血は鳥の名
アオを呼ぶ鳥
それは忘れられた冬の匂い
手のひらを濡らすその血
その血は星の名
瞬く恒星
それは既に無い ....
「影絵はわたし
それはわたしの影」
二体の像に支配されて
イコンの外に出られない
むかし二人のひとがいて
街の女と里の老婆が交わって
生まれた虫が、糸を吐く
紡いだ糸が川にな ....
世界が壊れてしまっているので
することも無く
浜に寝転んでいます
雲はちぎれて
なんて、穏やかな夕
坂の上から見た
雲の切れ間に光を見た
節足虫が地べたに噛り付いて
落下した小指を解体し始める
(そう 失ってしまいましたから)
(そんな風に 失くしましたから)
....
口の中に
異物
舌の上を転がる
砂糖のなれの果て
赤色三号がひれふすのコウクウ
あまい舌です
あまい臓腑です
そして
ここが一番甘い
指で指し示し ....
度重なるインストールに失敗して
赤茶けた肌を、寒い部屋にさらしている
小腸 からまって
なんだか 蜘蛛の巣みたいよ
天井は 青く ひろがるのは 赤
赤い ベール
からまって まるで
蜘蛛の巣みたいよ
赤は 網の目 温度が落ちてくる
....
ss---s---s--s----s-s-s-s-----s--s--ss-ss
ひりひりと横たわるごとに打ち寄せてくる波
s---ss-s-----s---s----ssss-----s ....
その頃には衰えて
自分が何であったか 思い出せない
喜びを、その唇は歌う
たましいがここにあることへの喜び
何であったか 思い出せない
彼女は笑う
笑い、歌う
(世界は光 ....
海 蹴って 来る ほのお
波間で たてひざ
つめたい そのひざ
寄せて 来る
ほのおを 吐いて あ ける
あおぎみるそら ふたつのえとわる
とりが てんにあそび
そら たかく
まなざしが わたしにふれる
らせんのように うたが
うたがおりてきて
わたしの ひたいをうつ
はな こぼれ ささやく
....
金の無心に失敗したので
豚の首をもぐことに決めた。
「どいつも皆
ゴタブンに漏れず
金を豚に隠しているのさ」
豚の首に鋏を立てて、
首をもごうと四苦八苦
なかなか落ちな ....
そして雪の中へ沈む
地上から十メートル
中空に横たわりながら
雪を待つ
冬のさなかにほおり出されて
わたしは海を夢に見る
深淵から
響いて響いて
波がわたしを呼ぶ
わ ....
”ホウ”と呼ばれ
クローバーのしげみ、
緑が刺さって降った。
波が寄すごと夜が訪れ
オモネリ
またたきを繰り返す
白と黒の鍵盤を雫が離した
空は破れ
梯子ばかり
海へと下 ....
コンクリートうちっぱなしの部屋で
魚と空を見る
(完成することなく終わったものは、廃墟というのでしょうか)
(生まれることなく死んだのは、あれは、)
トレーの中で魚が跳ねて、
吐 ....
ある日少女は死んだ。
世界は気に留めなかった。
小船に乗せられて彼女は沖へと流された。
雲のさけめから、鳥女たちが舞い降りてくる。
小船を人魚の群れが囲う。
少女 ....
切り取りし うたの一節 風景画 部屋に積もるは記憶の断片
椿の木根元をご覧よ白い指あすこに昨日金魚を埋めたの
水鏡 円の中へと囚われし人魚の瞳の黒きこと
....
全体、悲しみというやつは
”いりいり”と脳へ打ち寄せるようだ。
午前も二時となったのなら
わたしは震えるより仕方ない。
少女は
夜半死んで、
乙女となって朝早く目覚める
花ほころぶよう、湯は赤く染まる
乙女は
夕べ死んで、
女となって昼過ぎに目覚める
うなじより、むせかえる花の香り ....
もっともっと弄って下さい。
わたしは、
あなたのための最後の小鳥。
(そして嘘をつく舌)
髪をそこらに捨て置いて
女を呼び寄せ
付文をする
呪ってくりゃれ
声の変わりに鏡の中の
そこの女を
さぁさぁさぁさぁ
腹に居るのは誰の子でもありゃあしないよ
ただ夜半に泣くばか ....
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