ぼくは栞になりたかった
図書館の本にそっと挟まったままの

あるいは
だれかが思いをこめて忍ばせた
四つ葉のクローバーに
あるいは
はからずも頁の上に落とされた
乾いた涙の跡に

 ....
お父さんとお母さんのことを
この人たちはいったい何者で
どうして私といっしょに家にいるのだろう、と
思ったことがありますか?

もし、そう思ったとしても
決してそれをお父さんとお母さんの前 ....
みずのうえにすっくりとたつ
ちいさなきいろのはなになりたい
そのうてなにつゆをみたして
なみだにくれるひとにさしだしたい


あまりにもすべをもたないから
あまりにもなにもできな ....
髪を肩の上で切った
さらさらと春の風に遊ぶように
前髪はまゆの5ミリ上
広い空が見えるように


あらゆるものが芽吹き始める
一週間で空の色は変わっている
恋に似た気持ちを
だれかに ....
とてもとても大きな鷲が
翼を広げてゆっくりと墜ちてゆきます
ジャンボジェット機ほどの「鳥」は
よく見るとハリボテでできていて
薄紙のような外側が破れて木の骨が見えたところから
メラメラと軽々 ....
きみ、ひとりだった
たくさんたくさんいるなかまのなかで
きみ、ひとりだった
すいすいおよぐなかまや
けづくろいしてるなかまや
なんにもしないなかまのなかで
きみ、ゆきをたべていた
きみの ....
真夜中のコンビ二エンスストアに
いそいで駆けこんだら
あたたかい、垢じみた
猫の毛の匂いがした
うす茶色の肌とうす茶色の目をした
店員の青年がこち ....
その前夜
コメディアンのコントを見ながら
大口あけて笑っていた

その前夜
世界中の人々が
サッカーボールの行方を追った


まるで戦争前夜のようだ、と
漁師の妻の老女はつぶやく
 ....
お出かけ前のメイクをしていた
魚の有効成分のような名前のコスメの
毛穴問題を解決するという魔法の糊の
ぺちゃんこになったちっちゃなチューブしごいて
米粒ほどの{ルビ糊=モノ}をひねり出したら
 ....
昆虫採集は
流行らないので
コトバ採集やっています
薬液は要りません

   *

空からツバメが
落っことしたのや
麦の穂のさやぎから
あふれ出たのや
流し台のシンクの隅に
 ....
生き残ったぼくらは

何か できるはず

亡き人の骨を慰めるため

ともに生きる人と歓ぶため
小津安二郎のアングルで
見渡すかぎりに手を繋ぎ合う
梨の畑を見ている
綺麗だね
白い 白い 白い 花
人に{ルビ矯=た}められたのだとしても


ガラス張りのカフェで見ている
晴れて ....
蛙の学校では、生徒たちが歌声の大きさを測られている、太陽は
乾ききらない血の色に染まって、もう四角になってしまいたい、
夕焼けは蛙の先生を慰めることはできない、助けてください、の
叫びは、鳩たち ....
下手くそな交通整理の
手旗信号に舌打ちしながら
いずれ大型スーパーが出来るという
埃だらけの街を走る
再開発で軒並み農地は
重機で掘り起こされ宅地になり
いち早く陣地を占めた
コンビニ銀 ....
ぼくたちは囲みの中で

放牧されて

笑いあったり

助けあったり

殺しあったりしてる

放牧されてるにすぎない

ことを

自覚するのと

してないのと

どっ ....
ビルの狭間の街に
春の突風が吹いている
大通りからひとつ路地を曲がった
小さな扉の店に入ると
物腰のやわらかい店主が迎えてくれる
ランチを注文して
ホルンの形のオブジェや
店主のお気に入 ....
年下のきみと手つなぎ抱いたクスの木はまぼろしか 分校の夏


おとこ先生、おんな先生、と生徒は呼びけりわが{ルビ父母=ちちはは}を


寂しさを語るすべさえ知らぬまま宿直室で聴くヴィヴァル ....
しあわせは得体の知れない不純物
混ぜて飲み干すベトナムコーヒー
停電の夜はとっても不安ですあなたが消えるわけじゃないのに

そのうちに死ぬ死ぬ死ぬと言いながら図太く長く生き遅れたい

長々と駅まで長き連絡道足早に行く自己嫌悪の日
ねえ
あなたは笑うかな
ついこないだまで
「レミオロメン」を「レミオメロン」
と云ってたって
だって美味しそうでしょ
メロンの音って
そういえば二人で
メロンの匂いつきの
レコードよ ....
あなたが
雲雀の落し物を書き記しているとき

あなたが
コーヒーの甘さに悪態をついているとき

わたしは遠ざかる
遠ざかってゆく


あなたが
もつれた糸を我慢強く解きほぐすとき ....
正月に土筆のうま煮供されて
解凍されたほろにがい春


南天にトカゲの干物忘れ物
百舌鳥よ、来ないと食べてしまうぞ


約束を違えたことを思い出す
水に疼く小指のあかぎれ
壁の亀裂を
 見張っていたつもりが
  見張られていたのでした
   亀裂はどんどん広がっていって
    その向こうに
     狼さんが覗いていました

  
 「以前、ふとんの訪 ....
大きくなったら台風になりたい

といった5歳のむすこは はたち


慣れないネクタイ締めるのももどかしく

マフラーを持っていったらという

ははおやの忠告も聴かずに


風の ....
神様、どうか、今だけは
この仕事がおわるまでは
むかえにこないでください


神様、どうか、
恋人とキスをするあいだ
むかえにこないでください

車が目的地につくまで
むかえにこな ....
むぞうさに 切り捨てて
流しの隅に 放りこむみたいに

とりあえず 芯は おいといて
とりあえず 芯は おいといて

その周辺を 言葉は
あてどなく うろついて

優しさと親しみをま ....
夜中、子どもの歌う声で目が覚める
「ほら、きこえるでしょう」
彼も寝床から起き上がったのでそう呟く
彼はしきりに右耳に手を当てて聴こうとしている
「聴こえない」
横になったままの私は
彼の ....
焼け落ちたレストランの角通るたび蘇る日々 おもいでの骨


あまり好きではない人の年賀状ナナメに見てる端正な文字


うるう秒何が出来るか考えて考えあぐねただの一秒
いぶいぶ いーぶん
いぶいぶ いーぶん
たとえば きぶんはいっぽんのいと
いつだって そうとうつは
いぶいぶ いーぶんで
いちど まいあがったら
まっさかさかさま さ
いとのはしを にぎ ....
凍る夜「かん、かん、かん…」と鎮火の報せ 
わたしの野火を鎮めて欲しい
はなびーる(37)
タイトル カテゴリ Point 日付
付箋自由詩6*12/1/27 18:03
虚空へ自由詩2*12/1/25 18:09
コウホネ自由詩5*12/1/25 17:58
異形の季節自由詩409/2/8 18:54
墜ちる鷲自由詩208/12/7 16:04
ぺんぎん舎にて自由詩4*06/8/26 22:59
「コンビ二の猫」自由詩7*06/8/22 12:52
前夜自由詩2*06/7/8 22:27
「もったいないお化け」は出てこなかった未詩・独白3*06/4/30 13:52
標本屋A自由詩7*06/4/20 23:21
生き残ったぼくらは未詩・独白1*06/4/19 0:17
梨の花自由詩1*06/4/16 18:17
泡の葬列自由詩3*06/4/15 11:27
コンビニと交通整理とやのあきこ(敬称略)の午後自由詩1*06/4/14 18:22
朝のうた未詩・独白3*06/3/24 0:19
チューキンとクロックムッシューと風の街自由詩3*06/3/21 13:38
十四の夏短歌006/3/19 20:43
ベトナムコーヒー短歌2*06/3/12 16:47
自己嫌悪短歌006/2/22 17:48
恋愛煙火(れんあいえんか)自由詩2*06/2/5 17:10
遠ざかる自由詩5*06/1/15 16:20
あかぎれ短歌0*06/1/9 23:57
墜落・その2自由詩006/1/9 17:36
はたち未詩・独白3*06/1/9 13:29
勝手なお願い自由詩1+*06/1/8 11:18
熟果未詩・独白006/1/4 20:45
プールの底自由詩1*06/1/4 12:05
一秒短歌1*06/1/2 11:17
いぶいぶ いーぶん自由詩006/1/1 22:22
野火短歌1*06/1/1 18:41

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