緩やかな坂道に差す木漏れ日が
少し春めいた感じを届けたかと思ったら
また今日は、その坂道を駆け上がるように
北風が口笛を吹いていった。
これから夜半にかけてまた、
冷たく ....
君が誰とどこで会っていようが僕には見えない。
僕が誰とどこで会っていても君に見えないように。
鏡に映った自分に「僕は大丈夫?」と問いかけてみても
答えは自分しか知らないのだけど。 ....
散らかった記憶を、ひとつずつ頭の中で整理しようと
呆然と眺めるモニターの中、不意に見つけるアドレス
もう訪れる事の無くなった秘密の部屋の鍵をそっと開けると
真っ白なページに自分 ....
私はこの街の星空が好きだ
どこにでもある煤けた空にぼやけた
街の灯りをひっくり返したような星空が好きだ
書割の夜空のように等級の大きな星しか見えない
ビルのネオンにかき消されそ ....
時間や記憶といったものが
脳の細胞と一緒に死んで逝く
日常という砦の中、ゆっくりと無用のものが死んで逝く
長く細い真っ直ぐな畑道を、一団の黒い行列
黒いレースのベール、透けるよ ....
厳しき寒さの合間の空に、ひねもす探す古い文。
宛名も忘れ引き出しの奥にしまいて幾久し。
見れば顔から火が出るほどに甘い文字など並びいて、
早く捨てればよいものを何故かは知らねど捨てが ....
重ねたる肌の温もり忘れえず また来るメールの長き行間
あても無く歩く裏道 影二つ今宵の宿は摩天楼下
指間よりこぼれし乳房引き寄せて しばし動かず 二日目の雨
上り詰めシーツに横たうひ ....
0.04sec.