富士がみえ大島がみえ茅ヶ崎の空は冷たく風が真っ青
大根や何をする気もおこらない
風吹いて物音すれば日暮れなり身近な人の誰もあらねば
藤沢のビジネスホテルに泊まりけり明りを消せばのぞき穴ひとつ
冷やかな雨の降る夜となりにけり外に出づれば雨の匂いす
ぬらっとしたみどりの椰子の
ふふとわらう看護婦のような葉もとを
もんしろちょうが飛ぶろうか
秋の晴間のかくもたかきを
もんしろちょうが飛ぶろうか
捨て子と知ったその日から
晴れてばかり ....
夕刻にアンテナの影よっつほど火災報知機のランプふたぁつ
{ルビ欅枯=けやきか}る{ルビ七光台=ななこうだい}というところ
まる子みて二度泣く秋の夜は澄み
しゃぶしゃぶの月の高さが絶妙で
深秋の月は色なく細めきぬ他に誰かは見るか知らねど
川はさみ流れたがふる{ルビ車灯=くるまび}の遠くつらなる秋ぞせつなき
金槌の音ふたつみつ暮れの秋
親戚に変人ありき月の{ルビ斎=とき}
{注 斎=仏事法要のときの食事。}
猫抱いて虫聞いている夜更けかな
雲のこき雲のうすきの流れとぶ肌さむき日の肩ぞこりける
いじわる大好きしてみたい
あの日
花瓶の向こうにのぞいてた
あの日
やさしい子だって知っていた
あの日
ほんとうのことが話せない
あの日
(間奏)
いじわる大好き ....
雨の日は車走らせ
竹崎の港近くに
暮らす人に
会いに行きたい
有明の海の色が
変わる岬を教えてくれた人
晴れ渡る野上海岸
目をほそめ沖を見詰めて
夢を 夢を 夢を
語った
....
秋の日のひかりあかるき白肌の若木のごとき人のわらへり
九州のかくし財産ばってんのお{ルビ米=よね}婆さまぴらっと逝けり
{ルビ武士=もののふ}の{ルビ矢並=やなみ}つくろふ{ルビ小手=こて}の上に{ルビ霰=あられ}たばしる{ルビ那須=なす}の{ルビ篠原=しのはら}
言わずと知れた実朝の名歌。とはいえ、じつは ....
秋の蚊の姿はりつく手首かな かゆ
秋雨のただもうざあと降るばかりただもうざあと降っているだけ
猫出せば秋の光の入りけり
なかなかに成すべきことは成し難し外へ出ずべし犬と{ルビ蝙蝠=こうもり}
うやむやに秋の一日を寝過ごせば影なき夕に喉の痛めり
信号の青き灯りの連なりて道滞る秋の深みに
あか抜けたる通りにありて煙草屋ののど飴賞味期限切れなり埃もかぶってるし
賞味期限過ぎしのど飴べたつけど人に見せては共に食いけり
そも我はシャッター閉ざす軒先でパソコン開き居座りをりき
....
映画観て星見て渡る踏み切りの幅の広さよそぞろ寒さよ
{ルビ欅=けやき}葉の道の向こうへ落ちにけり
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