むなしい言い争いの末に
また 一人の夜が始まる
あの人は背を向けて去り
私は一人の夜と向き合う
何度繰り返されただろう
一人の夜の長く果てなく
終わりのないメビウスの
輪の上を走り続ける ....
空の君
風の向う
夢の中
とおく
背肌をすべる
うわついた言葉
嘘は左から
右へと逃げて行く
空の君
風の彼方
浅い夢
ガラスに映る私は
遠い日のあなたそっくりで
げっそりと、疲れ方までそっくりで
慌てて背を正しても、微笑んでみても
その仕草までもがそっくりで
かあさん、げんきですか?
その ....
膝を抱えたまま
心が膝をかかえたまま だ
歩いていても
角の魚屋で刺身用の秋刀魚の目玉に見入っていても
友人につまらないメールを返信していても
いつもの連続ドラマを見ていても
子供たちの ....
優しさは伝播する 鼻風邪みたいに
夜の雲 爆ぜた月を繕っている
愛情をポタージュにする 染み入るように
さよならも告げず終わった夏の恋 朽ちた蓮の葉 爆ぜた秋の実
上弦の月に投げてみたりする 過ぎ去りし恋を球のかわりに
しあわせは賞味期限なしにつき 恋せば回れ 急がば哀れ
....
見守る藍を
この藍を
遠くあなたの空に
降り注ぐ
夜のためいき に代えて
そらの藍に背中を押されて
家路をたどるころ
夕餉の細い煙が
むんと鼻先に迫る
白い炊きたての匂い に
立ちすくむ
かきむしられるこころ
そして行き着くのは
誰かに会わなくて ....
松嶋慶子
「猫は 所詮畜生なんやから」
生前の祖父の口癖
餌は
人間が食べ終わったあとの身一つ残されていない 骨
そして 鍋底にわずかに残された味噌汁 をかけた冷ご飯
鰹節など、ま ....
泣いてくれてる 雨がわたしのかわりに
立ち尽くす さよならを雨に消されて
突然の抱擁に雨をも忘れた あの日
虚空からしたたる涙を 口に含んでみる
....
空を
見上げようともしない、君の
泣きはらした頬の ぬくもり が
染みる
舌足らずな恋は
時を止めるすべも知らず
いたずらに季節ばかりがすぎて
最後の秋
西日を受けた
一面の ....
夏の終わりの河原は
餌付けされて、もはや野生とは呼べない鴨たちの
小競り合いを眺める人、も まばらで
あなたは
鴨と
餌をまくジャージ姿の老人を眺めて
微笑んでいた
すこし曲がったそ ....
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