氷が踏み破られる
次々に踏み破られる
口からこぼれた言葉を押さえきれずに
氷を踏み破る
夜、街灯の光に雪が散り散りに舞っている
彼女は捕虫網を片手に地平を眺めている
音もな ....
ペンネが路上に転がっている
曇天の下無数の人差し指がペンネをいじくっている
塗炭ばりの工場の前で独楽を回す少年
しまい忘れた風鈴が金平糖のような音を立てている
少年は緑色の独楽を得意げに空中に ....
カウンターに座りたいんです
駅のホームには誰もいません
船に乗って進んでいくと赤い桟橋があって
その下で耳の白い少女が風待ちをしている
人差し指に風鈴を結わえて
横断歩道に残された赤い靴
....
襞がポストから生えていて冠婚葬祭と呟き続ける赤白帽の男の子が転んだ
痙攣する舌先で
路上には緑色の壁面が泳いでいる
冷たい指先に触れた油彩画
方向指示器の余熱に耳を焦がしては性的な魅力に満ちた ....
人魚が干されている。悲しい目をした犬がそれを見て吠え続ける。雨の上がった夕暮れ。漁師が身の丈ほどある銛を担いで海から上がってくる。彼は干された人魚を見て笑った。そこへ一升瓶を持って女がやってきた。漁 ....
花柄のシマウマが横断歩道を闊歩しているのを見た翌日、文机にもたれながら、サナトリウムの君はどうしているかときにかかり、風鈴をちらちらと鳴らしているそんな弱弱しいゾウは檻から出て行けといわれたので、栗 ....
悲しいだけ
とつぶやいたカメレオンが鳥居にぶら下がっている
雷に打たれていたのは
乾いた老木と夜の帳
指先に切り傷
問題になるのはザクロの色ではなくて
あなたへの愛
水蜘蛛に絡め取ら ....
私は逃げた女も男も殺してやろうと包丁を握りしめて立っていた。
すると戸を叩くものがあった。間が悪いことこの上ないなと思って居留守を決め込んでいると、鍵が回って戸が開いた。
戸の外には ....
妻が狐憑きにあって家を出た。かれこれ二ヶ月連絡がない。昨年の十一月に庭先に血まみれの狐が迷い込んできた。妻はこれを良く介抱したのだが甲斐無く死んでしまったのだ。そのときに憑かれたのであろう。
....
昼過ぎに雨が上がったので酒を買いに外に出た。羊雲が東の空にぽやぽや浮かんでいる。お日さまも顔をだしていて湿った空気が暖かく感じられた。酒屋にて上酒を購入。気分がよいのでそのまま散歩をすることにした。 ....
舌先で春を捜している
鳥居に差し込んだ陽光に瞬きを繰り返しながら
カタツムリがミシンの上で踊っている
風に乗った時計の短針を
追いかける人々の手にはハンマー
舌先で春を捜している
電熱 ....
夜、雨の音がする。窓の外を見ると街灯に照らされた雨粒が猫の毛を散らしたように落ちていく。黒い水たまりの上を鼠が走る。雨は止みそうもない。
文机に向かっていつものように創作に行き詰まっていると ....
青い空に瑠璃ガラスを並べた春先
痙攣する舌先に触れたあなたのアネモネは赤い
涙よ
茫洋とした白い耳
風の上に流れる青いガラス細工の破片
太陽の下の蝋燭
蟻の死骸
....
梅の花が牛の涎にまみれています
その瞬間ぽっかりと空いた百頭女
眼球ばかりが転がっている回廊がはれぼったいのです
だからあなたの名前を呼び続けるのです
常識にエルボーをくわえた星々に感謝を ....
カサブランカの放尿を尻目に、水天宮前を絡め取ったアサリが一升
星は海に沈み、ネジ式のカタツムリの交尾
ロートレックを積分した毛の生えた臓物が腐っていく
街宣カーに轢かれたトンボの眼鏡はひからびた ....
曼荼羅が曼荼羅がとねだる小坊主にお仕置きをくれている電化ミシンの針先に、
舌を縫われた狸が一匹ちょこんと座っておりました。
狸は鮎を片手に得意げにかさぶたをかきむしっていたので、
ついに園丁に見 ....
炭鉱に潜り込んだハンチング帽がフライパンを平らげた夜
カタツムリが春を迎えて太陽とセックスを繰り返す
傘を持つ女は破魔矢だろう
そう見立てたソメイヨシノが牛のよだれに塗れている
悲しい夜だ
....
カナディアンクラブを飲みすぎた
ねじ切れた朝に嘔吐
スーベニアの花が咲いて
遠い記憶のため池は緑
悲しいだけ
そう悲しいだけ
欣求浄土の音を立てて風鈴がちりん
冬の風に梅の香り
....
眼球の下にそっと差し込んだヒマワリの種が
芽吹いた
冬だと言うのに街が暖かい
ラフロイグのビンがそこかしこに転がっている
白い玉砂利を食わされた犬がひっくり返っている
通り雨に ....
階段を駆け上り見送る電車
吐く息白く間が悪いのだ
中央線を止めたポインセチアの鉢植え
プレゼントはとどかないまま
路線図を燃やすあなたの頬にたれた髪
雨ばかりふる雑踏 ....
繋いだ手のひらに
にじんだ汗の匂い
舌先にしびれる感覚
ああこれは毒なんだな
夜、雑踏の音を聞きながら
いつまでもはなせずにいる
海にまつわる記憶
お月さまに呼ばれ ....
薄命の子鹿が食べ残した枯葉なんか君食べられないよとぬかす紳士をちくわで撲殺した帰り道。ヘチマを百葉箱にお供えして満足げにため池に入水した姉の背中には薄黒いアザがあった。冠雪を記録した菩提樹の真下で逆立 ....
暮れてゆく空に
消えていった電車
曲がり角の先にある想像上の一点を
祈るようにして見つめていた
街外れの鉄塔が夕日に照らされている
灰まみれの外壁を見つめたまま
歳の瀬はやって ....
亡羊とした耳が熱を帯びて、手にした砂時計のガラスを溶かしていく。零れ落ちる時間の束を必死でかき集めるのだが、砂は先へ先へとこぼれていくのでいつまで経っても追いつかないのだ。炬燵の中で散々こき使われて ....
はなうた
吐息
世界は雨
踏みつけられたコスモス
待ちくたびれた私は
晴れない心臓から時計を取り出して
秒針の音に耳を澄まします
(はなうたとして)
世界に降る雨は結局
....
めずらしく静かな夜
疲れた体を横たえて
左手を眺める
夜の匂い
似ている指先
右手で包んで胸の上に乗せる
キリギリスの鳴き声
蛍光灯が切れかかっている
小川のせせらぎが聞こ ....
カエルを紐解いては笑う月の光帆を立ててさくらんするレトリック認識は甘く黒い時計台に火を灯すユナボマーの遠い血縁が心臓抜きを振りかざしつつ狂人日記をしたためる。1945年に何があったかを考えるよりは今現 ....
届いた声はすでに枯れていて
爪弾いた細い月を眺めながら
君は遠い空へふっと息を吐く
羊雲を産卵して
吐息は青
ショットグラス傾けろ
乱暴なサクソフォン
蹴飛ばしたこうも ....
バリかどこかで爆弾が破裂する
ヒズボラの少年が銃口を覗き込んで笑顔をこぼす
ダルフールの少女が破れた胸元を必死で隠している
日本の少年が注連縄で首をつる
そんな風にして
僕はおな ....
はなれたい
のたうつフナの
目に咲くスイレン
薬師堂から
落ちた恋人
仏壇を
焚き木にしては
新宿の
雑踏が踏む
ロータスの花
ぬばたまの
....
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