ビョウと突き刺す風越しに
ふと目に止まる時のうねりが
凄凄とした瞑色に身悶え―――
{ルビ弥立=いよだ}つ躰と裏腹に
凝らした眸に{ルビ赫=かがよ}う影は
象牙の塔に ....
散りてなほ 濃き紫の 野牡丹に
風秋なりと 歌ひたれども
※「紫」は野牡丹の花の色と「紫の縁」をかけたつもり。(笑)
紫の縁(ゆか ....
雲居の空をも染め尽くす
薄紅に酔う{ルビ桜人=さくらびと}
天与の美を{ルビ愛=め}で わが世の春と
思い違いの浮世を謳歌
浮かれ騒ぎの脇を抜け
{ルビ遠=おち}の ....
にほひ来る 風をしるべに ながむれば
袖をつらねて あそぶ{ルビ白蓮=はくれん}
木蓮のイラストを描いていたときに思いついた歌です。
木 ....
つらつら椿 戀しらに
常磐に冴える 鏡葉の
葉越しに揺れる 花の影
つらつら椿 うたかたに
{ルビ指=および}折りかき 数ふれば
{ルビ紅=くれなひ}にほふ 花の ....
{ルビ藍玉=あいだま}の光に舞ひし 秋桜
遠き{ルビ海彼=かいひ}の 空に似たれば
コスモスの異名に大波斯 ....
破色の風が吹く街に
千の瞳が上滑り・・・
渇いた時を 遣り過すには
いくつ {ルビ口実=りゆう}がいるのだろう?
事も無げに あいつは笑い
滲んだ空を見上げているから ....
高天に {ルビ先立=さきだ}ち渡る笛の{ルビ音=ね}に
つられて響く 馬鹿囃子
浮かれ拍子に 浮気酒
{ルビ燥=はしゃ}ぐ半被の裏側に
しとと張り付く やるせなさ
....
音もなく
無窮の果ては闇に落ち
虚空の下で
{ルビ貪婪=どんらん}な渇きは癒えず
玲瓏たる
銀の雫に月は盈ち
秤の上で
静謐な{ルビ焔=ほむら}を煽る
....
思ひいづるときはの山の梢さへ
紅くそめなす秋の夕暮れ
ほに出でてこぬ人まねく花すすき
風よりほかに見るひとぞなき
ゆらゆら纏う月の色
ひらひら翻る小夜衣
ほろほろ嘆く花の影
ふかふか見遣る片心
名もなき{ルビ憐恕=れんじょ}は風に消え
杞憂も蕩ける{ルビ玉桂=たまかつら}
....
丹桂の
にほふ夕べの
悲しきに
かへりこぬ日を
夢になさばや
旻天に ひらり翔らう紅シジミ
野駆けの誘いと 辺りで{ルビ戯=そば}え
彼方に渡る{ルビ鶸色=ひわいろ}の海
吹き{ルビ頻=し}く風に胡盧を浚われ
風来坊の桐の{ルビ一葉= ....
夕暮れの {ルビ緋=あけ}に合え照る 狐花
燃ゆるおもいひを たれによすらむ
見し人の 面影のせて {ルビ忍冬=すいかずら}
みそら行く{ルビ陽=ひ}の 想いはるかに
空礫(そらつぶて)
逝く夏の けわいに歌う影法師
{ルビ諦念=ていねん} 観念 {ルビ綯=な}い交ぜの
見果てぬ夢を引き連れて
尻切れトンボの数え歌
{ルビ陽炎= ....
艶めかしい光沢を乗せ
四生の吐息が綾なす短夜に
{ルビ疼=ひいら}ぐ{ルビ熱=ほとり}を持て余す
喟然として天を仰ぎ
自浄と自壊が引き合う跡に
時知り顔の{ルビ潦 ....
雨 しゃらしゃら降りて
{ルビ樋=とゆ}を伝い
渦巻きながら
かいしょに 落ちる天水
雨音 それは地に当たる音にあらず
ただ降る雨に音がある
そう言ったの ....
{ルビ書眉鳥=ほおじろ} 囀る春景色
{ルビ支那=チャイナ}生まれの{注丹桂=金木犀}が
此処に{ルビ居=お}るよと言いたげに
風に{ルビ嫩葉=わくらば}揺り落とす
今はた ....
水も{ルビ狭=せ}に 現当眺め {ルビ花筏=はないかだ}
往く時さえも ただほひろかに
わくらばに 行き逢ふ道も ....
春愁う
花の心を
{ルビ彩=だ}み返し
偲ぶ{ルビ縁=よすが}に
薄紅の風
さ{ルビ丹=に}つらふ
君を煽りて
{ルビ花篝=はなかがり}
....
母と{ルビ娘=こ}の
思い出まぜて
ちらし寿司
仕上げにかける
古雛の謎
子供の頃、飾っていた雛人形の指が折れてしまい、結局誰が折ったのかは今もわから ....
光差し添う{ルビ日照雨=そばえ}受け
孕む息吹に 背を伸ばし
明日を手繰りて ときめきを
{ルビ抱=いだ}く{ルビ童=わらし}が 虹を吐く
透ける視線は {ルビ横豎=おうじ ....
――{注三千世界の烏を殺し主と朝寝がしてみたい=高杉晋作が作った都々逸}――
寝物語の睦言に
誰がうとたか{ルビ漫歌=そぞろうた}
熊野の{ルビ牛王=ごおう}を裏返し
....
{ルビ翠=すい}の{ルビ竹生=たかふ}に月夜影
稲穂に似たる紫は 二目と見れぬ稀有な花
最期の時を飾らんと 今を盛りと咲き満つる
風も無き夜に{ルビ竹葉=たかは}が騒ぎ 月花に浮 ....
{ルビ熟=う}んだ柘榴を ひと齧り
愛しいあの子の味がする
{ルビ魄=たま}に根付いた夜叉の念
如来に帰依せど 忘らりょか
ぷつりと潰れた舌触り
あの子の目玉と瓜二つ ....
後れ毛 梳くうて そっぽ向き
微かに震える伏せ睫毛
「辛くはないの?」と、宵の月
若やる胸に絡ませた
好きと嫌いの綴れ織り
先夜の淵に咲く花を
見ては見ぬふり ....
朔
暗い闇夜に 星は降り
褪めた吐息を ひと抱え
{ルビ虚舟=うつおぶね}に 腰掛けて
平らな川面を 往来せん
二日月
茜の空に 銀の糸
透ける光が 胸を射し
{ ....
無明の闇から こちらを見つめ
綺麗な月は嗤うのです
虚空に伸べた 手の平に
冷たい銀の棘を刺し
{ルビ水面=みのも}を{ルビ掬=きく}す 白い手に
波紋に千切れた ....
一夜続いた新雨も上がり
濡れた{ルビ草生=くさふ}に{ルビ仰=の}い伏したれば
{ルビ眩=まぐ}れ入るのは{ルビ暁月夜=あかつきづくよ}
{ルビ古人=いにしえびと}の眼前に
....
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