とりが
わたしをねむり
わたしが
とりをねむる
しんや
ばすか
とらっくか
おおきなくるま
のようなものが
いえのまえを
はしっていった
とりや
わたしが
めをさましたりゆう ....
ただそらだけがある
ひとも
たてものも
どうしょくぶつも
わすれて
すみずみまで
ひろがっている
きおくのそとがわから
ことりがいちわきて
はばたこうとすると
そらはきように
み ....
ウォーリーを探せ、と言われて
ウォーリーを探しに行ったまま帰ってこない
そんな少女の話を以前しました
かどうかは定かではありませんが
電話帳に海という字を見つけては
泣きながら印をつけて ....
カブトエビ、という
小さな甲殻類がいるそうですが
さっきから門の前では
牛に良く似た人と
人に良く似た牛とが
縄跳びをしています
縄跳びが終わったらあの人と牛に
カブトエビの話を聞い ....
窓にはまった網戸を見ていた
それからちゃぶ台の上のスプーン
同じ方向に三本並べられていた
これママの、これパパの、これぼくの
暑かったと思う
そのことで汗もかいていたと思う
数年経って
....
むかし空には大きなバケツがあって
悲しいことがあると人は
そこまで悲しみを捨てに行った
ある日両手いっぱいに悲しみを抱えた大男が
そのバケツをひっくり返して
中身は空の隅々まで散らばってしま ....
晴れた日に
ひばりの鳴き声を聞きながら
地雷を踏んで遊ぶ
僕らはまだ
子供のまま
誰が一番遠くまで脚を飛ばせるか
競い合って
ひばりの鳴き声を聞きながら
でも、もうちゃんは間違えて
....
夜が更けるころ動物園の園長は
動物たちに泳ぎ方を教えます
本当は水族館の園長になるのが
動物園の園長の夢でした
一番泳ぎが得意なのはゴリラで
それ以外は身体の大きさに関係なく
だいたい普通 ....
お父さんの背骨の近くを押していく
淋しい箇所がいくつかある
大きくなったら学者かバスの運転手になりたかった
と、よく言っていた
結局学者にもバスの運転手にもなれず
十年前に地方の小さな薬局を ....
イクラ丼が食べたい
キヨシマツモトは突然に言う
案の定僕のポケットには
北へ向かうチケットが二枚ある
キヨシマツモトでは本日も医薬品が大安売りで
僕はまったくの文系だけれど
キヨシマツモト ....
あんなに痩せっぽちだった友だちが今はひとりぼっちになってた
スリッパを並べると自分にもお客さんがあるみたいで嬉しい
ウォーリーを探せ、と言われてウォーリーしか探さないような子でした ....
犬小屋の中でお父さんとお母さんが
おままごとをしています
春の陽が一番良く当たるお庭で
せまいね、と言いながら
それでもきれいな身なりで
プラスチックの食器を並べていきます
きょう、の ....
保育園の窓の外では
世界童話全集が産卵をしています
孵化したばかりの童話は
粘液で汚れしかも鋭い牙があるので
先生たちがきれいに拭いて
牙を一本一本抜いていくのです
暴れて困るものはダンボ ....
亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい
+
かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている
+
カンガルーが直立したまま
波音 ....
耳の中に何か忘れ物をした気がして
振り返ってみるけれど
耳の中に帰る道を忘れてしまった
どうにかしようと耳を澄ましても
聞きたくない音や言葉ばかり聞こえてしまう
まもなく桜がきれいに咲き始め ....
階段を上っていく
ホールには明り取りの窓から差し込む光が溢れ
かつてそれは観葉植物の大きな葉を照らしたこともあった
河口の近くで手をつなぎバスを待っていたとき
足元には確かに雨ざらしになった動 ....
公園の砂場で
車のおもちゃが死んでいた
一度も生きたことがないのに
もう自ら動くこともないのだ
近所の庭に咲く
キンモクセイが香っている
今まで見たことのある死体と同じように
嫌な匂 ....
たくさんの花を枯らした
サボテンやアロエも枯らしたし
ケフィアやカスピ海ヨーグルトも駄目にした
それでも命は大切にしなければならないからと
小さな虫はその形や色が嫌いでも
なるべく殺さず ....
振り回せるものを探して歩く
軽すぎれば振り回す充実感がないし
重すぎれば肩や腰に負担がかかるから危ない
道路の上にも
道路に接するいろいろな敷地や排水路にも
振り回すのに丁度良いものは見つか ....
足がつった
魚を釣った
痛さにのたうつ小指が
餌に見えたのか
少なくとも自分の足の小指くらいは
何をも傷つけないと思っていたのに
魚は同じようにのたうってる
口をこじ開け
引っ掛かって ....
公園のベンチに腰をかけ
新聞を読む初老の男の人の手が
小刻みに震えている
新聞から文字がひとつ
またひとつと落ち
足元で意味とは別のものとなった
そのようにして人は幸せになっていくのだ、と ....
大通りがあるでしょう
そうまっすぐのアスファルトの大通り
右側にショッピングセンターのあるあの大通りよ
その大通りをまっすぐ行って
どこもカーブしてないからまっすぐ行って
三つ目の信号を左に ....
揚子江のほとりで
あなたは生きてください
わたしは揚子江の様子は知らないけれど
多分あなたも同じくらいに知らないでしょうけれど
揚子江のほとりにも花は咲くでしょう
この年になっても花の名前は ....
危険です
右斜め前方から中学生らしき人たちが三人接近中です
ポストの中に珍しい爆弾が仕掛けられているので危険です
でもそれは本当はポストではなく冷蔵庫なので危険です
危険です 危険です
両開 ....
階段の踊り場のあたりで
父が釣りをしていた
家の中とはいえ
釣りをする父の姿が
再び見られるとは思ってなかったので
嬉しかった
子供のころ一度行ったきりだった
工場地帯の隅っこに広がる
....
机は待ってます
春が来るのを
また芽吹く日を
小さな子が
自分の身体に触れるくすぐったさが
その感覚に似ていて
どこかに枝を伸ばしたくなる
少し離れたところで
真新しいランドセルが
....
インターホンが鳴って
受話器をとる
誰も出ない
カーテンを開けて外を覗く
いつの間にか砂漠が広がっている
その真ん中を
うつむいた君が一人で歩いている
名を呼ぶけれど
窓の開け方を ....
箪笥の奥には
凪いだ海がしまわれている
微かに潮の匂いが漂っている
妻は夕暮れの淡い光に
静かなシルエットとなり
折り目正しく丁寧に
洗濯物を畳む
その姿は僕らの感傷を代弁する
何 ....
日が暮れて今日も塩屋に
ナメクジたちが集まる
口々に死にたい死にたいと言いながら
塩を求めにやってくるのだ
けれど感情が昂りすぎて
みな自分の流した涙で溶けてしまう
翌朝塩屋の前は
粘液 ....
ホームセンターで
子象を買って帰る
前から欲しかったので
お金をコツコツと貯めていたのだ
家族の喜ぶ顔が見られるとも思ったが
案の定こんなもの買ってきて
と妻に叱られる
「詩とは違うんだ ....
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