ひとつ足りないと
この団子は出来ません。

(あんこ・ごま・きなこ・ずんだ・醤油・みたらし・よもぎ。)

たくさんの味のものを食べても
お腹がいっぱいになったとは思えないのです。

「 ....
足音が響く焼き場の通路
父の姿が見えないものか?と何度も見渡した。
手帳に忍ばせた写真の中では
父と幼い三姉妹が
ディズニーランドではしゃいでいる。
進学時
家を離れる前の晩
 ....
レンズ越し

姿が観たいと願いつつ

何気に覗いた骨壷が

夕日に染まって

血を流す。
粥を含んだ口元。
生きる事をかみ締めるかのように
ゆっくりと唇が動く。

とろとろに煮込んだ粥は味付けも無く
米の甘みが弱った体に優しい。

おわん半分に残した粥を下げたとき
父は ....
昨日咲いた向日葵を見上げると
笑顔で眺める父が居る。

(お父さん、お父さん。今年の向日葵はいつも以上に大輪になりました。)

「小さくて、元気が無いのかな?」という一言が効いたのでしょ ....
最後の瞬間
かける言葉は無かった。

ただ
流されるがままに
「ありがとうございました。」と
言っただけ。

「お父さん死ぬな!!!」と
耳元で叫んだ人の話を聞いていたのだが

 ....
「受け入れる。」という行為は

「己自身が楽になる。」という事だ。

諦めとも違う想いを引き下げて

父の骨壷を墓の中に収める。

(ごりっ・・・・。ごりっ・・・・。)と

重い扉 ....
昨晩の雨は雪へと変わり

昼過ぎには太陽にバトンを渡す。

帰宅した父を囲み

静かに語らう母と娘たち。

その手は何かを決意し

何かを覚悟するかのように

しっかりと握 ....
マーブルチョコレートを口に含み
父の事を浮かべながら
「美味しい。」とつぶやく。

喉を滑り込み
口の中をほろ苦くして
「これはうまいね。」とほころんだ父の顔が
はっきりと見えた。

 ....
薄く紅を差した土気色の唇。

「顔が綺麗になったね。」とつぶやく母が

少しだけ微笑んだ。

「また、何処かで会おうね。」と棺を覗く妹は

涙をぬぐう事も無く

もうすぐ灰に ....
父の眼鏡が光を取り込んで
天井に反射をした淡い粒子が
「帰ってきたよ。」と呼びかける初夏の午前中。

庭では母と娘が
来たるべき新盆に備え
草取りをしている。

うっすらと積もる雪の中 ....
父と過ごす最後の時まで
離れまいと決めた早朝。

冷えきった畳部屋であぐらをかき
ゆっくりと茶をすする父がいると
何気なく思う。

眠ったままの父をみつめ
正座を崩してそこに座れば
 ....
父を失った悲しみが癒えるとき
棚の奥にしまったままの写真は
寝室であった部屋の鏡台に置かれる。

新しい写真立て
マーブルチョコレートとゼリービンズ。
それらは決して開かれないまま
誰か ....
零れ落ちた詩を拾い集め

パズルを組み立てる代わりに

初めて出会った場所の記憶を掘り起こす。

(それがどこなのか、悲しいくらい忘れてしまった。)



目の前に居るのは幸せに ....
くるくると回る提燈の灯りの元

笑ったように眠る父が居る。

父の横に座り

口元に耳を近づけて

微かに聞こえる寝息を聞いた1月15日の深夜。

父を挟んで布団を敷いた妹たちは
 ....
ドライアイスの冷たさが

置いた手の感覚を奪ってゆく。

触れていれば・暖めていれば

父は目を覚ますと考えた。

指先の感覚が無くなった手を離してタオルで包み

霜で覆われた父の ....
父が帰ってきた。

白い靴下
プーマのニット帽
それらに合わぬ羽織袴を着て。

「お父さん、格好いいよ。」

母にほめられ
少し照れたように見える父は
布団の中で微笑んでいる。
 ....
花柄の便箋。

「大事なときに、使うんだ。」と

丁寧に取っておいた。

人を出迎え

父を送り出す合間を縫いながら

新しいボールペンで文(ふみ)をしたためる。

ちゃぶ台を ....
握った手を、離すことが出来ない。
 
絡まった指先を、解くことが出来ない。

熱がこもる掌が

冷たい手と心を暖めるようで

「その手を、ずっと・ずっと繋いでいたい。」と

あなた ....
「幸せになりなさい。皆で力を合わせ、家を守りなさい。」

四十九日の晩
夢枕に立つ父が私に言った最後の言葉。

晴れた日の日曜日
花びらが舞う広場で
おにぎりを頬張る女四人ばか ....
すれ違う時、片方の目は開かない。
かけたい言葉/話したいという欲求を抱えたまま
最後の最後で死に別れる。

(何処かで、会えます様に。)
会いたい・・・・。会いたい・・・・。と思うのは
魂 ....
幾何学カットされた放射状のライトセーバー。
グラスに注いだ水はきらきらと反射をして
虹のアーチを作る。

日の光を全身に取り込んだグラスは
魂の輝きを映し出すかのように
手にする者を無言の ....
お父さんが死んだ日
いつもより輝いてみえた北斗七星。

お父さんが死んだ日
いつもより白く見えた庭の雪。

お父さんが死んだ日
いつもより寒く感じた六畳の客間。

寝ていたはずの猫 ....
特別に購入した特急券が

財布の中でひときわ目立っている。

朝日を浴びて飲む栄養ドリンクが

ラストスパートの合図にも聞こえ

一周する秒針に最後の一枚を託す。

外では帰省客が ....
平行線がモニターに表れて

力の抜けた父の身体は

関節を失った人形のように

母の腕の中で横たわる。

(星がいつもより余計に輝いて、ファミリーワゴンの屋根が強く反射していた。)
 ....
客席の端に座り

マイクの前に立つ声を聞きながら

抱きしめられない寂しさでうつむいている。

「去年の今頃は、あなたのことを知らなかった・・・・。」

聞き馴れた音楽が流れ

そ ....
「父が居なくなって、自由になった。」と言われたので

(縛るものが欲しい。)と

戒律を作った。

心に硬く
心に巻きつけて。

私は目隠しをしてから
自らの全身を巻きつけた。
 ....
影送りが

色濃く映る空の下

火葬場の入り口では

これから家を見る妹が

父の遺骨を抱えている。

後から来る私は

父の遺影を掲げ

笑った顔に笑い返し

すっぽ ....
返事の無い玄関先。

「ただいま。」と言って

父の姿を待つ。

去年の今頃は/一ヶ月前までは

奥のリビングから父の歩く気配がした。

今は私から靴を脱ぎ

畳部屋の父の祭壇 ....
奇跡が起こる瞬間を描いて

苦しい毎日を過ごしていたのに

一番の奇跡は

母と娘たちが引き起こしていた。

数年と言われていた父の寿命は

2倍の10年目を数えた後

一つの ....
梓ゆい(404)
タイトル カテゴリ Point 日付
串団子。自由詩115/6/29 4:31
うつけもののささえ。自由詩3*15/6/13 5:21
眼鏡。自由詩3*15/6/6 5:05
1/2自由詩3*15/6/2 3:02
夏休み。自由詩215/6/2 2:40
出棺時。自由詩315/6/1 22:29
墓石塔自由詩3*15/5/29 0:13
雨の日のお迎え。自由詩3*15/5/21 1:40
波紋。自由詩115/5/20 20:24
無題自由詩3*15/5/19 21:55
麦藁帽子。自由詩615/5/17 0:52
日常の景色。自由詩515/5/12 9:42
区切り。自由詩415/5/9 5:14
恋文。自由詩215/5/9 4:35
妹二人。自由詩315/5/9 1:28
枯れ枝。自由詩515/5/4 16:57
夫婦。自由詩315/4/23 7:14
最後の手紙。自由詩215/4/23 2:26
握手自由詩215/4/20 8:20
父のお願い事。自由詩115/4/20 7:55
曇りガラス。自由詩215/4/20 4:45
真夏の家族。自由詩715/4/19 1:04
お父さんが死んだ日。自由詩415/4/18 7:49
朝もや。自由詩215/4/2 21:24
夜の吐息。自由詩315/4/2 8:23
ポエトリー・リーディング。自由詩315/4/2 8:09
縛るもの。自由詩315/4/1 1:50
煙。自由詩315/4/1 1:49
花吹雪。自由詩415/3/31 4:28
軌跡の後。自由詩315/3/30 22:46

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