父が育てたジャガイモをふかして食べた。
潰したジャガイモに
マヨネーズとハムを混ぜ込んで。
腹が膨れて横になっていたら
父が畑から帰ってきた。
シャワーを浴びた後
気持ちよさそうに頭を ....
最後に流した涙のような
光る透明のしずく。
掌で弾けとび
残した思い出を身体の中へと埋め込んでいった。
真横を見れば
綺麗に咲くあなたの愛した花。
春一番に吹かれても
しっかりと花び ....
祖母の横顔を眺めて
かきもちを一つ頬張った。
今年もまた無事に誕生日を迎えることが出来て
もうすぐお迎えが来る。と足を擦り
時々小声でつぶやく祖母を思い出しながら
私は祖父の遺影に
感 ....
縁側の机は
祖母の為にひと時のやすらぎを作り出す。
孫と語らうお茶の時間。
本を読みながら転寝をする
晴天の昼下がり。
一日が無事に終わりました。と
マッサージをして迎える夜半
....
話がしたい、話を聞いてもらいたい、と思ったら
泣きたくなった。
今は一個のどら焼きを
一人で食べている。
分ける人が居ない
半分のどら焼き。
間違えて淹れそうになったお茶に気が付いて
....
話したことは何一つ思い出せない。
まだ暖かな手を握っていた。
力の抜けた足を擦っていた。
家にたどり着いた後無心のまま
言われた事だけをこなし続けている。
「名前を、呼んでいるよ。」
....
父の茹でた蕎麦
玉葱と豚こま入りの暖かいつゆに浸せば
いつもより沢山胃袋に流れ込む。
つるつると
眼下を流れる釜無川のように。
父の作った黄色いカレー
ソースをかければ
いつもより滑 ....
後部座席から見えるのは
太陽に反射をする朝の海。
波止場に着く船のエンジン音が
微かに聞こえてくる。
テーブルに並べた分厚い刺身の大皿と
大きな金目鯛の煮付け。
山梨で食べるものより美 ....
愛する人の死は
見えなかった物を見せてくれる。
私は後
何十年も生きてゆかねばならぬのだ。
時には一人になって
考え行動しなければならないのだ。
一人暮らしという名の孤独
一人が ....
まっすぐに見つめたレンズ越し
君はもしかして気付いていたのかな?
少しだけ見つめ合って視線を逸らした夏の夜
小さな欠片ほどでも良いから覚えていて欲しかったと
心の片隅に置いたまま。
....
父の匂いがした。
押入れから出てきた赤いニット帽
洗濯をしないで忘れられたまま
今はもう居ない持ち主の匂いを残していた。
「ただいま。帰ってきたよ。」
見えない姿と引き換えに現れ ....
作りたての甘酒が美味しくて
ふうふう。しながら夢中で飲んだ冬休み。
早くおかわりがしたくて
ようやく席に着いた父に
「もう一杯ちょうだい。」と
私はねだる。
少し困ったような父の顔 ....
父との思い出は
手元の写真よりも鮮やかに
私の脳内でアルバムの1ページをめくる。
三回忌と言う名の一区切り
悲しい/寂しいと呼ぶ感情を
前よりも薄めてゆくために。
葬儀の日と同じ白 ....
痛む足を引きずって
遠くの街からやってくる孫娘の手助けを支えに
お茶とお菓子を出す齢88の祖母の姿は
台座に座り穏やかに微笑む仏様よりも尊い。
二人で並び茶をすすり
縁側で転寝をする秋の ....
玄関に立てかけた杖はじっと待っている。
亡き主が現れて
大きな手で磨いた柄を握り
ゆっくりと茶色の引き戸を開けるのを。
少し強い日差しは軒先を暖めて
二匹の猫が主の椅子の上で
....
肌寒い空気の中
白い息を吐いて子供が一人
駆け足で通り過ぎた。
幼い頃
父と犬を連れて歩いた
林の中の参道。
鳥の鳴き声と風の音が混じり合い
どこかに連れ去られるような怖さを覚え ....
父と一緒に植えたひまわりの新芽が
昨日よりも大きくなった。
私の背よりも高く
太い茎をまっすぐに伸ばして。
父と一緒に植えたひまわりの新芽が
私の顔より大きな花を咲かせた。
種の詰まっ ....
幸せなとき
二つに割ったおやきを
父と一緒に食べる。
野沢菜・小豆・きんぴらごぼう
焦げ目の付いた白い生地が
汚して母に怒られた
ブラウスの染みにも見えた。
一粒のダイヤ飴
病気で遠出が出来なくなった父を笑顔にした。
TVに映るのはかつて暮らした都会の街並み
今はそこに長女が一人たくましく住んでいる。
「元気にしているか?きちんと生活出来て ....
父のことを思い出すと
少しずつ少しずつ悲しくなる。
閉じたままの瞳/黙って外した酸素マスク
沢山話しかけても・きつく手を握っても
返事を一つも返さなくなったから。
父のことを思い出すと
....
早く起きた午前中
亡き父の畑で収穫したスイカを洗っている。
父と話をするように。
父と顔を合わせるように。
綺麗に晴れた夏の午後
大きなスイカを四つに切って
大きな口でかぶりつく。 ....
父が手渡した1万円札
大切に使いなさいと
小さなぽち袋に入れられて。
都内へと向かう電車の中で
いろいろと考えた使い道。
欲しかった牛革の靴
買い換えようと眺めた洗濯機
入ってみたい ....
ざらり・ざらり・ざらり。
ぱら・・・・。ぱら・・・・。ぱら・・・・。
父の骨は、少しつまみあげただけで崩れてゆく。
粉々になった骨の欠片
これが人の形だったのかを疑いたくなる。
名前 ....
今日は稲刈りの朝。
いつもより早く起きた私に
父は焼きたての目玉焼きを差し出した。
「今日もよろしく頼むよ」と
小さな茶碗に白いご飯をよそいながら。
それから約一時間後
トラク ....
9月1日の午後
朝から磨いた仏壇に手を合わせ
ショートケーキを一つ供える。
この日は亡き父の誕生日
街で年頃の親子連れを見かけると
父の居ない寂しさを思い知らされて
妬みの感情 ....
父が笑う。父が笑う。
もぎたてのきゅうりをかじり、今年の出来は上等だ。と呟いて。
父が笑う。父が笑う。
駆けよった娘達を抱き締めて
大きな手で頭を撫でながら。
父が笑う。父が ....
父の詩を書くことにした。
見えない世界と繋がって
無くした親子の時間を取り戻す為に。
肩に手を置いて
にこりと笑う父の姿が見える。
「お父さんどうですか?気に入りましたか??」
私は声 ....
父の死が
私の全てをひっくり返す。
独りぼっちだと悟る孤独感。
繫いでいた手を
後ろに組んでしまった。
横に居た父のことを思い出さぬよう
ぽっけの中に両手を入れたまま迎えたつい昨日 ....
仏間に置かれた古い位牌。
昭和十九年七月二十九日、ビルマ國ニテ戦死。
薄くなった金箔の文字で
位牌の主を語っている。
この家は最後娘一人となり
今から50年以上前に血筋が途絶えたのだ ....
昭和十九年七月二十九日、ビルマ國ニテ戦死。
仏壇の片隅に置かれた位牌の主を
私は知らない。
毎年お盆になると
固く絞った白いタオルで先祖の位牌を磨き
家族みんなで迎え火を焚く。
....
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