狂うのです
わたしは狂うのです
わかりません
あなたのいっていることがわかりません
つめたいのはコンクリートも土も同じです
さむさにしんでいく小鳥も
わたしとおなじなのです
こおりつ ....
暖房もなく、寒いよるには、
ちいさくなって毛布にくるまるのです
毛布はやさしいです
朝の梵鐘の音が聞こえると
お腹も空いてくるのです
やさしい毛布から脱け出して
ずうずうしいエアコンのセカ ....
ぼく、生理がはじまった
おちんちんから血が出るから
ひにょうき科の先生に診てもらったら
おめでとう、と言われた
いやっほい
と、ぼくは宙返りをして
さっそく父さん母さんに報告した
....
裂けそうな繋がりを縫合してゆく
失いたくない人は
バス停で待っている
じっと話したいことを
考えてみると
嗚咽で崩れ落ちそうになる
立ち去ってしまうのか?
去りゆく人を知らない
けれど ....
黒い斑点がちらほらと
真っ赤に燃えさかる太陽には
黒い斑点がある
斑点の中には子が六人
六人の子供たちが手を繋ぎ結び合い
縫い合わせる。密かに匂いを嗅ぐ
かをりのしないあなたは
いっ ....
粟立つ気泡に抱かれて
私は目覚める
真冬の夜に
梟とともに体を震わせ
パチン、と
弾ける
それはきっと終わるということ
ひとつの形の終わり
涙を流すのは
私だけじゃなく
時間を ....
桜桃色の朝焼けに
白く凍える息
奏でられる朝の輪唱
青い空が眩しい
まだ
まだだ
世界が終わってもいいと思えるような
美しい光景に出会いたい
世界の終わりは
美しくあって ....
たくさんの
たくさんの
たくさんの自分がいる
たくさんの
たくさんの絶望と希望と私
詩人でない私人の私
たくさんの
たくさんの
絶望から生まれた
たくさんの
たくさんの
....
冬にひとりだけ生き残った蚊のように
殺がれていった私の身体に
悲鳴は一瞬で消えてしまい
なだらかな夕日が
両の眼で揺れる
ヒステリックに哀しみをぶちまけ
涙を流さず嗚咽だけを漏らし
....
ふたつの冬が互いを削りあっている頃
孤独な吾が身が突然痛み出す
痛みます、昨日と変わらぬ今日なのに
精神の不具であることは恥ではないはずなのに
何故、かくも私は不自由な心の持ち主なのだ ....
押入れに隠れていた
暗い密室の中で
埃っぽい空気の中で
春の芽吹きを待っていた
喉の渇きに苦しみ
時折、浸みてくる温もりに身体を寄せ
ずっと夢を見ているような
おぼろげな意識で
昼 ....
いつからか小鳥が来なくなった
名も知らぬ小鳥たちが
毎朝訪れ、よちよち歩いているのを見て
囲いのある私の生活も
悪くないと思えていたのに
いつからか朝の声はしなくなっていた
流浪の ....
交錯詩「月」 フライハイ/森川 茂
奇数行:フライハイ
偶数行:森川 茂
{引用=
眠られぬ夜 見上げる空
自然なんてさして美しくもない、と
歪 ....
幸せな 人見て吾が身 嘆く我が
いやらしかなし ゆく日の気配
穏やかな夏の青い空に
幼い頃聞かされた赤く染められた天地が
嘘のように
頭を刈った少年たちの
淡い掛け声が響いた
誰もが歩む死への行進
だけど殺し合いは御免だ
「兄弟仲よに分けないか ....
太陽が睨む / 私は目を逸らす
太陽が睨む / 私は目を逸らす
太陽が睨む / 私は目を逸らす
太陽が睨む / 私は背を向ける
太陽が睨む / 私は靴を脱ぐ
太陽が睨む / 私はうずくま ....
空気の蒸せる昼
スーパーは避暑地だ
パチンコがやめれん
いつ親に泣きつこうか
残り少ないキャッシュカードを
ATMに差し入れる
じいちゃんが
どこからか見ている気がして
何もか ....
私のたよりない内臓は世間を知らない
私は私じゃない、他人だ
孤立電子対のように
掴めない雲のような存在の私
あなたの代わり、代わりなんていないのよ
いなかった、あなたは唯一、やっとわかっ ....
分光された夏。白くて柔らかな豆腐に、包丁を入れる、賽の目切りに。私は産まれた。母親の腹を裂いて産まれた。味付けは醤油だけ。醤油を垂らすだけ。夜が短くなった。止められない時計に抗おうとやっきになって、焦 ....
まあるいおわんの底で
くるくると回っている
ガラス玉のように
くるくると回っている
ゼリーの雨が
ぽとぽとと降ってくる
服がぬれると
かなしみ
したたり
冷えた体が
憂いを
....
風の中に飛び込んで
空を泳ぎ切る
湧き上がる入道雲まで
真っ青な空間を
かきわけて
辿り着く
遊びにきた子供らの声だけが聞こえる
足首に触らないでください
時につれ
舞い散る ....
たとえ私がいなくなっても
いつもと変わらぬ朝が来て
食卓を囲むことでしょう
悲しみは寝ぼけ眼の向こうに置いて
それぞれの宿題を鞄のなかに押し込め
忙しく顔を洗うのです
十一次元もあ ....
連れ去られてゆく私の腕は
細かく打ち震え
振動し
ひとところに落ち着かない
手を引っ張るのは誰?
月が欠けてゆくにつれ
私の不確かさが増してゆく
共鳴していたものが
隠されてしまったか ....
冬に凝縮されていたものが
放散される夏
胡乱な眼で見つめていた
電線で繋がれた道も
砕かれた砂浜の突端で
選択を迫られる
歩いていれば
いつか生から解放される
轍もいつか途絶える
....
象が一匹いなくなった。いつも母象に寄り添
っていた子象がいなくなった。祖父の魂を斎
場から河原へと運びに行っているうちに、行
方が知れなくなった。魂の流れに誘われたの
だろうか。母象は何もなか ....
重い雨が降っている
重い水が降っている
土くれになるはずの肉塊を
池に沈めれば
浮かんでくるのは
感覚のない 時の澱
「君ばかりが悩む必要はないんだよ」
背負い込んでいるのは ....
羽虫の妖精が
肩にとまっていた
指で弾いて
空へ帰そうとしたけど
彼の眼は
地中に埋められた種を
見ていた
生も死も変わらないとしたら どうだろう?
透き通る陽気に
犯 ....
海から浜辺へ
流れ着いた破片
自分の
皮膚を削り
刻まれてゆく波紋
咀嚼するごとに
産まれてくる泡
ここに
辿り着くまでに
何度
射精したことだろう
いつか魚の群 ....
水たまりを跨いだら、一国の王になっていた。
捨て猫の声が聞こえてくる。何故、捨てられた猫であるとわかるかというと、猫の言葉がわかるわけではなく、捨てられた猫の啼き声は、激しく依頼してくるからであ ....
葉緑体がうごめきはじめ
水の粒子が
細かくも玉になり
肌に薄く膜を張っても
心踊らない石礫が
川原に帰りたいと呟いて
乾いた舌が口の中で途惑う
手を伸ばして
掴みたいものなんてなか ....
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