きらきらと揺らぐ山河や鳩の笛
盆踊りでは声だけが人のもの
馬鹿野郎と鼻をくくられ鳳作忌
小鳥来るわたしのかけら啄みに
雨少し。青無花果に金の粒
邪悪に眼を細めてまず腕を切り落とすんだよ。いいかい、そいつが悲鳴を上げたらお前はうんと気持ちよくなるからね。嬉しくてにやっと笑うのさ。唇だけになった顔で。血にまみれたナイフの刃先をべろんべろんと舌で ....
伯爵の晩餐会に呼ばれました。長いテーブルには間隔を開けて点灯された燭台が10ほども並んでいます。食事を前にして伯爵が英語でスピーチを始めました。以下はその内容です。
「今、私が英語でスピーチする ....
激烈に痙攣する音の舌に舐められて
君の敏感な乳首が動くなんて
信じられない僕は老いさらばえた首で
口を半開きに転がって青い空が
はたまた青くない空が崩れて降っている今、という
神 ....
水際立って幸せなレースクィーン光る木の実を拾いけるかも
解体されつつある自動車のボンネットに座る漲る太腿
あれは鳥でなく鳥という言葉だと思えば悲し椋鳥三羽
冬から春へ向けて流れる川に
舟が浮かんで
こちらへやってくる
柔らかな唇の端から
したたる幼児の涎が
他愛のない笑いで溢れ出して
野山を越え
滾々と
滾々と進み行く川よ
小舟 ....
雨水の日の夜、眠りに落ちようとしていたら、部屋の床から正体のない桃色が霞のように立ち上ってきました。それがそのまま微細な粒子になって天井へ上り、逆さに降り積もってゆくのです。
花のような匂いがし ....
旧ソ連共産党員の娘である彼女が
映画で見た紅衛兵の隊列や
そこで振られている赤旗の
美しさについて語るとき
地上では風が強かった
冬型の気圧配置が緩んで
南から温かい湿った風 ....
ひと筋の唾液色なし雛祭り
包丁のカカカカカッと雛料理
春眠のどこかが海で潮香る
僕は1限目の春光に満ちた階段教室で
コクヨキャンパスノートを開いている
イトーヨーカドーの文具コーナーで
河合先輩が恋しているレジ係の女の子から買ったノートだ
「お釣りを貰うときに手 ....
尾の長き生き物らしい。寒さとは
爪並べ指を揃へて朧かな
春の月唐突に死の淵に浮く
早春 せせらぎが白昼の形式に挿入されている
のさ
皮膚に嗅覚をはたらかせると
柑橘系の香料のにおいのするあなたよ
身体を重ねて両手を握りあえば
言葉の裏側を逆さまに歩いてい ....
足下から小石が落ちていきました。岩を跳ねながら雑草や松の枝に当たって、途中まではそれとわかったのですが、直ぐに見失われ、激しく打ち寄せる紺碧の波に呑まれて延々と続く怒濤の音に紛れてしまいます。この道 ....
君は震えて傾いでいます
それが誕生という時間の持つスタイルだから
僕も君と同様に傾いでいるけれども
それはもうどうでもいいこと
昨日見た父の遺骨の埋葬されている墓地の
白 ....
カイザーに抱かれてどんな春見える
金色の眼にたつたひとつの草餅よ
グラウンドに落ちて雫のやうである
黒パンを食ってペニスが立ってゐる
春空を無類の馬鹿が支配する
君がはや泣こうとしている
握りつぶされる二つ割りのバレンシアオレンジ
日本列島を雲の太股が締め上げじわりと性器が湿る
僕も泣きたいけど泣けない
フィクションの積み木がカタカタと音を ....
昼間、光の底に沈んでいた高原の花が光を放ち始めている。引き潮の海が磯濱の窪みに取り残されるように、失われていく光が花をわずかに濡らしているのだ。白い花は白く、紫は紫に、黄は黄に。葉や茎は暗い空気と分 ....
裕次郎の無頼の歌や八月尽
稲光叫びたくとも叫ばれず
秋夕焼けヨードチンキの染みのごと
新涼や夜の果てから明日を見る
何も無き身を庇ひつつ休暇果つ
秋初めビーナスの裾整はる ....
ほととぎす米は粒立ちて炊きあがる
万物の匂ひ放ちて梅雨入かな
麺麭の肌黴の楽土は燦然と
著我の咲く野に雨の声雨の唄
靉靆と言ふ語に逢ひぬ五月尽
ほとばしるごとく青蔦壁にあり
五月雨や古代の ....
星より遠いところで
唇が光った
君がまばたくと
古い世界は滅び新しい今がひらく
午前のテニスコートに飛び交う
黄色いボールは
それが僕のパッションなのでした
不意に喩えられると僕は何なのか。喩えられてたまたま僕は書店の軒の燕であった。僕は『ガリバー旅行記』を買い、大君(タイクン)の支配するニッポンへの渡航計画を練ろうとしていた。赤い、ざっくりとしたカンバ ....
サクラサクラ僕は行きます
風の逆巻く世界の果てを走る走る
花弁散り敷き足首ざくり踏み込むと
散り散り舞い上がる幻視幻聴幻臭幻覚
しっとりうっとりなよやかにはらはら
しかし激烈 ....
鮮血のアンダルシアの石畳首なき人の燻り立つ笑み
(せんけつのあんだるしあのいしだたみくびなきひとにくゆりたつゑみ)
<通釈>空を仰いで目を閉じると、強い太陽で真っ赤な闇が視界を覆う、夏のアン ....
恋をすることは惨めだ
倉庫の巨大な薄闇の片隅で
段ボールの埃をはたいて
組み立て式ペーパーボックスの
在庫を数えながら
君の黒髪を両手に受けて
溢れるほど両手に受けて、顔を
....
春光や「カレーの市民」の尻の張り
春光や決死の像に漲りぬ
彫像の裳裾の奥へ春光る
春光の中や塑像の蹲る
緩みなく「考へる人」春早し
春立ちぬ考へること生きること
地 ....
パラダイスが弱っているよ
ああ、早くしないと
早くキスしないとみんなダメになってしまう
夕焼け雲の形をした船は沈み
トカゲたちの種の命脈は絶えちゃうんだ
僕はぐったりと射精し ....
0.17sec.