臭い息を吐きながらバスに詰め込まれて
長い坂道を登りまた降りてゆく
雨に濡れた路面と涙を含んだまつげが
ブレーキのたびに摩擦で軋む

日々は流れる水のようでいて
なにも清浄にすることがない ....
くちびるから風を運んで
気がつくとそこにハルがいる
粒子の波が雲の切れ間から
美しいオルゴールのように

血を流したりはしないけれど
人はみなそれぞれの戦場を抱え
ふと息をついたときにど ....
茅葺の屋根ふきかえる仕事なら
5000円くらい出してもやりたい

赤裸々な積乱雲を食べてみる
グレゴリー・ペックの声色を真似て

濡れ光る僕のあそこのユニコーン
おまえもただの女なりしか ....
夜の淵からわたしがこぼれ
わたしの淵から夜がこぼれる
固いビスケットを菩提樹の
お茶に浸して深深と雪

積もる声もことばもあるし
誰からも等しく遠ざかれば
せわしなく人の世に生きていたこ ....
カテドラルより鐘の音がこぼれてくるので
僕は屋根裏のようなその図書室で顔を上げる

埃っぽい書物たちの潜む書架が
ひとたび足を踏み入れては還れぬ森のようだ

森の中には誰もおらず
時折ド ....
 これはあれに似ているな。バスに揺られながら、そう思う。
 小学校や中学校の頃、校内放送で職員室へ呼び出される感じ。名前を二度呼ばれて、「至急職員室へ来なさい」というあれに似ている。校内放送のスピー ....
映写機がカタカタ鳴っている
僕の撮る写真が君は好きだという
街は白黒というよりも何かひとびとの
息吹をはらんだ色彩に染められている

街灯には設置された年がゴシック体で
刻印されているのだ ....
さよならの野生
ナイフのエッジできりきりと裂いていく
さよならの野生
悲しみを等価性のある液体に移して
さよならの野生
夜の星の硬いまたたきをかぞえて
さよならの野生
今カイエ・ソヴァー ....
音楽はやまない
いつまでもその唇から
風に
風に乗って
その唇に

やわらかい草のゆれる
広い野を越えて
人々の雑踏を超えて
あなたの街を超えて
音楽は続く

とどまる場所があ ....
気がつけば冬のさなか
襟をあわせ
交差点で君を待つ
知らぬ間に季節は
僕の髪が肩に届くほど
遠く過ぎた

誰にこころ奪われていたの?
いつもそばにいたはずでしょう?
誰の幻に焦がれて ....
手のひらにあなたを
降りしきる雪を
言葉を 悲しみを
受け止められるなら

時間が過ぎて
見失うものも
惜しくないとさえ
思えるんだ

行方は誰にも分からぬ夜の旅路で
本当に愛し ....
視神経が悲鳴を上げる
肺が酸性に降参する
皮膚の断面がずれてくる
もうピントが合わない背骨

ここからが始まりだとは
勝ち目のない戦争のような
この場所から始めるとは
どのような自殺行 ....
夜は沈黙の代価で震える
いとしい
くるしい
あさましい
そういう感情の化合物で
誰が誰を傷つけるか予想できないから
おいそれと名前を用いることは出来ない

手前にはロック以来の経験論が ....
鼓動はやすらぎをもとめるものに平安を与えない
耳の奥でいつまでも小さく鳴り続ける戒厳令
風が霧を吹き払えば一面に悪臭が充満した
エメラルドグリーンの湖水も美しくさえある

何をしていても何を ....
最後から二番目
不完全の未完了
未完了の不完全
終わらないことの始まり

終わることの予感
消えるものの先走る予兆
前もって失われた最後
失われたことの已然形

楽しい思い出のコー ....
君の景色を埋めていく
未来に出会う経験を
嫉妬交じりに僕は眺めてる
息苦しさ夕暮れに似た息苦しさ

振り返らずに人は進めない
そのことだけを今は知っている
壊れていくより早く今なお
失 ....
いい詩をお書きになる あのひと
言葉はなんでもなくて、抽象性が無担保でまかり通る
それなのにそのひとの選ぶことばのならびをみて
とってもうれしいきもちになってしまう

このひとは本当はすごく ....

くるしい
口づけ
悔い
苦しみ
食い合う唇
エッシャーのように
連続し接続し食い合う
食いちぎる
唇を吸う
吸い合う
吸い寄せあい
吸われ
ここに座れ
そして耳を
耳 ....
僕の
君の中の誰か
誰かについて
誰かしら
思い返している誰

誰かしら
思い返しては
維持することの出来ない
記憶を記録して
記録を
記憶する

冷たい水銀灯の光
冷た ....
かつて少女であったものの断片
ある切れ端
突端から眺める切れ端
破片
かつて少女であったそれ
その部分
少女の一部分
白い影を波間に
少女らしいたおやかな
少女らしい生臭い
少女ら ....
ことば
この言葉
遠い言葉
声、言葉
遠い声、言葉
届かない
届かずにとどまる声
言葉、超えたらば
超える言葉
超えて届く声
孤島へ
言葉、孤島へと届く言葉
声、孤島へと超えて ....
壁の土がぼろぼろとくずれてきた
かつて誰かもこの壁をにらみ
抜け出そうと足掻いていたはずだ
僕は透明なチューブの中に住んでいる新種だ

外の世界は吹雪 街路には名前の失われた
作家の墓碑銘 ....
 誕生日に僕は飛行機に乗って日本に帰る。
 空港へ向かうバスの中で、あるいは飛行機の中ですでに具合が悪い気がしていたのだけれど、帰国してまもなく予定調和的に風邪をひく。
 日本でクリスマスに恋人と ....
いうなれば愛は無限の
ススキのなびく秋の平原で
近く遠くチラつくフィルムのフリッカーを
懐かしく水面に浮かべて掬う

木漏れ日はマンションの壁を暖める
窓枠は世界という景色を作品に仕立て上 ....
ただひたむきに絡み付いて
あなたから目をはなすことができない
気がつけばそれが恋であり
未来はいつも平原に気弱な月を浮かべている

愛され方と愛し方
運命に翻弄されて偶然に出会う二人
も ....
 あなたとわたし、わたしとあなた。
 学校帰りにこうしてケーキを食べて、熱い紅茶を飲む。
 秋に始まった授業で、あなたと知り合った。あなたが声をかけてきて、それからあなたは二時間喋りどおして、最後 ....
ほつれた髪を直すしぐさ アルミニウムみたいな海

海は高鳴る心の隠喩だったか 反映だったか
わたしにはもう手の届かないものの換喩だったか

晴れ晴れとしたこころで車を運転する
白い灯台が青 ....

 わたしはひそかにその人をガーベラさんと名づけている。
 月曜日の昼、大体同じ時間にやってきて、大体同じ内容の花束を頼んでいく。ガーベラと赤みの差す花を葉蘭で包む花束を。
 だからガーベラ ....
雪の降る街の景色を
音だけで感じている
悴んだ手が赤くなり
サクサクという音が

足元から立ち上って
靴底から垂直に体の
芯を冷気が掴んでは
私の細い心臓を震え

あがらせているの ....
鋼鉄のブリザード ザン ザン ザン
とレールの上をすべるように走りきて
重いこころ重いからだ思い 思い 残
しばらくして夕凪のような沈黙に抱きすくめられる

微笑して降る冬の夜の霧雨
寒さ ....
瀬崎 虎彦(381)
タイトル カテゴリ Point 日付
音楽の立体造影自由詩210/1/26 18:19
今そこにないものを確実に意識しながら自由詩510/1/24 18:26
ハーモニクス短歌510/1/17 19:23
今よりずっと澄んだものに自由詩710/1/16 8:30
この森をかつて君と歩いた自由詩310/1/10 22:03
呼び出し散文(批評 ...2*10/1/9 23:19
和解自由詩310/1/9 22:48
逃避せず自由詩510/1/8 2:38
あなたに届けよう自由詩6*10/1/3 22:00
忘れられない自由詩410/1/2 19:26
十二月が過ぎて自由詩310/1/2 1:31
The Beginning自由詩6*09/12/31 3:23
夜は沈黙の代価で震える自由詩809/12/30 4:39
The END自由詩2*09/12/29 19:37
The penultimate自由詩4*09/12/29 1:33
マジック自由詩109/12/28 22:45
あのひと自由詩5*09/12/28 16:42
ハロー/アイラヴユー 大全自由詩2*09/12/27 20:41
みなしごたちの夜自由詩2*09/12/27 2:19
冬の海で自由詩309/12/26 23:08
この言葉自由詩209/12/26 19:51
そこからどうするか自由詩109/12/26 0:58
12月24日、快晴。散文(批評 ...309/12/24 23:29
ただこの声だけを奪ってほしい自由詩209/12/24 1:12
愛され方と愛し方自由詩009/12/24 1:06
アルルカン洋菓子店散文(批評 ...3*09/12/23 1:51
わたし 大丈夫です自由詩4*09/12/22 13:46
ガーベラさん散文(批評 ...709/12/18 1:49
数え切れぬほどの幸せな家庭が暖かい屋内で晩餐をとっている時間 ...自由詩609/12/17 20:34
冬の夜の霧雨自由詩109/12/17 1:36

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