チタンのように平坦な夜
音ばかりが暗がりを分けて
羽ばたく
一秒ごとにかたちを変えながら

身ごもる月 流産する月
苦しみを丸く閉じて流星を包む
理路の極北にひっそりと息ひそめて
まば ....
古き夜の
唯々諾々とアマリリス
頬杖を解き、覚悟撃ちぬく
網膜に散る黄金 滑らかで冷たい肌
葉擦れよりも耳に優し 純白の柔毛
広く伸びやかで健康的な 処女の背
乾ききった僕をものともせず抱く泉

貪欲に求め飽くことなき 白い悪魔
粘性の高い欲望に ....
空白に惑う夏の圧力に臥して
緑の原を日の泉で浸す
触ることは出来ない 耳に聴くことも
逃走と讃美 内側から崩壊する冷泉
機微に触れる没食子 裸体から剥離する
望遠レンズ 深夜にまたたいて
また崩壊する源泉 闘争と酸鼻

図像より言葉で あるいは象徴よりイメージで
その長い闘 ....
静謐な森で鼓動の残響に身を浸していると
自分はひとりではないのだな という気がして
振り返ると金色の目を光らせた
絶望が口をあけてたたずんでいた

それから半刻ほど あるいはもっと長い時間
 ....
心臓の上に針の落ちる
展翅板で誇らかに 死んだモノたち
現代 死は 無知蒙昧の書き手が
自己憐憫を表出するコロキウム

冷静でいられない肩から上を
円錐で束ねるように押しとどめる
水に沈 ....
金属をたわませて自転する惑星
ぼくたちの手のひらより
小さな宇宙の底で未来が始まる
歌舞音曲は原子の中にあった

密林は絵画のようでいて
いつかどこかでそのモデルを見知った
そんな気もし ....
冷たい峰を横切りながら
清冽な印象を残し融解する
旅人は柔毛濡らす
輪郭は呼応しない内容

それはたとえば月、芒(すすき)
緑青の浮いたピアノ線
酔いどれ男たちの真心と
空洞の地球儀の ....
二人の関係は雨に見透かされていた
汚泥と良心とを綯い交ぜにしたテクスチャの狭間
しなだれかかる若さと僕のように老いを見据えた若さとでは
手に手を取り走っていくに道があまりに遠い

飛行船より ....
二心抱く馬のひかがみ斬り
草原に立つ人の輪郭のすずしさ
鈴が鳴るように人影倒れて
陰翳の底の所在無さはセフィロスに跨る

おおおと鳴る風の行く先は
電線の彼方 あるいは
支配のオルガンの ....
身のうちに火を宿し
旅装を解くわれら
森の森閑として抜け目ない
眼差しの奥の
浮遊する電熱
白寂れ崩れるような
猫の背骨 たわんでなお軽く
湿地に降る雨のあいだに
城の姿を認めた
足 ....
人がたくさんいるばしょで
ぼくはぼくを忘れてきたようで
恐れるように道を渡るものだから
道もぼくを嚇してやろうとしている
もう自分は廃人にちかい
親のすねもどこまでもかじるつもりでいる
たとえば子供時代に思った
大人の自分がこうであったろうとは
さすがに想像の閾を越えているのであって
弁解の仕様もない

だ ....
くちびるを離れて瞬時に死ぬ声
清浄すぎる空気の中で窒息する
織り成す前に解かれかさなる前に崩れ
かつていた場所の記憶も透明にすぎる

右手にレモン 左手にナイフ ベッドの輪郭は白く
夜は火 ....
雨が上がっている
道はまだ濡れている
鉄に触れる指先に
湿度が這い上がる

公園は無人で
空は切り取られている
木々の隙間に鳥が
忘れられたように飛ぶ

クロエはかなしい歌を書く
 ....
たとえば塵のように
グラスの中で
わたしの怒りの澱が
舞っては沈む

気泡の中にそれぞれの
口に出しかけてやめた言葉を
閉じ込めているのが
足の速い風味に伝わる

ガラスのように澄 ....
 クシュっとレタスを潰したような音とともに、その小動物の頭蓋は砕けた。激痛にもだえ四肢で宙を掻いているが、苦痛を悲鳴にすることは出来ない。声帯はもはや機能していないのである。放射性物質を含んだ雨が降っ ....    片手で奏でるエチュードに耳を貸せ

夜は長く眠りのトンネルはまだ遠い
よく見知っているはずの顔 聴き慣れたはずの声
電波の向こう側 雨の狭間で 濡れそぼる素粒子
解決のない問い ....
背景から浮かび上がるように
白い山の稜線の切れ味
日がもう暮れようとしているのだ
帰路を急がねばならない

生活はひとつひとつの単位を組み合わせて
前へ進んでいく
どのひと時も微分すれば ....
誰かのいいわすれたことが
潮風の強い晩に
白い光となって残り
ああ、これは人間ではないな、と思った

街灯のしたで未練がましく
とどまるものは
人間の心のうちからはみでた
恨みがましい ....
展望台から視線をはるかかなたへ飛ばすと
白の最中に消失して
雪が海に吸い込まれていく様子を
しかたなく眺めている

流麗な発音でワインをたのんだあとに
つめたいテーブルのうえに冷たい手のひ ....
ふしぎなことだが
毎日雨が降り続いている
雨は濁流をつくって
市街地を走っている
市街地では人々が
右往左往している
夏からそのままになっている
南部鉄の風鈴が
軒下でずっと
雨を呼 ....
片目を閉じ
肌のうえを滑る水滴に
全神経を集中させると
夜の広がりがわたしのうちに
入り込んでくる
そしてもう内も外もなくなり
空洞のようでいて
そうではない夜の黒い底が
わたしと一枚 ....
もう涙は掛け値なしに流せないので
からだではなく こころが不自由
ほのかな明かりのみえる夜の余白に
やせた色彩の春がさまよっている

空気の中に弱弱しく感じられる
感傷的な気持ちの余韻を丸 ....
夕方すぎのロマンティク

真空の一歩手前
わたしの首を絞める君の手のぬくもり
脳が酸素を欲して叫んでいる
それは苦痛ではない
意識がはがれそうになって
君の温度がしのび込む

夕闇の ....
フェザーの夜の奥底に
雷鳴が降り落ちてくる
身をよじる小動物の声
愛を交わす偽善に吹く風

誰しも時計の針の非情に
凍える気持ちを抱いているのではないか
理解されたいと願いながら
理解 ....
空で悲しみを撃ち抜く
翻って自虐する視線を撃ち抜く
回転して引力の強い不安に突き刺さる
要領の悪さを責める言葉を抹消する
清冽なふたすじの水の流れに流す
そして冷や水を浴びせる

かつて ....
はしりだす
君の姿を目で追う
ぼくのみみを
覆っている伸びすぎた髪が
ひかりよりもはやく
トラックを巡る
しなやかでかろやかな
筋肉の結び合う
きみのかたちになる

きみのかたちに ....
意味を群青の空へ溶いていた
遮られて強くなったわけではないが
考えて足を踏み出すようになった
緑色の月が煙越しに見えている
感覚を板ガラスに這わせれば
素肌よりも重い真鍮の夜に
編上靴が雄 ....
瀬崎 虎彦(381)
タイトル カテゴリ Point 日付
結晶自由詩112/9/16 13:21
リコリン短歌012/9/12 16:39
午後 (remixing 高村光太郎)自由詩012/7/27 18:30
七月のアフロディテ自由詩112/7/26 22:04
生き物たちの墓場自由詩112/7/25 22:35
朝まで自由詩112/7/24 23:39
うた(平出隆を讃えて)自由詩312/7/20 12:24
音階自由詩012/7/20 0:30
回顧自由詩212/7/16 21:35
工場自由詩212/7/11 20:23
草原自由詩112/7/9 23:21
やがて冬自由詩212/7/8 11:44
人間の入れ物のなかで自由詩012/6/7 4:30
カイコ自由詩012/6/2 23:25
転位自由詩012/5/27 0:17
クロエはかなしい歌を書く自由詩212/4/15 1:11
食器を片付ける自由詩3*12/3/14 22:08
祈り散文(批評 ...112/3/9 18:05
ナイト・アンド・デイ自由詩012/3/8 22:35
木蓮自由詩212/3/7 9:17
思い自由詩312/3/5 14:01
祝福自由詩212/3/2 11:46
自由詩412/2/28 21:57
鋒鋩自由詩112/2/24 5:54
春が来る自由詩1*12/2/20 8:28
ユウガタ自由詩011/10/25 19:43
可能性自由詩111/7/16 1:34
決別自由詩211/7/10 11:27
自由詩111/7/6 23:05
強情自由詩111/7/4 0:21

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