その白い線の上に
立っててね
このへんに
ぼくも立ってるから
ちょっと遠いと
近寄りたくなるし
「やあ!」
と言えば「あ!」と
返してほしくなる
だからその白い線の上に
....
都会はとても静かで
ちょっとかっこよくなりたくて
屋上に出たりする
前髪があるのも似合うねぇ
と友達が言ってくれた
少しずつ、変わるもの
都会はとても静かで
顔のわきっちょに ....
さようならは
言うのもするのも簡単で
儀式の魔力にとりつかれた
きみがどこにいて
わたしがどこにいて
そういう二人の居場所の
重なりあいで
やっと
世界の輪郭がぼんやりできあがる
....
西へ流れる大気にあわせて
わたしの心もどこかへふんわりと
消えてくれれば
この夕焼けも青くは見えないだろう
乾ききった洗濯物は
だまったまま
昨日があって明日もある
その間で ....
風に揺れるカーテンに
包まれながら
あたしひとりだけ
まるで黒点のように
体温が低かった
ずっと遠くで
白い線に沿って走るあの人は
なにに急いでいるんだろう
....
シャッターの音には
変な顔が必要で
歩きにくい
ごつごつした石畳が
水の底に沈んでいた
あたしは花柄のあたらしい長靴で
口を曲げてウィンクした
パシャ
....
やさしい気持ちは
赤子のむせび泣くそれに
似ているかもしれない
なにがやさしさなのか
わからなくなることがある
ただ強く抱きしめるだけのうそも
飴をひとつぶあげる掌も
好きという ....
途端にわからなくなる
昔みたいにものごとを考えることがなくて
一人暮らしを好みたいから
料理が楽しいと言ってみたりする
途端にわからなくなる
酒で溢れた大部屋も
男の ....
光のぬくもりは
私の頬をななめに撫でて
ゆっくり後退していった
津山駅ゆきの
この乗り物は
私をぐらぐら揺らしながら
こっそり古代へ連れてゆく
あの頃は
ママに叱られそうだ ....
悲しいと思うから
悲しいだけだ
誰かが遠くでそう囁いた
鼻の奥がツーンとして
目の周りがやけどしたみたいに
熱かった
…
何も知らなかった頃のあたしは
プールで ....
僕の泳ぎたい欲求は
どこに始まり どこで終わるのだろう
幾度と無く
水中でくねくね泳ぐ小説を書いた
黒鉛の散りばめられた原稿用紙は
水の雫がぼたぼた落ちて
瞬く間にブルーに滲む
....
終わりなんてないんだ
広がり続ける赤いカーペットの上で
コインの光に洗脳されて
朝なんてないんだ
閉じ込められたぬいぐるみは
ミラーボールのぐるぐるを眺め続けて
親なんてないんだ
....
寝続けるのはつらいと笑うきみの声は
瞬く間に白い壁に吸い込まれて
ああ 病院の白さはここにあった
と林檎の皮を剥くナイフが震えた
いつかの海は
ただしっかりと海岸を歩いて ....
自動ドアから
ドヒューゥッ
と押し寄せてくる冷気に
斬新に感動する触覚がきもちいい
が
ドアが自動に開くすばらしさを
あたしはもはや忘れている
「あぁ
あの小規模デパート ....
洗面台の鏡に映る、少し鼻の歪んだ女の顔には
そう簡単に幸福という言葉を見出せない
蛍光灯を反射する瞳の光が淀んでいた
蛇口をひねるのは好きだった
恐らく、
水が出てくることが確かに約 ....
ことばは何に支えられているの
きみの口がにくい
いつだって嘘を孕んでいるくせに
あたかもそこにある、
ひとつのリンゴのようなフリをしている
(それは限りなく現実のようなもの)
....
ひとつの卵子に
星屑が飛びちって
僕は生まれた
宇宙の端っこで
ブランコを乗り回し
木星の周りを
飛行船でもうもうと
旅をし
月で出家して
僧になり
蓮の花 ....
放任してはならない
読書にふけていようと
トマトを食らっていようと
あの人のリズミカルなノックが
私の耳をいびるから
あの人のこころは
この時のみ
私の中の
遠いどこかまで ....
きみの日記だけは
誰に侵されるわけでもなく
ぼくとの季節さえ綴られないまま
風の移り変わりだけが
閉じこめられれば良いと思った
いたずらに慈しめないのは
ぼくが所詮
あらゆる欲望を覚 ....
手の平にありあまる星を抱きしめた君は
在るべき場所に
帰す気なんて初めからないのだろう?
己の記憶が 空を支配することを求める君は…
星が悲鳴をあげているよ
固く縛ってしまったの ....
リズミカルな樹々の風景に佇む俺は
ボーリングのピンのように突っ立ったまま
カウンター越しで待つ、曇った瞳をした青年に
酒を手渡した
幼稚な脚を露にし、
ステージで腰をくねらす女どもが
....
ねぇ
そのひんやりした床に
目を閉じて
耳をあててみて?
高速で道路を走り抜ける車が
ささやかに笑い合う地下水が
優しい歩調で歩いているあの人が
おしゃべりしながら列を成す蟻 ....
薄暗いクラゲのランプの中で
向かい合う僕ら
口の外に投げ出した落とし穴に
僕は嬉々として自ら落ちた
パフェエを食らう君のまつげが
パリンと跳ねて
雲のような肌に浮かぶ唇のふくらみが ....
切ない光がもたらす鏡の中の私は、
決して触れることができなくて、
あたしは確かにそのことを知っている。
走る一瞬
抱き合う一瞬
まばたきの一瞬
花の香りを嗅ぐ一瞬
おやすみと微笑みの ....
紫陽花のトンネルくぐる梅雨だめし ビニール傘が今日は好き
プラスチックの指輪をかざす薄暮の押入れ 胸にうちよせるうそつきの快感
もしあたしがのっぽになったら、
高いところのものを自分で取ってみる。
もしあたしがのっぽになったら、
男子を見下ろしてみる。
ついでに
学校も見下ろしてみる。
すると、学校があまり ....
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